インタビュー・ミシマガ「人」

 今回のインタビュー・ミシマガ「人」は、京都・東山にある民藝品「MOTTAINAIクラフト あまた」の店主・若本紀子さんにお話をおうかがいしてきました。

 若本さんは大学時代に陶芸を専攻され、作り手としての知識・経験も豊富。各産地の、風土・習わしなどを作り手目線で理解されたうえで、実際に足を運ばれ「良いモノ」をたずね、集められています。

あまたさん

 興味を持ってくださる方には、「この器はどんな場所でどんな人が作っているんだろう」、そんな情報まで持って帰ってもらいたいとお話される若本さん。
 平日にも関わらず常連さんが顔をだされ、ただお話をされて帰られる光景は、モノを売る人・買う人だけの関係ではなく、生活の一部にとけ込まれているかんじがして、素敵だなとおもいました。
 
 今回は、「良いモノ」をたくさん扱われている若本さんに「暮らしを豊かにするヒント」を教えていただきました。
 「良いモノ」、いつかは揃えたいけれど、そこまで贅沢はできないし・・・、そんなふうに思っていたミシマガ編集部ですが、「暮らしを豊かにする」とはどういうことなのか、改めて発見のあったインタビューでした。

 「ものづくり」や「民藝品」、「手仕事」などに興味がある方はもちろん、小さなお子さんがいらっしゃるお母さんや、これから「良いモノ」を揃えていきたいと思われている方なども、必見です!

(構成:寄谷菜穂、市道野愛、写真:新居未希)

第33回 「MOTTAINAI クラフト あまた」店主・若本紀子さん

2014.04.22更新


「生活の革命」がおこるほどのカルチャーショック

あまた

――「良いモノ」を知る機会というのがなかなかないのですが・・・。

若本「良いモノ」ですが、それは他の人が見たら、全然「良いモノ」と思わないものかも知れないですよ。「なんと地味な器」とか(笑)。
「良いと思って選んだけどすごく持ちにくい、このカップ」ということもありますよね。

―― はい。

若本良い悪いとか安い高いというのはただの物の判断基準なんです。安くても優れたデザインであったり機能的なものはたくさんあります。
 「良いモノ」というのは、日常で自分が「ここちいいな」と思えるもの、安心できるものだと思うんです。

―― なるほど〜。どうすれば出会えますか?

若本それは、やっぱり自分の身体の感覚のことですから、実際に使ってみないとわからない部分も多いですね。「授業料」だと思っていろんな物を使って、自分なりの判断基準を深めていくことではないでしょうか。使って、ここちのいいものは、身近に置きたくなりますよね。

――「このペン書きやすいから自分のペン立てにいれとこう」とかありますね(笑)。

若本使っていて身近に置いてるうちに物じゃなくなるんです、不思議と。物から相棒になるんです。愛着が湧いて、ないと寂しい存在になっていきます。
 そこまで使ってくると、モノの豊かさというか大切さが感じられるようになるんじゃないでしょうか。

―― たしかに。特別な感覚ではないわけですね。

あまた

若本そうです。そういう感覚を振り返ってみると、モノを見る目もだんだん変わってきます。
 もちろん、絶対にそうしなくてはいけないということではないですから、知らずに生きていくこともできるんです。ただ、同じご飯食べるにしても、お弁当をそのままチンして食べるより、器に入れなおして食べたほうが美味しそうじゃないですか。

―― はい。

若本食べている自分も元気出るし、食べているものに対してありがたい感じがする。そういうことが、食感、香り、重み、感覚、色など「五感で楽しむ」暮らしなんだと思います。


「割れたら使えないから、大切につかおうね」

―― 小さいお子さんがいらっしゃるおうちでは、割れ物をつかった食事はなかなか難しいような気もするのですが。

若本五感ということでいえば、先入観のない子どものほうが、よっぽど敏感です。
 大人はいろんなものを見ているので、良い・悪いを値段で判断したり、誰々が勧めているからきっといいのだろう、となってしまいます。その点子どもは真っ白ですから。

―― はっ・・・!

若本自分で持った時に持ちやすいとか、色が綺麗に見えるとか、そういう純粋な感覚でモノを選ぶと思うんです。

―― ふむふむ。

あまた

若本お客様の中に、ご自分用に買われたコップを、お子さんが「これに牛乳いれて飲んだら美味しい」といっていつも棚の奥から引っ張りだされるんで困ってるんです、大切に使いたいのに。と言われた方がいらっしゃいました。

―― へ〜!

若本つかって楽しい、ここちいい、美味しい、純粋な子どもはそんなふうに感じられるんだと思いました。
 繊細で高いものでなくていいんです。ちょっとやそっとでは割れないしっかりした作りの焼き物もあります。買える値段の範囲で丈夫にできているもの、それを使ってもらって。それで、割れたときは割れたときで子どもに「割れるものですよ。大事に使ってあげないと、こんなふうに使えなくなるんですよ」ということを教えてあげてほしいんです。

―― なるほど。モノを大切に扱うことについて教わる機会って、こういうことなんですね。


今は逆に、「手しごと」の良さを知る新しいチャンス

あまた

―― さっきから気になっていたのですが、おたまのような、このお品は何につかうものですか?

若本もともとは、船の中にたまったお水をかきだすためのものです。葉っぱが乾燥しきる前に、くるっとまるめて、それから完全に乾燥させてあるんです。

―― へええ、割れないんですね! これでお水がすくえるんですか!?

若本はい、しっかりすくえますよ。軽いし、引っ掛けていても絵になるでしょう?

―― かわいいです!

若本今では、「民藝品」って死語のようになっていますが、昔の人はみんな身近にあるものを使って工夫して人間の道具を作り出したんですね。
 食べるものを土から作って、葉っぱを使ってかごを作ったり。そうした自然の恩恵を大事にしてきた生活があったんです。

―― ふむふむ。

若本それがだんだんと科学的なものが入ってきて、輸入のものも増えて、プラスチックのように安くて軽くて大量に早く作れるものに変わってきました。そうした土地のものを使ってする「手しごと」がだんだんと絶えて無くなりつつあります。

―― さみしいですね・・・。

若本ただ、今は逆に、「手しごと」の良さを知る新しいチャンスでもあると思うんです。人間も馬鹿じゃないので、無くなってきたらそういうものがまた恋しくなったり、その良さが感じられるようになってくるものでしょう。

―― 本当ですね。「民藝品」というと、"骨董品"のようなごく一部の方が楽しむ贅沢な世界というイメージがあったのですが、元々はごく身近にある自然のものをつかった生活用品だったんですね。


 モノを選び、つかうことを通じて、自分の感覚に素直に問いかけることが、豊かに暮らすひとつの足がかりになるというのは、新しい気づきでした。若本さん、ありがとうございました!

 「MOTTAINAI クラフト あまた」さんでは、定期的にワークショップや展覧会などもされています。みなさんもぜひ一度お店にいってみてください。


インドだもん

MOTTAINAI クラフト あまた
〒605-0913
京都市東山区大和大路通五条下る石垣町東側65番地
TEL:075-531-5877
営業時間:11:00〜19:00

・京阪清水五条駅より徒歩10分
・四条河原町より京都市バス80/205/4/17番
「河原町五条」「五条京阪前」下車
・京都駅より京都市バス100/206番
「博物館三十三間堂前」「馬町」「五条坂」下車

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