石井光太&寺子屋ミシマ社

2009年12月12日、第一回『石井光太&寺子屋ミシマ社プロジェクト』がスタートしました。
その模様を、参加された方々のレポートで、今週と来週二回にわけてお送りします。

この連載は、『戦争文化』をテーマとするノンフィクションが、今までなかった試みによってできあがっていくまでのノンフィクション・レポートです。

第2回 「戦争文化」プロジェクト、スタート

2010.01.19更新

デザイナー、O.Mさんによる、
『寺子屋ミシマ社 実践編』あ、う、あ、う、う、う、レポート


はじめに

『寺子屋ミシマ社 実践編(2009年12月12日(日)13時30分~)』ワークショップを体験してから、はや1週間が経とうとしています。しかし、今だに私の中では、この体験が消化できてないくらい、濃くてヘロヘロになった約半日間でした。未消化なので、半熟卵のような内容になっちゃいますが、ひとまずレポートさせていただきます。

ちなみに私は現在40代の専業主婦で、5年前まではグラフィックデザイナーを生業とし、広告を作っていました。ブックデザインは過去1回だけ経験しましたが、本の企画・取材・編集等は、まったくの未経験です。新しい事を始めたくて、挑戦してみました。

この『寺子屋ミシマ社 実践編』ワークショップは、まず事前に寺子屋参加者が、企画を3つ以上考えることから始まります。その企画とは、『絶対貧困』、『物乞う仏陀』などの著作で注目されるノンフィクション作家・石井光太さんと作っていく本のテーマです。

その企画を当日持ち寄り、編集・営業・仕掛け屋などの出版活動を、まるごと仮体験するワークショップが行われます。そしてこのワークショップ終了後、寺子屋参加者の中から「本格参加」希望者を募り、石井光太さん・ミシマ社の皆さんと共に「実際に」企画・取材・営業・仕掛けをして、石井光太さんの本を作って売っていこう、という出版イベントです。  

私は、なんとか企画案を4個、前日夜中に絞り出しました。いやはや、いつもながら企画案って難しいです。そして、この年になっても、思いつく企画のショボさ加減に、クラクラしました。ううう。


1.ミシマ社は、一戸建て?

ミシマ社に到着すると、庭先(?)で準備をされているミシマ社の方々が笑顔で迎えてくださいました。ミシマ社の建物は、昭和の一戸建ての家(のよう)で、ちょっと驚きました。以前私が訪れた「昭和のくらし博物館」のようだな~、と思いました。

会場は畳敷きの2間(1階)で、そこに各々座り込んで、ワークショップ開始を待ちました。参加者は約20名強で、20代半ばから30代前半の方が多かったと思います。私は大きな体が皆さんの邪魔にならないよう、なるべく隅っこに座って、始まりを待ちました。


2.穏やかに、でも迅速に

最初にミシマ社の代表・三島さん、作家の石井さんの挨拶がありました。

作成予定の本は、単価は1,500円くらいで、300ページ(原稿用紙400字詰め・500枚くらいのボリューム)、最低売上ラインは一万部(この数字をクリアするのは大変だそうです)、10年間売り続けられる内容で、テーマは重層的に内容が広げられるもの、などがキーポイントとの説明を受けました。

それから約三人でチームを組み、チームの企画案ベスト3を発表することになりました。チームで話し合う時間は、ほぼ5~7分くらいだったと思います。短い時間設定でしたので、とにかく手短に自分の企画を説明し、チーム全員で意見交換をし、無理矢理ベスト3を決めていきました。
まず石井さんから企画案の発表があり、次に参加者6チームの発表が代表者1名によって行われました。合計19個出た案から類似したものを組み合わせて下記の5案にまとめ、決戦投票をしました。投票多数でテーマは「戦争文化」に決まりました。


【決戦投票された5案】

●日本の貧困(例えば、いわゆるホームレスなどの人々を取材)
●途上国の歩き方(「地球の歩き方」的ガイドブック)
●婚活ジャパニーズドリーム(異国からの花嫁のその後)
●スピンドクター(情報操作の専門家)
●戦争文化(戦争より始まった、あるいは進んだもの。例えば、お好み焼き、兵器製造技術、インフラ整備など)


3.できるだけ沢山、思いつくままに

チーム替えをして、今度はこの本の章立てを「できるだけ数多く出す」という作業に取りかかりました。今度も同じ様に短時間で話し合い、発表します。

出てきたものは、インフラ、映画、アート、ファッション、家庭生活、料理、医術・技術の進歩、不発弾、女性の野球チーム、裁判、拷問、歌、国際結婚、平和ボケ、、、などなど、ざくざく発表されました。やはり、仕事や年齢、環境の違う多くの頭脳が集まると、出てくるものも多種多様で、いいな~と思いました。それに、こんなに全員のやる気がみなぎるブレーンストーミングは初めてなので、嬉しかったです。ああ、人との出会いっておもしろいなあ~、できる人ってたくさんいらっしゃるんだな~、と思いました。


(その後、営業の時間、仕掛け屋の時間のPOP作りを経て)


最後に、三島さんのワークショップについてのまとめや、石井先生への質疑応答がありました。そして「本格参加」希望を問われたので、私も参加することにしました。編集の仕事に興味があったことはもちろんですが、参加者の皆さんのやる気や発想に、もっと刺激を受けたいな~、と思ったのが一番の理由です。

その後、軽く打ち上げもありました。いろんな方のお話はおもしろかったですが、初めての方と話すことは、結構緊張しました。「ああそういえば私は、人付き合い苦手だったな~」と思い出しました。さらに、場所を移動しての飲み会もあったようですが、老兵はクタクタになったので、帰りました。帰り道を間違えて、自由が丘駅を通り過ぎてしまいました。思ったより、くたびれていたようです。ははは、お恥ずかしい。

あれから1週間経ち、疲れは残っていますが、やはり勇気を出して行ってよかったな~、と思っています。チームでのブレーンストーミング・発表の時間が短く設定されているのは、大変効果的だな、と思いました。長いと迷ってしまうし、かえって意見がまとまらないものだ、との考えからなのでしょう。

それから私のワークショップの感想は、自分はまだまだ修行がたりんな~と認識できて為になったことと、おもしろい人といっしょに仕事できることは、やはり素晴らしい!!!、と思ったことです。体力的にはきつかった(主に、畳の上に長時間座っているのがしんどかったです。腰痛が持病ですので)ですが、参加できてよかったです。


名古屋から来たS.Aさんによる、寺子屋ミシマ社・実践編レポート 

わたしは胸が高鳴っていた。何か新しいことを始めるのにつきものの感覚。同時に少々の不安も入り混じっていた。どんな人が集まってくるのだろう?企画案ってこんな感じでいいのか?しかし、何よりも未知の世界への楽しみで仕方なくこの日が来るのを待っていた。

ことは今回のプロジェクトの著者となる石井光太さんのブログを久しぶりにチェックしたことから始まる。そこには、ミシマ社×石井光太氏のコラボレーション企画立ち上げのいきさつが書かれていた。

ふむふむ、ミシマ社・・・?
本作りの体験・・・?
新しいノンフィクションのカタチ・・・?

瞬間的に「やりたい!」と思った。
出版や著述関係の仕事を自分なりに模索していたのもあったが、とにかくやってみたいと思った。
そのとき、この企画が公表されてからだいぶ時間が経っていたが、すぐにミシマ社さんにメールを送った。その後、三島社長から返信があり快く受け付けてくださったのだった。

こうして、わたしは現在自宅のある名古屋から東京自由が丘へと、ワクワクした気持ちと少々の緊張感とともに上京をしたのだった。

「自由が丘のほがらかな出版社」―ミシマ社のHPにこう謳っている。
実際にミシマ社に到着したときに、本当にほがらかだぁ~と思った。住宅地の中の一軒家、
にこにこと迎え入れてくれるスタッフの方々、部屋の中に広がる一面の畳・・・

今回、応募したメンバー約20名も揃ってきた。同年代くらいかな、と見受けられる人が多い。
そして、石井さん、三島さんが登場・・・!
ふたりともラフな雰囲気を醸し出している。
だが、彼らが話し始めると不思議とエネルギーを感じる。彼らにものすごい好奇心がみなぎっているのをわたしは見逃さなかった・・・
こうして寺子屋・実践編が始まった。

1時間目、編集の時間。
メンバーは3人ずつのグループに分かれ、事前に考えてきた本の企画案を話し合い、まずグループで案を決める。わたしのグループでは、いくつか同じようなテーマも出てきたが、全く異なるものもあった。ひとりの脳内で考えるだけでは限界がある。こうして話してみると、そんな考え方もあったのか!と感心させられたり、他のひとの脳みそとうまく混ざり合って、思ってもみなかったアイディアが生まれたりと面白い。
そして、各グループで決まった企画案を発表し、最後にひとつを選ぶ。色々な企画が出てきたが、やはり石井さんらしく、全体的に「貧しい」匂いのするテーマが多かったのだった・・・

石井&三島両氏は、「売れる本」「10年たっても読まれる本」という観点からテーマを選んで欲しいと言った。
多くの人に長い間読まれる本でなければ意味がない。そういう本をつくりたい。
ふたりはもちろんプロなのだが、もともと持っている熱意というかエネルギーが強く伝わってきた。

結果的に多数決で「戦争文化」というテーマに決定した。
戦争が起こることによって生み出される文化・・・。
ストレートに戦争を取り扱うのではなく、少々、違った角度からアプローチする戦争モノ。うむ、面白そうだ。

それから、今度は「戦争文化」のコンテンツとなるテーマの案を考えてどんどん出していった。想像してみると戦争っていろんなものにつながっていっている。

本作りの土台であるテーマがこうして決まった・・・!
(ほんとに決まったんだ~。これで本が書かれていくんだ~)
あまり実感がなかったが、心の底はドキドキしていた。

(全体を通して)

あっという間の5時間だった。
最初はあくまで寺子屋の生徒の立場であったわたしであったが、終わる頃には、すっかりこれから始まる本当の本作りの一員として、ほくほくした気持ちでいた。
また、最初は全くの見ず知らずの参加者たちであったが、いっしょにものを考え、ものをつくっていく中で、終わる頃には何だか昔から知っていたかのような感覚になった。

 

本を愛する出版関係者、U.Tさんのレポート

(すべての時間を通して)

書籍制作に対して興味を持つ、情熱を持った方々と真剣に本作りのことを考える機会を持てるということは、とても得難い時間であった。さらに今回は長期間に渡って、自分たちで企画をした「戦争文化」についての本を共に作っていく事になる。営業、仕掛については、今回はプレ体験、手ほどきを受けたまでに過ぎない。今後、実際に書籍出版となった際には、自分たちで営業をし、POPなども作ることになる。せっかくの機会を与えていただいたのだから、一生懸命、充実した時間を過ごして、大いに吸収勉強をしていきたいと思う。

先日、三島社長による「出版100年構想」と題したブログのメッセージを読み、深く感動をした。書籍が大好きで、少なくとも書籍や雑誌を作る場に身をおくことができていることに幸せを感じていながらも、私も「困ったね、困ったね。どうしよう」といっている一人。だが、私もこの寺子屋で学んだことを、糧に何かできることがあるのならば、微力ながらも行動をしたいと思う。寺子屋に集まる方たちは、書籍に対して情熱をもった人たちばかり。参加者同士のネットワークが広がれば、新たな事も出来るに違いない。


さらなる参加者を募集します!

石井光太&寺子屋ミシマ社、『戦争文化』プロジェクトでは、さらなる参加者を募集します!
次回の会合は、1月31日(日)午後、ミシマ社にて行う予定です。
いまからでもこのプロジェクトに参加してみたい、「本気度の高い方」、ぜひお待ちしております。
ご希望の方は、1月28日(木)までに、
hatena@mishimasha.com
まで「戦争文化プロジェクト参加希望」の件名でお名前とご連絡先をお知らせください。
おってご返信いたします。

今回の第一回会合と、継続しての募集について、石井光太さんもご自身のブログで書かれています。ご参考ください。
http://kotaism.livedoor.biz/archives/2010-01.html#20100113

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石井光太(いしい・こうた)

プロジェクト主催者

1977年生まれ。東京都出身。日本大学芸術学部文藝学科卒業。
海外ルポを初めとして、国内外の文化、歴史、医療についての文章を多数執筆。
また、本や映画などについてのコラムや批評も手掛ける。執筆以外では、TVドキュメンタリの製作、写真活動、漫画やラジオ番組のシナリオなども手掛けている。

主な作品に、
『神の棄てた裸体−イスラームの夜を歩く』(新潮社)
『物乞う仏陀』(文藝春秋)
『絶対貧困−世界最貧民の目線』(光文社)
その他、共著に『ベストエッセー2007 老いたるいたち』(光村図書)などがある。
ペンネームでの著書は多数。

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