じゃり道本屋さん日記

第25回 天草での4日間

2016.11.10更新

 福岡発天草行きの飛行機は想像以上にかわいい機体だった。座席番号は13のD。真ん中らへんかなと思ったら最後尾の席だった。どしんと滑走路に到着。空中よりも滑走路を走っているときのほうがグラグラ揺れる。

 11月3日から6日の4日間、熊本・天草のアマクサローネに出店させていただきました。東京や京都でもブックフェアや出張販売は多くあるものの、天草にはどこにもない静かであたたかな空気が流れていました。

 出迎えてくださったのは今回の天草行きを提案してくださったNさん。Nさんとはこの数ヶ月50通を超えるメールをやり取りしている。初めて会った気がしない。空港からさっそく向かった会場はシャッターが目立つ商店街の一角のギャラリー。コーヒー、パン、アクセサリーや布。それぞれの店主が思い思いにちいさなお店を開いている。奥の和室に、前夜大量に送りつけた本や飾りがすでにスタンバイされていた。お客さん、実行委員会のメンバーの方、撮影係の方、お隣の出店者の方。まだ誰が誰かわからぬままに次々と紹介していただき、挨拶する。みんな笑顔。ふと見ると部屋の隅に手作りの顔ハメが用意されている。

 お昼を過ぎ、だんだんお客さんがふえてきた。カレーの匂いが漂う。お腹が鳴る。ぐう。
 まだ1歳にもならないであろう赤ちゃんを抱いた若いご夫婦。絵本を手に取り、二人で眺める。そして、腕の中の子どもに見せる。まだわからないかな?赤ちゃんが少し笑った。これはどう?と別の絵本を見せる。ばたばたと手を振る赤ちゃん。じゃこれは?...うーん無反応。こっちがいいんだねー、とお父さん。笑う赤ちゃん。なんどもなんども本を見せ、こっちかな?こっちかな?と本を選ぶ。言葉にならない会話。その真ん中を本がいったりきたりする。三人で選んだだいじな一冊が決まった。

 なんども聞かれた質問がある。「ミシマ社の本がこうして並んでいるのをはじめて見ました。どこで買えるんですか?」聞けば天草には本屋さんが一軒しかないという。全国に展開するビデオレンタルもできる大型店。夜、一人歩いていると暗い街の空にその本屋さんの大きな看板がピカピカと浮かび上がっていた。夜空に浮かび上がる大きな看板と、あたたかな太陽の光が差し込む和室。どちらも同じ、本を売る場所。

 翌朝はNさんによる天草ガイドツアー。向かいに見える島原半島と、天草海峡、そして有明海につながる島原湾をながめる。海流が流れ、風が吹く。西洋から渡ってきた活版印刷機はこの地に上陸したという。出版が始まった土地。

 2日目もつぎつぎと本が旅立っていく。つぎつぎ旅立っていくのだが「飛ぶように売れる」のとは違う。一冊一冊をじっくり眺め、ひっくり返し、元の場所にもどし、また別のを手にとる。そうして旅立っていく。
 じっくりと本を選ぶお客さんを眺めながら、ときどき本のお話やミシマ社の紹介をさせてもらいながら、日向でぼんやりしていると2日間のお店番はあっという間におわった。

 お店番をNさんと助っ人Yさんにお任せして天草を後にする。「九州大学の先生が来てくださいました!」「映画館の館長さんが本を買ってくださいました!」「領収書はどうしましょう?」次々と実況が届く。後片付けも終わり、最後に届いたメールはこう結ばれていた。
「内田さんや平川さんの話でも、こんなことを言っている大人がいるじゃないか、ならまだ大丈夫と思う!と、共感しあったり、森田さんや、三島さん、平川さんの本についての説明にも一言一言共感してもらえて書店員さんてステキな仕事だな~~~って感動しました。
帰り際、本棚に並んだ「へろへろ」の背表紙に目をとめられ「私も持ってます。読みました。」と。●●さんと本を間に微笑むことができるなんて信じられない瞬間でした。」


11月の開店日(毎週金曜日)
4日、11日、18日、25日、26日
※今月の土曜営業日は26日です。
OPEN 13:00 - CLOSE 19:00



ミシマ社の本屋さん
京都市左京区川端通丸太町下る下堤町90-1
営業:毎週金曜日、月に一回どこかの土曜日
   13:00〜19:00
電話:075-746-3438
京阪・神宮丸太町駅2番出口から南へ徒歩1分
大きな地図はこちら




お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

ミシマ社の本屋さん

出版社・ミシマ社が運営する小さな本屋「ミシマ社の本屋さん」。2014年3月まで京都府城陽市で営業しておりましたが、京都市内にて2014年10月3日(金)より営業再開。毎週金曜日、最終土曜日の13:00~19:00の開店です。

京都市左京区川端丸太町下る90-1
京阪神宮丸太町駅から徒歩1分

バックナンバー