自由が丘の贈り物

第22回 自由が丘発! カフェラジオプラントさん

2015.03.15更新


 カフェラジオプラントは音楽をテーマにしたカフェで、2012年10月にオープンしました。
 自由が丘から九品仏のほうへ歩いて5~6分、商店街がとぎれて住宅街になったあたりに玉川聖学院という女子校があるのですが、この学校と隣接して当カフェはあります。
 駅周辺のカフェとは違って、お客様の入れ替わりはゆっくりとしていて、本を読んだり、おしゃべりをしたり、音楽に耳を傾けたり、ゆったりと時間を過ごしてゆく方が多いようです。
 カフェラジオプラントにはいくつか特徴がありますので、ちょっとご紹介いたします。

●音楽・・・あまり聴いたことのない音楽がときどきかかる。
●本棚・・・音楽についての本が本棚に並び、席で読める。最近ミシマ社の本を売り始めた。
●インテリア・・・古い真空管ラジオがならんでいる。ときどきその中のラジオで音楽を鳴らしている。
●コーヒー・・・ホットコーヒーもアイスコーヒーもすべて水出しコーヒーで作っている。
●カレー・・・店主の一番好きな料理で、学生時代から作り続けている。
●Wi-Fi & コンセント・・・完備
●店内・・・平日はあまり人が多くない。土日はそれなりに人が多いことがある。ときどき店主が音楽の会話に夢中になっている。
●お客様・・・ご近所の方、散歩の方、仕事をされる方、読書をされる方、音楽好きの方、等々。

 カフェと銘打ってはいますけれども、昔ながらの喫茶店といったほうが正しいかもしれません。
 店名にカフェとつけたのは若い人にも来てほしかったから。私たちと近い60代前後の世代には喫茶店にお世話になった人たちが多く、彼らは街中で見かけたお店にカフェと名がついていようがいまいが、それが昔ながらの喫茶店かどうかは一目見ただけですぐにわかります。そして自分たちが入れる喫茶店を探している人が多い。
 かたや若い人たちは、大手チェーンのカフェはよく利用するけれど昔ながらの喫茶店にはそれほど入らない。なので、ただのカフェだと思って入ったらなんだか不思議なコミュニケーションがあって、それがおじさんたちの言うところの「喫茶店」という場所だった、ということになればいいなと思います。

 一方で、今日の「昔ながらの喫茶店」の役目は果たすためには、常連さんであるなしにかかわらず居心地の良い空間、おいしい飲み物や食べ物、そして訪れるたびに発見がある不思議さが必要だと思っています。


カフェという名前の喫茶店

 ふり返ってみると、私の生活は学生時代から喫茶店とは切り離せないものでした。
 ミシマ社の『自由が丘の贈り物』に出てくる喫茶店「ぴっといん」は、私の学生時代、生活の中心だった場所です。ここでコーヒーを出してレコードをかけるアルバイトをしながら、友人たちとジャズの話をして大学以外のほとんどの時間を過ごし、今一緒に喫茶店をやっている伴侶と知り合うことになりました。
 また、『自由が丘の贈り物』に出てくるもう一つの喫茶店「メール・エ・フィーユ」も、結婚してから10年以上にわたって、閉店するまでふたりで通ったお店でした。
 どちらも、閉店して長い時間が経った今も、店主、そのご家族、そして当時の常連さんたちと、友人として交流が続いています。喫茶店が私にとってなくてはならないものになった理由は、そのお店とのコミュニケーション、そしてそこで生まれたお客さん同士の交流にありました。

 喫茶店の魅力は、趣味の良いインテリアや小物、グリーン、居心地の良い空間といった「素敵な場所」としての面と、そこに行かなければ経験できないコミュニケーションのある「特別な場所」としての面の両方にあると思いますが、カフェラジオプラントは「素敵でかつ特別な場所」の両方を目指しています。
 お客様によっては、静かに本を読み、コーヒーを味わい、ときどき音楽に耳を傾け、そしてそっと静かにお帰りになるという方もいらっしゃるので、そんなお客様にはなるべく邪魔をせずゆったりと時間を過ごしていただけるように心がけています。
 一方、流れている音楽や置いてある本について熱心に質問されたりするお客様とは会話が増え、共通の話題を話されているお客様同士をご紹介することもあります。


銭湯経済的カフェ

 私たちが喫茶店を始めようと決めてからいろいろな人にそれを話してみると、様々な反応が返ってきました。もっとも多かったのが、「喫茶店はもうからないよ」「労多くして報われないよ」「ビジネスとしては成立しないよ」といった反応でした。「成功するためには立地の良いところでできるだけ来店客の回転をよくして利益率を上げること」あるいは「飲み物はセルフにして効率を良くして」などというアドバイスもありました。

 どうも当カフェはアドバイスの逆を行ってしまったようです。手間を省いて効率を上げることは一番おいしいコミュニケーションの部分を捨てることになりますので、手間は進んでかけます。お金はカフェを継続できる範囲でいただき、大きな利益は目指さない代わりに違うものを目指します。たしかにそれはビジネスとは言えないかもしれませんが、飲食とその対価以外にいろいろなやりとりがなされ、交換されているという意味においては、ビジネスではなくとも一つの経済ではあるようです。平川克美さんがおっしゃるような「銭湯経済」(編集部註:『「消費」をやめる――銭湯経済のすすめ』より)に似ているかもしれません。
 そういうわけで、ビジネスの只中にいる方には少し違った景色が、そうでない方もいつもより少しリズムのゆっくりした景色が見えるかもしれません。ぜひカフェラジオプラントにいらしてみてください。


二つの目標

 カフェラジオプラントには目標が二つあります。一つはご近所の拠り所になること。もう一つは音楽について考える場所になること。

 一つ目の目標については、オープン以来の2年間でご近所にも知られるようになり、少しずつですが通ってくださる方も増え、また少し遠くから足を運んでくださる方も増えてきました。ラジオプラントの空間をなんとなく気に入って来られるお客様から、お店でのコミュニケーションを楽しまれるお客様まで、いくつかの層がお店の中に存在するようになってきています。

 そしてもう一つの、音楽について考える場所になるという目標について。音楽をテーマにした空間ということで、様々な音楽を聴くことができる、音楽についての書籍がある、音楽について調べられる、などの環境をできる限り備えようということでスタートしましたが、さらにこれからは、音楽についてのイベント、ジャズや民族音楽などを聴く会や勉強会などを企画していこうと思っています。
 音楽について興味のある方、様々な音楽を聴いてみたい方は、カフェラジオプラントに来られたら店主に声をかけてみてください。

CAFE RADIOPLANT(カフェ ラジオプラント)
〒158-0083
世田谷区奥沢7-7-21 1F
TEL:03-5706-0118
営業時間:11:00~20:00
定休日: 水曜日
URL:http://shop.jiyugaoka.net/cafe-radioplant

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

ミシマ社 編(みしましゃ)

ミシマ社は、「原点回帰の出版社」として2006年10月に創業。現在メンバーは約10名。全員全チーム(編集・営業・仕掛け屋)の仕事をするというスタイルで、東京・自由が丘、京都府京都市の二拠点で、「一冊入魂」の出版活動を展開中。取次店などを介さない「直取引」という営業スタイルで「一冊」を全国の書店に卸している。

本企画は「大好きな地元自由が丘のことをもっともっと知りたいなぁ。そして、この空気感を多くの方々と共有したいなぁ」という三島の思いから発し、ミシマ社編として2013年8月に書籍化。その後も、本に入りきらなかったお店やお話を本コーナーで連載中です!

自由が丘の贈り物

バックナンバー