インタビュー・ミシマガ「人」

バーグハンバーグバーグという会社がある。
「ハンバーグ」を「バーグ」でサンドした、何とも珍妙な社名だ。

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会社のウェブサイトも、実にぶっ飛んでいる。
背景画像はキワモノ感満載。色遣いも、極彩色というよりは、むしろけばけばしい。
そしてその前面にあるのは、ふざけているとしか思えない記事や写真、画像・・・。
企業のウェブサイトをイメージして訪れただけに、衝撃的な光景に、しばし思考が止まる・・・。
「常識的」なイメージとのギャップがあまりにも大きすぎる・・・。

「いやいや、いくら何でも会社概要辺りにはちゃんとしたこと書いてるでしょ」
そう思って他のページも覗いてみたが、脳内の混乱にはますます拍車がかかるばかり。

一体全体、この破壊力は何だろうか?
中には、よく理解できないものもある、いや、理解できないものの方が正直多い。
だが、一度見たら忘れられない、この圧倒的な存在感は何なのだろうか?
そう言えば、設立は「2010年6月」と書いてあった。生まれたてホヤホヤだ。
いろいろ見ていると、CNET Japanで代表シモダ氏のインタビューが掲載されているという。
CNETと言えば、インターネット・メディアの老舗。そこでなぜ、生まれたてホヤホヤのぶっ飛んだ会社が紹介されているのか?

謎は深まるばかり・・・。
だが、この謎を、捨て置けるはずもない。
これをやっているのはどんな人たちなのか?
このバカげた会社をどうやって立ち上げたのか?
見る者にこれだけの破壊力を感じせしめるエネルギーの源泉はどこから来るのか?

そんなことを確認すべく、バーグハンバーグバーグのオフィスへと向かった。

(聞き手:大越裕・萱原正嗣、文:萱原正嗣)

第20回 株式会社バーグハンバーグバーグ(前編)―ふざけた会社ができるまで―

2010.10.20更新

バーグハンバーグバーグは「おふざけ専門」の会社です

―― 本日はよろしくお願い致します。バーグハンバーグバーグさんのウェブサイトを見て、とにかく衝撃を受けました。なかには理解できないものとか、引いてしまうものもありましたが、それも含めて、ものすごい破壊力を感じました。

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シモダ(代表)ありがとうございます。
そう言っていただけるのは嬉しいですね。

―― こういうものがどうやって生まれてきたのか? みなさんがどういう人たちなのか? そんなことをぜひ伺いたいと思っていますが、その前に、まずはバーグハンバーグバーグという会社がどんな会社か、読者の方に向けて簡単にご紹介をお願い致します。

シモダえっと・・・、簡単に言うと「ふざけていることをやる会社」ですかね。仕事の内容としては、ウェブコンテンツの制作が一番多いのですが、どうなの? そうなの? 多いの?(とメンバーに振る)

山口うちは、「オモコロ」というおバカな記事専門のメディアを持っているのですが、それが会社の核となっています。オモコロを見たクライアントの方から相談をいただいて、それに対して企画から提案していくことが多いです(オモコロについて)。

シモダオモコロがきっかけでお仕事をいただくことが多いので、クライアントさんも、「こんな感じのものが生まれるだろう」っていうイメージをあらかじめ持ってくれています。だからイメージのズレが生まれることは少ないですね。おかげさまで、イロモノ仕事が多くて楽しいです。

―― 「ふざけていることをする会社」というのが、会社をつくるときのコンセプトだったんでしょうか?

シモダコンセプトというと大袈裟ですが、できるだけ遊んでいるような感じで仕事をしていきたい、という思いはありましたし、今もそう思っています。

山口社名もカッコ悪いですしね。まぁ、まともなことはしないだろうな、とは思います。

―― CNETのインタビューで、社名決定会議のエピソードを紹介されていましたが、社名は、実は何か意味があったりしないんでしょうか?

シモダありません、完全にノリです。

―― 他にはどんな候補があったんですか?

シモダ(CNETでも紹介した)「ルアンパバンTheサイガガーン」の他には、「サーイガンササーイ」、「イカホット」辺りですね。

―― どれも意味不明ですね(笑)。

シモダ飲みながらその場の笑い重視で出したものばかりで、行きすぎのものが多くて・・・。候補のなかから、一番マシで「一番後悔しなさそうで後悔するやつ」っぽいのを選びました。

三人の役割を車に例えると・・・

―― みなさん同い年くらいでしょうか?

シモダ僕と原が同い年(81年生まれ)で、山口が2つ下(83年生まれ)です。

―― お三方の役割分担はどういう感じですか?

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山口僕は基本的に案件の取り回し役です。資料をつくったりちょっとした画像をつくったりと、手を動かすこともありますが。前職はウェブ制作会社でディレクターをやっていたこともあって、基本はハンドルを握る、割と真面目な役回りです。
僕はフツーです。フツーなんです。

―― 2回強調されましたね(笑)。

シモダ山口くんは、ディレクター業務以外にも、クライアントがついている連載コンテンツをオモコロで担当してます。クライアントはAdobeさんなんですが、Photoshopを使っていろいろなバカ画像をつくる連載です。フツーとか言っていますが、その連載のなかで、自分で自分を亀甲縛りするような、そんな仕事してますね。

―― その連載ってDEKIMAGAですか? 知人がスタッフにいます。

シモダそうですそうです。DEKIMAGAのオモコロ出張版みたいな感じです。それをこちら側で好きにつくってやらせていただいています。

―― 原さんはどういう役回りでしょうか?

僕は、ネタ出しですかね。

シモダコンテンツ回しというか、工場長です。バーッとつくる人です。

―― 具体的にはコーディングとかでしょうか?

シモダデザインとかプログラミングではなくて、オモコロの運営をバーッとやってもらっています。あとは・・・。

大喜利ですね。すべての業務に言えるのですが、ずっと大喜利やっているような感じです。

シモダその表現が一番あっているかも(笑)。ちなみに、オモコロに大喜利コンテンツがあって、原さんはそのコーナーの「生徒会長」をやっています。

―― 「ずっと大喜利やっている」というのは大喜利千本ノックみたいな感じですか?

シモダ案件にあわせて大喜利をやっているような感じです。

企画って、大喜利のお題が出ているようなものだと思うんです。「こんな◯◯◯は嫌だ」みたいなお題を企画から連想して、ひたすら答えている感じです。

―― アイディア部門の重要な役回りなわけですね。

せっかくなんで、三人の役割も車とかでキレイに例えたいですね。

シモダ・山口いま大喜利しなくていいですよ。

山口くんがハンドルなら、シモダさんがエンジンで、僕はガソリンですかね。

シモダ・山口!!!

―― お後がよろしいようで(笑)。シモダさんの役割は?

シモダ僕は何ですかね。仕事引っ張ってくるのと・・・

山口こういう方向で行こうって決めることが多いですね。

シモダそうですね。大枠やコンセプトをつくって、クオリティ・チェックをして、そんな感じです。あとは毎日漫画描いたり、飲みに行ったりしてる人です。

―― 毎日ですか!?

シモダまぁ、会食なんですけどね。会食がたまたま毎日入ってくるんです。いろんな人のいろんな話が聞けて楽しいので、面白がってホイホイ行っています。

―― どういう人と飲むことが多いんですか? お仕事柄IT系でしょうか?

シモダITの人が多いかもしれません。
何を話すってこともないような気がしますが、仕事の話をすることもあります。仕事の話をしないこともありますが、そういう場合も、結果的にまったく仕事にならなかったことはほとんどないですね。友達半分、仕事仲間半分みたいな付き合いです。

喋っていると、相手が求めていることも、こっちが求めていることも、何となくわかるじゃないですか。飲みながらのそういう会話のなかで、「僕らってこういう人間なんだよ」っていうのを会話のなかでわかってもらって、それが何かの会議のときに、自分たちを思い出してもらうきっかけになればいいな、と思っています。

「テキストサイト」が出会いのきっかけでした

―― 会社立ち上げにいたるまでの流れを伺いたいんですが、そもそもみなさんはどうやって知り合ったんでしょうか?

シモダここにいるメンバーに限らず、オモコロのメンバー全員とはインターネットで知り合っています。全部で40人くらいいますが、もとから友人だったという人はひとりもいません。いわば「ネッ友」です。

山口今でこそmixiとかtwitterがあるので、そのあたりのハードルはずいぶん低くなったとは思うんですが・・・僕らが知り合ったのは、古い人だとまだブログもないような10年近く前になりますね。

―― どうやってお互いのことを知ったんですか?

シモダその頃、「テキストサイト」ブームというのがありました。

―― 「テキストサイト」?

シモダ「ブログ」が登場する以前の時代に、個人がインターネット上で書く日記みたいなサイトのことです。有名なところだと「侍魂」っていうサイトがあります。「先行者」っていう中国のロボットネタがかなり話題になりました。名前の通り、文字中心の読み物サイトです。

オモコロのメンバーは、ほとんどがもともと笑い系のテキストサイトをやっていて、お互い顔は知らないけれど、お互いのサイトは知っている。そんな関係でした。でも、それ以上仲良くはならないんですね。「こいつめちゃくちゃ面白い」って内心思いながらも、「オレが一番面白い」っていう自負が根っこにあるので、「あんなヤツと仲いいなんて思われたら・・・」、「群れてるって思われたら・・・」と、敬遠しあっていましたね。

―― それは、2000年ぐらいのことでしょうか?

シモダそうですね、2000年から2001年くらいにかけてのことです。

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僕はその頃テキストサイトしかやっていませんでした。周りが部活とかバイトとかしている頃、大学も行かずに日々ひたすら日記を書いていました。完全なニートです。

シモダホントに最初は、そのテキストサイトつながりが多いですね。オモコロのスタッフはほとんどスカウトなんですが、サイトを見ればどういうものをつくっているかがわかりますし、「こいつはこういうところが面白い」、「こいつはこうだ」っていうのもわかるので、判断がしやすいんです。

―― お三方の出会いはいつ頃だったんでしょうか?

シモダふたりとも、8年、9年前から、サイトの存在は知っていましたが、実際に会ったのはそれよりずっと後です。原さんと会ったのは2年くらい前ですし、山口くんの場合は、5年くらい前です。
山口くんは当時やっていたサイトが面白くて、僕がメールを出したか、サイトの掲示板に書き込んだかが、最初の接点です。

―― どんなサイトをやられていたんですか?

シモダ一年に一回しか更新しないサイトをやっていたんです。面白いんですが、たまに見に行ってもちっとも更新されていない。それで、「更新されてないけど、元気?」みたいなやりとりを一年に一回やりとりするような仲でした。七夕で織姫と彦星が一年に一回会うみたいな行事です。そういうのが何年か続いて、オモコロをつくって半年くらいしたときに、「一緒にやらない?」って掲示板に書いたんですね。

―― その時点でまだ会ってないんですか?

シモダ会ってないですね。

山口ちょうどそのタイミングで就職で上京することになっていたので、とりあえず東京で会うことにしました。最初はほんと怖かったんですよ。ネットで知り合った人に会うとか、怖いじゃないですか。

シモダでもまあ結局は、掲示板のやりとりだけで会っちゃいましたね。それがオモコロをつくった頃なので、だいたい5年くらい前です。新宿のゴールデン街に飲みに行って、おしゃべりしたら「やろかぁ」みたいな感じになりました。

―― 5年前にそれはすごいですね。ちなみに、山口さんがやられていた、「年に一回更新するサイト」っていうのは、どんなサイトですか?

シモダ更新というか、毎回完全なリニューアルをしていましたね。

山口面白いのを思いついては、エネルギーを注ぎこんでサイトごと新しくつくり直すんです、サイト全面を真っ赤にしたりして。それで満足しちゃって、もういいやって放置してました。

シモダ新しいものをつくっているときって、モチベーションがめちゃくちゃ上がるじゃないですか。それで一気にやるけど、またすぐに飽きちゃうタイプなんです。で、その後ずっと更新がなくて・・・。たまに見に行っては、「やっぱり変わってないなぁ」、「あと何カ月か待ったらまた変わるかなぁ」って思う。そのサイクルが何年も続きました。

―― 昔はRSSとかなかったからいちいち見に行かないといけないですもんね。

シモダそうですね。いちいち見に行っていました。

そう思うと、インターネット黎明期からずっとテキストサイトをやっていたなとつくづく実感します。仕事もしないで。

あまりにモテなかったので、テキストサイトに走りました

―― インターネットに触れたのはいつ頃ですか? 中学生とか高校生くらいでしょうか?

シモダ僕は意外に遅かったですね。インターネット歴は9年くらいしかありません。20歳くらいからです。それまで、家にパソコンはあったのに、なぜか両親はインターネットにつないでなかったんです。「つないでくれ」って何度頼んでも、なぜかつないでくれなくて・・・。
学生時代はバックパッカーをしていたんですが、あるとき旅に出る前に、「行ってる間につないでくれへんかったら、もう帰ってこぉへんで?」って言っておいたら、さすがに親も心配したのか、帰ってきたらインターネットにつながっていました。

―― どこら辺に行かれていたんですか?

シモダ東南アジア辺りをぐるぐると。年間4カ月くらい行っていました。バックパックから帰ってくると、なぜか引きこもりたくなるんです。一週間くらい一切外に出なくて、部屋にこもって・・・。そのときにインターネットに触れたんですが、とにかく「面白い!」と思って、ホームページをつくろうと思ってつくり始めました。

―― どんなサイトをつくっていたんですか?

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シモダえーっと・・・病弱で、すぐに死んじゃう紫色の小6の男の子と、緑色の妖怪が会話をするサイトです。そのふたりはただ悪口言い合っているんですが、たまに男の子のほうが吐血したり、脳が飛び出したり、恐竜になったりする。そういうサイトをやっていました。
タイトルは「ゴブリンと僕」です。

あとは、「半ズボン」っていうテキストサイトもやっていました。そこでは・・・、人が嫌がるバナーなんかをつくっていました。画面をずっとスクロールしなきゃいけないようなタテに7mくらいある長いバナーです。適当な絵を描いて、スイカの絵を貼りつけて、サイト名をバーンって。すごく迷惑だったと思います。

―― (笑)そういうサイトをつくろうと思ったのはなんでまた?

シモダテキストサイトをやっていた人はみんな同じだと思うんですが、「自分の笑いの感覚ってどこまで通じるのかな?」っていう思いからですかね。
インターネットが普及する以前は、自分の面白さを世の中に見てもらうには、芸人になるか作家になるか・・・くらいしか道がないというか、オーディション的なものを通らないといけないっていう、狭き門だしいろいろハードルもありました。

そんな思いはあるけど、かといって芸人や作家になろうとしているわけでもない。そういう状況のなかで、インターネットとかホームページっていうのは、自分の身内を笑わせるんじゃなくて、顔も知らない人達を笑わせることができる場だと感じたんですね。ホームページをつくり始めてすぐに、「こういうことをやって飯食おう」って思っていました。

―― 始めてすぐに「これで飯食おう」って思えるところがすごいですね。

シモダなんでしょうか、ピタっとはまったんでしょうね。ピタっと。(左手でつくった輪っかに、右手の人差し指と薬指を差し込みながら)
「インターネットで食べていくことになるやろなぁ」と何となく・・・。初めて触れたときの直感です。

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―― 面白いものをつくりたい感覚はわかるんですが、それを知ってもらうのって難しくないんでしょうか? 面白いものをつくれば、評判って勝手に出るものなんでしょうか?

シモダ当時は、「ReadmeJapan」(リードミー・ジャパン)っていうサイトがあったんですよ。

―― 「ReadmeJapan」?

山口テキストサイトを登録して、人気ランキングが見れるっていうポータルサイトみたいなものです。今は休止中みたいですが・・・。

シモダ登録されたテキストサイトのなかで、ユニークユーザーの数でランキングをつける仕組みです。20万件くらい登録がありましたが、そのなかで、自分が何位なのかで切磋琢磨するみたいな文化がありました。

その順位に一喜一憂していましたね。まったく仕事もしないで。

―― みなさん何位くらいだったんですか?

シモダ一番有名だったのは原さんですね。「桃色核実験」っていうサイトをやっていました。

―― どういうサイトですか?

あまりにも現実でモテなかったせいで、頭がおかしくなったんでしょうね。脳内でつくり上げた女の子と会話をしよう! と思ったんですよ。で、そういうサイトをつくって2年くらい毎日更新していました。そのうち話が発展して同人誌をつくってコミケで売ったりもしてたんですけど、たまに「あ、オレ何してんのかな」って思いましたね。

―― 意外と冷静なんですね(笑)。20歳くらいの頃でしょうか?

22~3歳くらいです。

シモダしっかり成熟してから気づいたんですね。

山口遅い。


今回は、バーグハンバーグバーグという会社の紹介から、お三方の役割分担に出会いのきっかけ、お三方がインターネットにのめり込んだ経緯について伺いました。
今回のお話のなかからも、バーグハンバーグバーグの独特な存在感の源を感じ取っていただけたのではないかと思います。

さらにバーグハンバーグバーグの面白さの秘密に迫るべく、オモコロのくだらなすぎる記事のつくり方から、シモダ代表の驚きの就職活動エピソード、お三方に影響を与えたものに今後の野望まで、次回も盛り沢山でお届けします。

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シモダ テツヤ
山口 むつお
原 健一郎

シモダテツヤ(しもだ・てつや)
株式会社バーグハンバーグバーグ代表取締役 兼 オモコロ編集長。タイの安宿でみんなが小便をするところを洗面所と間違えて毎日顔を洗っていたことがある。

山口むつお(やまぐち・むつお)
バーグハンバーグバーグで働くディレクターです。弊社運営のWEBマガジン「オモコロ」ではエンデバー山口と名乗っています。ただいま腹をこわしていますので、これにて失礼させていただきます。

原健一郎(はら・けんいちろう)
バーグハンバーグバーグのスタッフの工場長。弊社運営のWEBマガジン「オモコロ」では、原宿と名乗っています。好きなおかずは「ご飯と合うおかず」、好きな家は「屋根がある家」です。よろしくお願いします。

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