自由が丘の贈り物

『自由が丘の贈り物』で、よしもとばななさんのエッセイに登場する「とんかつミカド」さん。
「この人生であと何回あのカツカレーが食べられるかしら? と思うと切なくなるし、あんなすてきなものがあるなんて、この世は捨てたものじゃない、まだまだ生きていこう! と私は単純に思うのです。」
と言わしめるそのカツカレーは、本当に、感動するほどおいしくて、ミシマ社メンバーが「あ~ミカドさんのカツカレーが食べたいっ!」と悲鳴をあげることもしばしば。
 お店もとってもアットホームで、まるで実家でごはんを食べているみたいなんです。

 今回は、二代目店主の澤田伸二さんに、ミカド創業のお話をうかがいました。

第14回 自由が丘発! とんかつミカドさん

2014.06.15更新

 むかしむかし、田園調布3丁目にパン製造、とんかつ、コロッケ、惣菜店として、先代澤田栄一が営業を開始し、現在2代目長男伸二が受け継ぎ、今日に至ります。
 この間、太平洋戦争や、物資のない社会情勢の不安定のなか、一時は商売が途切れがちになりながらも、あきらめることなく、忍耐、努力、笑顔、まさにこの精神を継承しながら皆様のお力で営業を続けてくることができました。

(昭和35年頃のミカド 田園調布3丁目)

 緑が多く、環境のいい田園調布、鵜の木には、戦後、多くの進駐軍が庭付きの家に住んでいました。そこに、コックマンとボイラーマンが二人一組になって、準公務員扱いで派遣され、料理人の親父はそこで腕を振るって、米軍人家族の食事の世話をしていました。

 その時わが家は当時5歳の私をあたまに年子の男ばかり3兄弟で、たいへん! 今、親父の話を思い出してみると、料理番はとても楽しかったそうです。片言の英語を話せるようになったり、大きな米車のシボレーを運転しながら買い物ができたとか。夕方、仕事を終わらせて、最後に台所のゴミを整理するその時、昼間焼いて焦がした出来そこないのクッキーやケーキ(わざと焦がしたと白状していました!)、フレッシュジュースをつくるのに、手加減してしぼったオレンジなどを、いったんゴミ箱に捨てたふりをして、別の袋に入れかえて家に持ち帰り、腹をへらしたわたしらひよこたちに、平等に分け与えてくれたそうです。親父は、そんな時代も乗り越えて、家族をまもってくれました。

 それから今日まで、昭和のとんかつ、コロッケ、自家製のマヨネーズ、グレービーソースなど、何一つ手法を変えずに、また、お客さまとの会話を楽しみながら、ファミリー的、そしてアットホームな雰囲気を心がけ、努力を重ねてまいりました。

 店内では、少しでも季節感をだせればと、趣味の写真を何枚か飾っています。写真の腕前は、自慢じゃないけど世田谷区写真展で2度ばかり、2人の孫の写真で金賞をいただきました。やっぱり自慢!(笑)・・・写真でなくて、孫自慢です! まだ他に孫が3人います。各々その3人で、あと3回金賞をもらったら、写真を撮るのは終わろうと思っています。終われるかな~? 終われるはずないさー! だって。
 また、メニューと一緒にわたしが書いた旅のエッセイと川柳もどきを発表させていただいております。これも自慢ではありません・・・(笑)。

 最後に、昭和のとんかつだけは、多くのお客さまに最高に自慢できるものと自負しております。奥沢の地に来て40年ちかくになろうとしております。これもひとえにお客様の心温まるごひいき、ご指導、ご鞭撻のおかげです。今後とも末永くよろしくお願い申し上げます。



とんかつミカド
東京都世田谷区奥沢3-5-9
 TEL :03-3727-4156
営業時間:11:00~14:00 17:00~21:00 
     日曜、祭日はランチ休業、オープン17時より
定休日 :毎週月曜日、第三月、火曜日

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ミシマ社 編(みしましゃ)

ミシマ社は、「原点回帰の出版社」として2006年10月に創業。現在メンバーは約10名。全員全チーム(編集・営業・仕掛け屋)の仕事をするというスタイルで、東京・自由が丘、京都府京都市の二拠点で、「一冊入魂」の出版活動を展開中。取次店などを介さない「直取引」という営業スタイルで「一冊」を全国の書店に卸している。

本企画は「大好きな地元自由が丘のことをもっともっと知りたいなぁ。そして、この空気感を多くの方々と共有したいなぁ」という三島の思いから発し、ミシマ社編として2013年8月に書籍化。その後も、本に入りきらなかったお店やお話を本コーナーで連載中です!

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