ホんまかいな通信

第8回 ホホホ座三条大橋店改名騒動通信

2016.09.19更新

 和田くんは中で生きていました。みどりの中にいました。なにそれ?食われたん?あるいは、犬の外皮を被って、中で犬の姿形に合わせて動いてんの?とか、魂的な意味で?とか言われるんですが、知りません。強いて言うなら、進撃の巨人のイメージで、中でなんかぐちゃぐちゃくっついちゃってる感じですかね。どうでもいいですが。
 和田くんを移したのはきっとうめのくんです。うめのくんは時々そういうことをします。
この後、和田くんは見た目は犬ですが、頭脳は和田くんという名探偵コナン的な活躍を始めるのですが、少しは犬なので汗をかいた後には、そんなに飲む?ってくらいに水をガブガブ飲んで手間取ったりします。話す時はアニメや実写の映画のように話す言葉に合わせて犬の口が動くわけではなく、口が開きっぱなしになって奥の方から和田くんが話しかけてくるので耳を近づけないと何を言っているのかわかりません。ご飯は手渡しで、ちょっと待って、と言って奥でなにかごそごそしてから和田くんの手が犬の口から出てきます。便は同じようにして手渡しておいた京都市指定の家庭ゴミ用の黄色い袋に入れてわざわざ犬の後ろ側から出してくるのですが、その時も手が外に出てくるので案外中で身体の自由が効くようなのですが実態は不明です。一度、和田くんの仕事のパートナーである小西くんが苛立って、さっさと出て来いよと言うと和田くんは怒ってひとしきりワンワン吠え、それから奥で息を切らしながら「簡単に言うなや。なにがどうなってんのかわからんし出たくても出られへんねん」と寂しそうに言うので、以来、私たちは、出て来れそうに見えるし早く出てきたらいいのに、とは思わなくなりました。小西くんは謝り、和田くんを鴨川へ連れて出て二人で川に入り、ザブザブ歩きました。私は川べに座ってビールを飲みながらその様子を眺めていたのですが、和田くんは尻尾をブンブン振って本当に気持ちよさそうにしていました。二人は仲良しです。東の山の上にはもくもくの入道雲、あぁ、夏やなあ、と私は思いました。

 それで私たちは犬の言うことを聞いて、ホホホ座三条大橋店の工事を進めていくことになりました。逆らうと吠えるので大人しく言われるがままにしているのですが、椅子はなくしてお客さんがラグに寝そべる感じにしてはどうかとか、和田くんの提案はいちいちちょっと犬寄りなので困ります。散歩に行きたくなると我慢するのですが、必ず限界に達して吐いてしまいます。そのうち吐く前に小西くんが散歩に連れて出るようになり、行くと2時間は戻って来ないのでした。様子を見に行くと、川上の遠くの方で2人で延々とボールを投げて取ってくるやつをしています。和田くんはああして遊びたいのを吐くほどに我慢して気丈にふるまおうとしているのです。あのボールをくわえて走り回っている大きな犬が、私たちの店作りのリーダーなのだ、ラグを敷こう、あの大きな犬についていこう、と私は思いました。
しかし和田くんはその頃から無口になり、やがてワンとしか言わなくなりました。ワンとしか言わないのですが、複雑な思考を伝えようとしているようなのです。ワン、と言うので現場の状況から察してこうこうこういうことなのか?と尋ねます。すると、ワンワン、と、違うと言っているように吠えるのです。じゃあ、こういうこと?と尋ねます。ワンワンワン、と、違う違うと言っているように吠えるのです。喉が渇いたのかな?と思ってボウルに水を張って与えるとガブガブ飲むのです。なんだ、喉が渇いてただけなのか、まるで犬のようだ、とKが言いました。和田くんが妊娠しているとわかったのは8月に入ってすぐのことでした。
 その頃にはホホホ座三条大橋店は中のものを全てブチ抜いてがらんどうになっていました。土の上に和田くんが敷きたがっていたIKEAのラグを敷き、和田くんを寝かせました。店は大きな巣のようなものになり、いったん元の暮らしに戻った私たちは手分けして日参し、和田くんの様子を見守りました。
この続きはグロ過ぎるやら不謹慎やらというので発禁をくらいましたので削除しました。聞きたい人は直接カジまで。

 年老いて耳の遠い母親に「今度、新しい店するんやけど。」と告白すると「なんて名前の店?」と訊かれ、私は少し困りました。ホホホ座なんて突飛な名前をすんなり飲みこめるとは思えなかったのですが、しょうがないので正直に「ほほほざ」と答えましたら案の定つっかえて「ほ?」と戸惑っています。もう一度、今度はゆっくり大きいめの声で「ほ、ほ、ほ、ざ」と言ってみました。耳の遠い母親はことさらに口をホ用に造形しつつ私にならったスピードでもってこう言いました。「ほ、ほ、ほ、ざる?」ホホホ猿?ほ、ほ、ほ、と言ってるうちに猿が混じってしまいました。しかたがありません。

 というワケでホホホ三条大橋店改めホホホ猿は、10月冒頭に開店予定です。乞うご期待ください。

イラスト:よこづな文庫

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加地猛かじ・たけし

ホホホ座座員。本業は100000tアローントコ店主。

京都市役所の横でレコードと古本を売り買いしている。42歳。太ったり痩せたり太ったり。だいたいだらしなく太っています。申し訳ない。

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