自由が丘の贈り物

 ミシマ社自由が丘オフィスのすぐそばに、「シェルガーデン」というスーパーマーケットがあります。社員もときどきお弁当や飲み物を買いにいくのですが、なんだか少し普通のスーパーと違うのです。輸入食品がたくさんあること、それから駐車場にスーパーカーがよくとまっていること。そして、一番びっくりしたのは、レジでお会計をするときに、どんなにたくさん買い物をしても、袋詰めまで店員さんがしてくれること。実はこのスーパー、かなり昔からここにあるそうなのです。創業後すぐから勤められている方が、今は店長として働かれているらしいといううわさを聞きつけた編集部。現店長の岸田献児さんに、シェルガーデンの歴史を教えてもらいました。

第13回 自由が丘発! シェルガーデン 岸田献児さん

2014.05.04更新

ヨットも売るスーパーマーケット

――ガーデンさんはどういった経緯で創業されたのですか?

 1956年、先代が、現在の場所でシェル石油のガソリンスタンドを始めました。先代の息子さん2人は海外で勉強してらっしゃったので、輸入商品を扱うお店を作ったらどうだということで、10年後の1966年、裏の空き地に今のお店をつくられたんです。
建物も、イギリスの建築家に設計を依頼したので、非常に頑丈に造ってあるんですよ。ですから、全部更地にしないと全体的な改装ができないので、部分的な改装だけで今日に至るということを聞いたことがあります。
 僕は創業して10年くらい経ってから入ったのですが、輸入のアメリカ車やヨーロッパ車など、スーパーカーで来られるすごくハイグレードなお客様が多くて。よくお子様がカメラを片手に写真を撮りにきていました。

――その当時のお店の品ぞろえや、フェアの様子はどうでしたか?

 当時は、バブリーな時代のちょっと手前くらいですよね。なので、もともとはお肉とワインをメインにした売り場だったんです。お肉もガーデンビーフっていうお客様に好評を得たお肉があって、ワインの品揃えもかなり多くて。生鮮は青果と精肉だけで、お魚屋さんはなかったんです。今は輸入の青果ってたくさん売られていますが、当時はそんなになかったので、そういうものを市場で集めて売っていました。
 あと、雑貨もフェアでよく売っていました。車のジャガーの販売とか、ウィンドサーフィンのボードや一人乗りのヨットなんかも売ってた。あと、ブランド品のバックをレジ前に無造作に置いたり(笑)。
 こういうせまい売り場でも、その当時のスーパーマーケットでは考えられないようなかなりおもしろい、奇抜なことをやっていました。そういうニーズを持ってらっしゃるお客様が、当時は多かったですからね。


ポロシャツにボウタイで仕事をしてました

――岸田さんはなぜガーデンに入られたのですか?

 別に理由はなかったですね(笑)。先輩がたまたまここにいて、たまたまここに来たという感じです。あの当時海が好きで、朝、湘南に行って、帰ってきて仕事に行ったりしていました。で、サーフボードが壊れたりすると、休憩時間に裏で修理をしてたんですよ。 そしたらその当時の支配人がすごい顔ですっ飛んできて、「この店でボードを修理してくれるって聞いたんですけど」って若者が来たって。「お前なんかやったのかよ~!」なんて、「いやいや、してないです。自分のしかやってないです。」って。そしたら、隣にやっぱりサーフショップがあって、勘違いだったんですけどね(笑)。

――レジで袋詰めまでしてもらえることにびっくりしたんですけど、これは全店でされているんですか?

 自由が丘店と、池袋店だけですね。ポリシーみたいなものはないです。ずっと継続してやっていることなので、そのことが当たり前のことになっているというか、サービスの一環です。ただ、詰め方の問題だとか、そこでのクレームもやっぱり多いんです。こちらとしても最善を尽くすしかないんですけど。当時は、全てのお客様が紙袋だったんです。今は、ビニールの袋がメインになっていますが、今でもおっしゃってもらえればちゃんと紙袋でお渡しします。逆にお客様にはビニールにしてくださいっておっしゃる方もいらっしゃいますしね。

 この日は浅草の和菓子屋、梅園さんが出張販売にいらしてました。

――創業当時はどんな制服だったのですか?

 普通に蝶ネクタイとシャツで、意外とラフな感じでやってました。支配人なんかも結構ラフな格好でしたよね。僕たちはネクタイも自分たちで選んで良かったんです。だから好きなネクタイをしてもいいし、好きなYシャツを着てもいい、ただしサロンだけは着るっていう形で。おしゃれに着こなしている人が多くて、あの当時は支配人も結構お洒落だったんです。ぼくもよく、ポロシャツにボウタイをして仕事してましたね。それが一番動きやすかったんです。


街並みは変わっても道は変わらない

――他の街と比べてみて、自由が丘ってどういう印象をお持ちですか?

 昔は、自由が丘って、銀行とか金融関係の方がすごく多くて。今でもあるのか、目立たなくなっているだけなのかわからないですけど。やっぱりそういう層の方が、いらっしゃっていました。
 でも今は、観光客の方というか、マップを見て来られる方がすごく多くなってきているので、お店自体も様変わりしているのは確かですね。街自体はすごくきれいになって楽しくなってるんですけど、昔の自由が丘からはちょっと変わったなと。ただそれは、世代が変わっていって、そういう若い人のニーズに、うまく自由が丘の街が洗練されていってるんじゃないでしょうか。
 僕は自由が丘は地元ではないんだけど、自由が丘で飲んだり、遊んだりしていたので、やっぱりホッとします。街並みは変わっても道は変わってないわけですから。住宅街に入ってしまえば敷地がちょっと狭くなってたりするくらいで、昔とそんなには変わっていません。だからやっぱり落ち着きますね。

ザ・ガーデン 自由が丘店
東京都目黒区自由が丘2-23-1
TEL: 03-3718-6481
営業時間:AM9:30~PM11:00

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ミシマ社 編(みしましゃ)

ミシマ社は、「原点回帰の出版社」として2006年10月に創業。現在メンバーは約10名。全員全チーム(編集・営業・仕掛け屋)の仕事をするというスタイルで、東京・自由が丘、京都府京都市の二拠点で、「一冊入魂」の出版活動を展開中。取次店などを介さない「直取引」という営業スタイルで「一冊」を全国の書店に卸している。

本企画は「大好きな地元自由が丘のことをもっともっと知りたいなぁ。そして、この空気感を多くの方々と共有したいなぁ」という三島の思いから発し、ミシマ社編として2013年8月に書籍化。その後も、本に入りきらなかったお店やお話を本コーナーで連載中です!

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