ホんまかいな通信

第6回 ホホホ座三条大橋店を勝手に作ってる通信

2016.06.21更新

ホホホ座という店の名は襲名し放題なのを知っているだろうか。業態を問わず、誰もがホホホ座を名乗ってくれていい、条件はホホホ座ツートップの面接試験を受けて許されること、そのように言われている。ホホホ座を名乗る店舗等はすでに全国に五つ存在していて、広島の尾道店コウガメの目覚ましい活躍っぷりなどは、すでに様々なメディアを通じて広く知れ渡っていることだろう。噂によれば、まさに今この瞬間にも方々において、着々とホホホ座の旗揚げが準備されているとも聞く。この調子で行くと、ホホホ座カムチャツカ店がオープンする日もそう遠くはなさそうだ。

頼もしい我々のリーダー、山下と松本のことだ、きっと、よほどハチャメチャでない限りは落ちるということのないスウィートな面接をしてみせるのに違いない。面接というよりは相談に近いのかもしれない。とタカをくくった上で、自分もホホホ座を作ろう、と思う。もし面接で落ちたとしても、そのことは後で自慢することができる。みんな、そういう話が大好きなのだから。
何屋にしようか。名前からして劇場や映画館なんかだとぴったりなんだが、やはり、前からいつかしたいと思っていたコンビニだろうか?しかしそうなると店の名前をホーソンにしたがる私が、私の前に立ちはだかる。またダジャレ状のものを背負って生きて行くのか?そんなんじゃあ、つまらないぞ!とホホホ座の私が言う。町のホホホステーション、とホーソンの店長である私が言う。この争いの決着がつくのは再来年だ。

何をするかはさておき、場所は京都三条大橋西詰を南に下がって木屋町方面へ折れたところ、先斗町の北端ドン突き、その名を知る人は少ないが石屋町という所にある改造可能な借家に決めた。鴨川の沿いに中華料理店のミンミンがあって、その三軒隣。名乗りはホホホ座三条大橋店、これで決まりだ。川寄りの三軒のどれもに私は行ったことがあるが、うち二軒については行ったことがあるどころか日常的に飲み食いしに通っているのだが(五六八の秋のサンマが美味い)、まさに列強、それぞれが唯一無二の珍妙な個性を放っている(なぜかバカにしてるような口ぶりになってしまうのと、どうせなら是非店の人のモノマネ付きで紹介したいという強い思いがあって、それぞれの個性がどんなものなのかをここで詳しく述べることはできない。とにかく珍妙なのだ。というか珍妙という言葉こそが珍妙だ。珍で妙。チン、みょう。)負けてはいられない、家主のNさんを相手に、その場で思いついた構想を披瀝する。「入ってすぐのこのあたりはキッチンですね、川辺に持って出て行けるような軽食、あさりバーガーとか、夏はアイスやビール、いっそビールフロートなんかを売るようなスタンドにして、奥は向かって左の壁一面に天狗の面を貼り付けて、鼻にかわいい物を引っ掛けて売っちゃいましょう。こういう不揃いな天狗の鼻なんかをサラッと什器使いしてしまうところにセンスが黒光るわけですね。他は空けておいてヒマなおじさんが手品の練習とかしとけばいいんじゃないでしょうか。」とかなんとか、あぁ、手堅いこと言ってんなあ、と思いながら。

ところが。
当然だがそれなりに家賃が発生するのだが、Nさんのご厚意で家賃が世にも珍しい後払い式になっていて、油断した私は何よりも先にまず犬を中へ入れてしまった。犬の名前は「みどり」という。元の飼い主は、単純に見た目で付けた名前だと言ったはずだが、確かめる間もなく「みどり」は「緑」ではないのだろう、という所までは考えたが、みどり、と呼ぶと嬉しそうにするのですぐにそんな名前のことはどうでもよくなってエサをあげたり、遠くまで散歩に連れて出たりして可愛がっていた。みどりは乾いていてもずぶ濡れのような毛並の、プードルと何かの雑種のような犬で、割と人目を引く。おもしろがって触ろうとする人もいるからなるべく触られないように散歩は夜中にした。散歩に出て鴨川の川べりを北へ歩いて行き、途中で高野川へ逸れ、大原の小出石町という所まで行き着くと、暗くてほとんど何も見えない向う岸に向かってワンワン吠えて帰って来るのが日課で、私はみどりが小出石の河原でワンワン吠えている20分の間、早く終わらんかな、と思いながらボーっと立っているのだったが、みどりのことを面倒に思ったことは一度もない。みどりだって、私に気を遣って、本当はもっと遠くまで行きたいのを堪えて吠えているのかもしれない。泣いているのかもしれない。でもこんなことをして忙しがっていて、待ってくれているみんなには本当に申しわけない、とも思うのだが、私の代わりにみどりを小出石まで連れて行ってくれる人はいないだろう。
それで借家は今でも、みどりの住む大きな犬小屋でしかないのだが、じきに家賃が発生し始める。とりあえずいったん、このままホホホ座を名乗ることは可能なのだろうか?
「ホホホ座三条大橋店は、ちょっと珍妙な感じの犬を見に行く所です。犬の名前は、みどりと言いまして、大きい方のプードルと何かの雑種だと思います。私は犬種のことをよく知らないので雑種ではない外国の犬の可能性もありますが、みどりのような見た目の犬を他で見たことはありません。と言ってもそれほど珍しい感じの見た目というワケではありません。散歩に8時間かかります。」面接受かるかな?まあ、大丈夫だろう。

イラスト:よこづな文庫

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加地猛かじ・たけし

ホホホ座座員。本業は100000tアローントコ店主。

京都市役所の横でレコードと古本を売り買いしている。42歳。太ったり痩せたり太ったり。だいたいだらしなく太っています。申し訳ない。

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