いささか私的すぎる取材後記

第7回 小沢一郎にザック・ジャパンのことを尋ねるということ

2013.07.17更新

 スポーツ新聞の記者になって11年。初対面の人にしばしば言われるフレーズがある。「仕事楽しいですか?」「楽しそうな仕事ですね」。私は自然と以下のように答える。「そうですねー。正直、けっこう楽しいんですよねー」。あるいは日本人的美徳に反しているのかもしれない。「いや、もう最悪ッスよー。代わって下さいよー」などと言って渋い顔でも作った方が会話の流れとしてはスムーズに進行するのかも、とは思う。ただ、素直な感情なのだからしょうがない。初対面でのっけからウソをつくことの方が罪だ。
 じゃあ、何がそんなに楽しいのだ? 今の私なら「小沢一郎にザック・ジャパンのことを尋ねたり出来るから」とでも答えるだろう。

 参院選公示直前。衆院第一議員会館小沢一郎事務所の応接室。私は、インタビューの流れを見計らって「剛腕」に聞く。 

――昨日発表されたポスターで、センセイがサッカーのゴールキーパーの姿をされて・・・。

「あー発表したの! あーそう! 『生活を守る!』というね。いろんなことをゴールキーパーで防ぐということじゃないか?」

――攻めなくて大丈夫なんですか?

「サッカーだってあんた、守るだけじゃダメで、得点しなきゃならんからな。それはそれで(別のキャッチフレーズを)考えてるんじゃないか?」

――以前、イチロー選手の200安打達成の度に祝福コメントを頂戴していました(イチローつながりで)が、センセイ、サッカーの方は・・・。

「だんだん日本強くなったからキライじゃないよ。それでサッカーっていうのは、まあ欧米で盛んだけどね、全員だからな、あれ。みんな動き回ってるでしょ。野球はあれピッチャーとキャッチャーとバッターがメインだけど。だから、サッカーっていうのはチームプレーだからね、とてもいいと思うよ」

――日本サッカーの歴史の中で、この選手はすごかったなあ、みたいなのは。

「そういうのはない。最近じゃないの、日本がやり始めたの」

――先日のコンフェデレーションズ杯では、惨敗を喫し・・・。

「あれはね、ここ2~3年見ててね、素人目でね、なんで日本が弱いかすぐ分かるよ」

――えっ。なんでなんですか!?

「体力がないよ。ようするにね、90分行ったり来たり行ったり来たり走り通さないといけないわけだろ? で、日本はワーッと攻めていくでしょ? で、ボールをボーンと返されるでしょ? で、戻り切れない! あの体力がないよ日本人は」

――でも日本人はマラソンが強いように持久力はあるイメージが・・・。

「だけど、あれは全力疾走だから。チンタラチンタラしているわけにいかないから。もう歴然と分かるよ。日本の選手の戻りは遅いよ。体力のなさよ」

――ではW杯に向けて改善しなくては・・・。

「体力作りだよ。技術よりも。行ったり来たり行ったり来たりね、最初のスピードを維持し続けたらね、絶対勝つよ」

――よく欧米みたいな技術を身につけろという議論があるんですけど、そうでなく・・・。

「体力だよ。彼らより速く走り、彼らより長く全力疾走できれば。そうしたら絶対勝つよ」

――政治の世界でも長きに渡って全力疾走するには・・・。

「あー体力だよ。体力というのは鍛錬しなきゃいけないから。それは忍耐力でもあるよな? 物理的に鍛えていくには忍耐の支えがないと出来ないからな。精神力だ」

――センセイも鍛錬を。

「毎朝散歩しているしなあ。戸別訪問で鍛えたからなあ」

(一同爆笑)


 とまあ、いったいぜんたい、参院選とザック・ジャパンとの間になんのカンケーがあるのだという話ではあるが、面白いからいいのだ。ムロン、記事の大見出しが「小沢氏 ザック・ジャパンをバッサリ『体力ない』」になったことは言うまでもない。

 ときどきブッ倒れそうにもなるけれど(むしろ今)、楽しい仕事である。



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北野新太(きたの・あらた)

1980年、石川県生まれ。学習院大学在学時に雑誌「SWITCH」で編集を学び、2002年に報知新聞社入社。以来、記者として編集局勤務。運動第一部読売巨人軍担当などを経て、文化社会部に在籍。2010年より主催棋戦の女流名人戦を担当。2014年、NHK将棋講座テキスト「第63回NHK杯テレビ将棋トーナメント準々決勝 丸山忠久九段 対 三浦弘行九段『疾駆する馬』」で第26回将棋ペンクラブ大賞観戦記部門大賞受賞。シリーズ「コーヒーと一冊」にて初となる単著『透明の棋士』を著す。

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