インタビュー・ミシマガ「人」

 以前より「インド映画を観に行こう!」「となりのインド人」などの特集をしたり、インドと聞けばなにかと血が騒ぐミシマガ編集部。
 それも全部、ミシマ社のインド博士こと装丁家・矢萩多聞さんからの影響でございます。ミシマガの人気記事「たもんのインドだもん」を連載してくださったり、ミシマ社本や紙版ミシマガジンの装丁をお願いしたり、なにかと日々やりとりさせていただくことが多いのですが、そんな多聞さんから、またしても気になるお話が。
 なんと、壷をたたいて生活している元・会社員のご友人がいらっしゃるらしいのです。

 えええ!? 会社を辞めて壷をたたいて生活? いったいどういうことでしょう。
 ・・・よっぽどの自由人なのでしょうか。ん〜、気になります。

 ということで、多聞さんにお願いしてみたところ、さっそくご一緒にミシマ社オフィスに来てくださいました!

(聞き手、構成:寄谷菜穂、山本ひかる 写真:新居未希)

第35回 南インドの打楽器・ガタム奏者 久野隆昭さん(後編)

2014.05.15更新

車の中で毎日半裸!?

―― どうやって演奏できるようになったんですか?

久野誰に習っていいのかまったくわからなかったので、本当に体当たりというか。若かったしバカだったので、ひとまずインドに行って。

―― とりあえず行ってみようと(笑)。

久野そう。調べたんだけど、当時ネットでもそんな情報ないから、足で歩いて情報集めて、どうやらお寺でよく演奏しているらしいから、お寺のある有名な町をまわってみたり、お寺で待ってみたり。でも誰も来ないし。音楽と踊りを教えている学校でもここでは教えていないといわれ。

―― あらら。



久野でもガタムの演奏者リストならあるよって、いただいたんです。ABC順の。それを上から順番にひたすら電話をかけていきました。それで最初に教えてくれるって言った人に習ったんです。だから、最初に教えてくれた先生はエレナクラムさんっていう、Eで始まる・・・

―― ああ! リストの上のほうの人(笑)。

久野そう。その人がおじいさんだったんだけど、いつ来れるんだっていわれたから、さっそく行って、習ったね。

―― その師匠には、どのくらいの期間習われたんですか?

久野2、3年くらいかな。学生のときにインドにいたのは1年なんだけど、その後は普通に就職して、その間も弟子である状態は続いてました。

―― 最初は当初の予定どおり、平日会社、週末打楽器(ガタム)だったんですね。

久野そうそう。ところが、日本にもインドの音楽やっている人が結構いて、だんだん演奏させてもらう機会が増えてきたんですよ。そうしたら、これをもっとやりたいなと思ってきて。
 仕事がまあまあ忙しかったので、夜遅くに帰るともう音だせない。だから車のなかで毎日半裸でやるみたいな生活でした。

―― ええ~!! 車の中で上半身裸で(笑)。

久野すごい好きだったからね。ハマってて。それもあって、どうしてもこれをもう1回、もう1年習いに行きたくなって。

―― ほほう。

久野それで仕事をやめて、どうしても習いたかった今の師匠に弟子入りするため、またインドに1年行きました。


安定した生活か、壷と心中するか。

―― 会社をやめるときは迷われなかったんですか? 

久野迷ったよね。迷った、迷った。だって、仕事かガタムか、安定した生活か壷と心中する生活か、みたいなことだし。

―― 仕事がいやだったというわけではなく、ですか?

久野そうでもなかったね。やめるときも、結構とめてもらったので。最後は社長を説得するために、社長室で演奏しました。

―― ええええ!

久野「ちょっと一回見せてみろ!」って言われちゃって。後で上司に聞いたんだけど、社長が「久野くんが、あの壷をなぁ・・・」ってひとこと言っていたらしい(笑)。

一同(笑)。

―― 会社は何年くらい勤められたんですか?

久野2年くらいかね。

―― もうかなりガタム歴のほうが長いんですね。

久野そうそう。自営業になってから8年くらい経つかな。確定申告も、ガタム奏者で申告してますよ(笑)。


別にドラマとか事件みたいな大げさなことばかりがあるわけじゃない

―― 土日以外でも、平日にも演奏会があったりするんですか?

久野そうですね、ツアーとか行くと平日も入りますけど、土日が多いですかね。平日は生徒を教えたり。

多聞もうね、教室は大人気なんだよ。

久野や〜、そんなそんな。あ、でもやっぱり「なんでガタムはじめたんですか?」っていうのが生徒さんからの質問でも一番質問多いんだよね。

―― 気になる気持ちはすごくわかります。

久野まあそうなんだけどね。流れでっていうと適当に聞こえちゃいますけど、ぼくにとっては、それは結構自然というか。あとから考えれば人生の大きな転換期であっても、別にドラマとか事件みたいに大げさなことばかりがあるわけじゃないでしょ?

―― ほお〜。

久野あの人に会ってあの演奏があったから、みたいなことって、ぼくにはリアリティが感じられないというか。取ってつけた感があって。

―― ふんふん。

久野ぼくはやっぱり、細かいふつうのことが積み重なって、結局今振り返ると、それはもう、偶然とは思えない方向に進んで行ってたりするんだけど・・・。

多聞最初の師匠だって電話帳だからね(笑)。

久野そうそう。そこに行ったのも偶然だしね。きっかけは偶然で始まる。偶然でいろんなものに出会っているんだけど、やってみたらこれが1番はまったんだな、ということですね。

―― なるほど〜! すごくおもしろかったです。ありがとうございます。


そして、久野隆昭さんと矢萩多聞さんが出演されるイベントのご案内です。

ぽかーん、インディア
武田尋善×久野隆昭×矢萩多聞 実験的トークショー(要予約)

インド料理ユニット「マサラワーラー」の武田尋善、
インド壺太鼓ガタム奏者の久野隆昭、
そして、画家・装丁家の矢萩多聞。
不覚にもインドに巻きこまれてしまった三人が
「インドでぽかーんとした話」を喋りまくります。
写真、映像、音楽、大喜利、あるあるネタ、
サイコロトーク、すべらない話、ホロッとする話、
笑いと涙のなんでもありの十番勝負。
今宵はうむを言わさぬインド話で、
こころもからだも、ぽかーんとなっていただきましょう!!

日 時:5月16日(金)19:30~
場 所:旅の本のまど 西荻窪
    東京都杉並区西荻北3-12-10司ビル1F
    中央線「西荻窪駅」北口より徒歩4分。
参加費:1500円(本を購入いただいた方は1000円)
    チャーイ付

TEL&FAX 03-5310-2627

まだお席に若干の空きがあるようです! お近くの方はぜひ。
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