自由が丘の贈り物

こんにちは。THE自由が丘BOOK(仮)の飲食担当「チーム薫子」です。
わたしたちは今回、自由が丘にある老舗の飲食店を取材しました。
華やかなイメージのつよい自由が丘は、新規オープンするお店も多い街。
そんな中でも、昔から変わらぬおいしさを提供し、地元の人に愛されているふたつのお店を紹介します。

(文・写真:奥村薫子)

第2回 老舗の味 自由が丘のおいしいお店たち by チーム薫子

2012.12.28更新

長寿庵(蕎麦屋)

一軒目は、自由が丘駅正面口右手に続くひかり街を抜けた先、自由通り沿いにあるお蕎麦屋、「長寿庵」さん。ここは、ミシマ社もよくお昼ごはんに出前を注文させていただいているお店です。今回は、女将の太田久江さんにお話を伺いました。

―― お店の創業はいつですか?

太田さん昭和40年の4月です。「実成会」という蕎麦屋の会派からののれん分けで、「長寿庵」という屋号を名乗り、ここにお店をかまえて、2012年で47年目になります。

―― 一日のお仕事の流れを教えてください。

太田さん朝8時に起きて、あんちゃん(息子さん)がうどんと蕎麦をつくります。わたしがそれをゆでたり、ネギを刻んだり、仕込みをして11時半に開店。日中は出前にでたり、注文をとって作ったり、一日中動きまわっていますね。ごはんも立ったまま食べるので、座ることがほとんどありません。閉店後、明日のおつゆを仕込んで、23時頃にお仕事を終えています。

―― 仕込みなど、営業時間外のお仕事も多いんですね。お店の人気メニューは何ですか?

太田さんなんでもおいしいと思うけど、カレー南蛮(900円)が人気ですね。

第1回  老舗の味 自由が丘のおいしいお店たち by チーム薫子

うちのカレールーは、週に1度、5種類のルーを混ぜて、仕込んでいます。

―― 5種類! 手が込んでいますね。

太田さんほかのお店よりちょっとでも「おいしい」と思ってもらえたらいいな、と思って。

昔に比べて今は、自由が丘にもおしゃれな飲食店が増えて、お蕎麦やうどんを食べる機会が減ってきているなと思いますからね。ルーだけじゃなく、揚げ玉に使う天ぷら粉とか、食材のひとつひとつにこだわって、これからも努力しないといけないと思っています。

―― こんなにおいしいお蕎麦、食べないと損ですね。

太田さん「おいしい」と言ってもらえることが、なによりも仕事の張り合いになります。

―― ありがとうございました。今日のお昼に、さっそくカレー南蛮を注文してみます!

自由が丘 山屋(酒屋)

続いて、太田さんからの紹介で、長寿庵さんのおとなりにある酒屋さん「自由が丘 山屋」へ。
こちらも、創業約70年の老舗の酒屋さんです。店長の田島広康さんを取材しました。

―― お店を入ってすぐのところにある、メッセージ入りの酒壺が気になりました。

第1回  老舗の味 自由が丘のおいしいお店たち by チーム薫子

田島さんお酒を贈り物にされるお客さんのために考えました。お客さんの好きなメッセージを手書きで壺に入れられるのは、うちのお店ならではのサービスです。

―― この「手書き感」が良いですね。店内のあちこちに飾られているポップも、手書きのものが多くて、目を引きます。

田島さんポップは20年前くらいから、お客さんによりお酒の魅力を知ってもらいたいと思ってつくりはじめました。
お酒ひとつひとつの味や名産地など、魅力をポップで紹介しています。

―― 店内のディスプレイのほんとうに細部にまで、工夫を感じますね。

田島さん今、特に若い人たちが、日本酒やワインなどのお酒をあまり飲まなくなってきているように思います。

第1回  老舗の味 自由が丘のおいしいお店たち by チーム薫子

「お酒は体に悪い」とか「体を冷やす」といった、誤ったイメージを抱かれがちなことが、理由のひとつだと思っていて。

お酒は合わせる料理や飲み方によって、体への効果も、美味しさも変わってきます。
そういったことを知って、お客さんにお酒をより楽しんでもらえるようにポップをつくったり、自分のことばで説明して、お酒の魅力をじかに伝えていきたいです。

ただものを売るだけが商売ではない。こういう工夫のひとつひとつが、これからはますます大事になってくると思っています。

*   *   *

 今回お話を聴いた2軒のお店には、共通して「昔から変わらない」伝統を保ちつつも、お店としてよりよくあるため、「変わりゆく」ことにも肯定的な、商売に対するプロの意識を感じました。
それがきっと、ここ自由が丘で変わらずに愛される魅力につながっているのだと思います。
自由が丘のおいしいお店めぐり、次回もお楽しみに。


長寿庵
東京都目黒区自由が丘1丁目15-10

自由が丘山屋
東京都目黒区自由が丘1丁目15-10

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ミシマ社 編(みしましゃ)

ミシマ社は、「原点回帰の出版社」として2006年10月に創業。現在メンバーは約10名。全員全チーム(編集・営業・仕掛け屋)の仕事をするというスタイルで、東京・自由が丘、京都府京都市の二拠点で、「一冊入魂」の出版活動を展開中。取次店などを介さない「直取引」という営業スタイルで「一冊」を全国の書店に卸している。

本企画は「大好きな地元自由が丘のことをもっともっと知りたいなぁ。そして、この空気感を多くの方々と共有したいなぁ」という三島の思いから発し、ミシマ社編として2013年8月に書籍化。その後も、本に入りきらなかったお店やお話を本コーナーで連載中です!

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