いささか私的すぎる取材後記

第37回 スキャンダルを尋ねる

2015.01.13更新


 気付いていない人も多数いると思われるが、野党第1党の党首を決める民主党代表選の投開票が18日に迫っている。立候補した長妻昭元厚労相、細野豪志元幹事長、岡田克也代表代行の3氏へのスポーツ紙合同インタビューが行われたので出席した。

 細野氏への約20分間の取材の終盤、党関係者から「それじゃそろそろ...」と声が掛かったタイミングを狙い、私は「もう一点だけ!」と尋ねた。
 「失礼は百も承知で伺いますが、先生は政治とは別のところで挫折を経験されている。多くの政治家はああいうことがあると潰れていきますが、先生の場合はむしろ飛躍された。あの時のことをどのように糧としてこれまで活動して来られたのでしょうか」
 一晩考えた文言でオブラートに包んだが、私が聞いたのはスキャンダルについてである。
 私なりの経験則から、おそらく8割くらいの確率で「代表選と関係ないですからねえ」「もうずいぶんと昔の話ですから」「それよりも東日本大震災が僕を変えたんです」と肩を透かす回答をするだろうなと予想していた。「いまさらそれを聞く感覚を疑いますね」などと怒る可能性も1割くらいはあるのではと思っていた。

 ところが、細野氏の答えは残りの1割に属するタイプのものだった。2メートルばかりの距離にいる私を真っすぐに見据え、西海岸の青空のような笑顔で言ったのだ。
 「そうですね。あの時は政治家としては限界かなと自分では思いました。思って、自分の中でも(引退を)考えたんですけど、それでもやっぱりやりたいことがいくつかどうしても捨てきれなかったので、そこを自分で考えに考えるそういう時期でした。実は20年前の阪神淡路大震災(でボランティアをしたこと)が政治をやる上での原点なんですけど、そういったことを私はやりたいと思っていたのに、ここで終わっていいのか、ということがすごくありましたね。それがあったから乗り越えられた。わりと挫折のない人生と思われるんですけど、高校受験も大学受験も何回も失敗していて、人生でいろんな失敗をしているんですよね。でも失敗と言うのは、失敗は後悔してももう時は過ぎてしまっているので、これからどうするかということですよね。そうやって生きてきましたから。私の前向きというか楽観的な性格なのかもしれないですね」

 政治家という職業の人々は誰しも作り笑いの天才たちばかりだが、私に向けた細野氏の表情はあながち作ったものとは思えず、そのあたりが彼を再起へと導いた資質なのではないかな、などとインタビュー後に思った。
 趣味「カエルグッズ集め」が代表時代に話題になった岡田氏は、まだ集めているのかと尋ねられると「海外に行った時は買うようにしてます」と笑顔を見せつつ、あらためて「カエルはかわいらしいし、変態する。見てると楽しいじゃないですか」と魅力を語った。相変わらずのスイーツ好きのようで「アイスクリームとか好きで、昨日も議員会館のセブン(・イレブン)で『金のアイス』を買って選対本部に差し入れしました。自分が食べたかったのもあったけど...」

 「ミスター年金」こと長妻氏は、最近気になった話題を問われ「サザンオールスターズの大ファンなので、サザンの紅白出場ですね」と即答。「大学時代はバンドを組んでましてね、ボーカルで。『ラチエン通りのシスター』とかをよく歌ってました。今でもカラオケに行くと歌います」。選挙区、いや選曲が最高すぎると思った。
 「♪カ~レシ~にな~りた~きゃど~ゆ~のっ」
 ミスター年金が情感たっぷりに歌い上げるステージを想像するだけで楽しい。

 スキャンダルについて尋ねるのは大変だが、誰も知らなかったことを時として聞ける。インタビューは難しく、また楽しいものである。


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北野新太(きたの・あらた)

1980年、石川県生まれ。学習院大学在学時に雑誌「SWITCH」で編集を学び、2002年に報知新聞社入社。以来、記者として編集局勤務。運動第一部読売巨人軍担当などを経て、文化社会部に在籍。2010年より主催棋戦の女流名人戦を担当。2014年、NHK将棋講座テキスト「第63回NHK杯テレビ将棋トーナメント準々決勝 丸山忠久九段 対 三浦弘行九段『疾駆する馬』」で第26回将棋ペンクラブ大賞観戦記部門大賞受賞。シリーズ「コーヒーと一冊」にて初となる単著『透明の棋士』を著す。

透明の棋士

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