じゃり道本屋さん日記

第13回 本屋さんの大きさと小ささ

2015.10.02更新

 ミシマ社の本屋さんには、ありがたい事に開店以来いろいろな雑誌に取材をしていただいています。取材を受ける中で、いつも「え...」と答えに詰まってしまう質問があります。聞き手の方はすごく自然に聞かれているのでしょう。「え...」と凍りついている僕に対して「え...?」という顔をされます。

 それは「お店の広さは何坪ですか?」という質問です。


 見渡したところ、ミシマ社の本屋さんは4畳半と6畳の和室と縁側が少し。あと中途半端な板張りの不思議なスペース。だいたい12畳くらいなので、計算すれば6坪、とすぐに答えられそうなものです。が、なんとなくこの「坪」という単位がなじまない。世の中には3坪や4坪の本屋さんもあれば、2000坪を超えるメガストアも存在します。2000坪というとミシマ社の本屋さんの666倍、畳4000枚分の広さということです。「ということです」と言われても全然ピンと来ません。

 中学生の頃、剣道部に所属していた僕は、練習のたびに柔道用に敷きっぱなしにしていた重たい畳を一枚一枚はがしてずるずると運び、格技場の隅に積み上げて板張りの練習場所を確保するという、途方もなく面倒くさい作業をしていました。そのときに運んだ畳はおそらく20枚ほど。20枚でその日の部活動が嫌になり、帰りたくなってしまう。4000枚というとじつに200日分の練習が一気に嫌になってしまいます。中学三年間のうちの200日とは途方もない数字です。2000坪とはそういう数字です。


 2000坪もある本屋さんにはなんでもあるような気がします。ずらりと並んだ本棚をわくわくしながらただ眺めたり、どこまでも並ぶ本の背表紙の中から目に止まったものを適当に引っ張り出したり。そんな中でも本屋さんのいろんな工夫や仕掛けがあって飽きることがありません。

 じゃあ4畳半と6畳の和室にはなにがあるのでしょう。ミシマ社の本は全部あります。あとはお願いして卸してもらっている出版社の本。その他いろいろ。1周見て回っても数十分で済みます。そして3周もしたら飽きちゃうでしょう。この狭い部屋を何周も何周もぐるぐる回っている人を僕はこれまでみたことがないので、何周で飽きちゃうのか、正確なところはわかりませんが。


 ひと通り眺めたら、あとはソファでうとうと昼寝してみたり、コタツで気になった本をぱらぱらめくってみたり熟読してみたり、おしゃべりしてみたり。だから、自分のカバンから読みかけの本を取り出して読み出す人も少なくありません。おはなししている中でもここにはない本の話がしょっちゅう出てきます。「この人のあの本も面白かったよね。えーっと、タイトルなんだっけ...?」という会話が頻繁に交わされています。
 ここにはない、置ききれなかったり、入手できないたくさんの本たち。それがあればいいのに、とは思いません。むしろ、目の前にないのに話題に出てきたり思い出したりする本の方がその場やその人にとって大事な本なんじゃないでしょうか。狭いからこそ、気づかなかった記憶にたどりつけるかもしれません。ないことのなかにはいろいろなものがあります。○坪、という単位でくくってしまうことに違和感があるのはそのせいかもしれません。「6坪の店」というよりは「なんかいろいろある部屋」です。

 10月、本屋さんではふたつのイベントを企画しています。どちらのゲストの本も、失礼ながら全部は本屋さんにありません。すこしはあります。でもその場になくても手に取るように記憶に残っている本の話ができたら、それはとてもすごいことなんじゃないでしょうか。思いもかけない本との出会いが待っているかもしれません。

『本屋さんでお店番 細川貂々さん』

10月3日(土)13時ごろから

ミシマガ連載「関西は電車に乗って」や『ツレがうつになりまして。』でおなじみ、漫画家・イラストレーターの細川貂々さんにお店番をしていただきます。
ツレさんと息子・ちーとくんも一緒かも?


『社会を動かす20代!』
『若者が社会を動かすために』(ベストセラーズ)を発刊した税所篤快さん。1989年生まれ、ロンドン大学院に通いながらソマリランドで起業するなど精力的に活動されています。そんな税所さんが同世代で活躍する方々を紹介しつつ、口先だけでなく実際に動く若者についてお話しします。ゲストも登場予定!

日 時:10月30日(金)18時半開場 19時開演 
    ※日時が変更になりました!
会 場:ミシマ社の本屋さん
参加料:一般1000円/学生500円

【お申し込み方法】
event@mishimasha.comまで
件名を「1030動く!」とし、「お名前」「お電話番号」「学生/一般」を明記のうえ、お送りくださいませ。



10月の開店日(毎週金曜日)
2日、3日、9日、16日、23日、30日、31日
※今月の土曜営業日は3日、31日です。

営業時間を変更しました!
OPEN 13:00 - CLOSE 19:00



ミシマ社の本屋さん
京都市左京区川端通丸太町下る下堤町90-1
営業:毎週金曜日、最終土曜日の13:00〜19:00
電話:075-746-3438
京阪・神宮丸太町駅2番出口から南へ徒歩1分
大きな地図はこちら





お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

ミシマ社の本屋さん

出版社・ミシマ社が運営する小さな本屋「ミシマ社の本屋さん」。2014年3月まで京都府城陽市で営業しておりましたが、京都市内にて2014年10月3日(金)より営業再開。毎週金曜日、最終土曜日の13:00~19:00の開店です。

京都市左京区川端丸太町下る90-1
京阪神宮丸太町駅から徒歩1分

バックナンバー