自由が丘の贈り物

(構成、写真:寺町六花)

第25回 自由が丘発! 香辛堂さん

2015.06.21更新

香りはおいしさの決め手

 香辛堂さんは、6年前にオープンしたスパイスの専門店です。店内に入ると、木製の温かみのある棚に並べられた、色とりどりのスパイスに目を引かれます。現在取り扱っている種類の数は、単品とミックスを合わせ、なんと150にも及ぶそう。産地はアジアだけでなく、中近東、ヨーロッパと世界中にわたり、その種類の豊富さ、スパイスの色形の美しさに胸が躍ります。それぞれのスパイスには、産地や効能の他、スパイスに合う料理のレシピも紹介されていて、料理のアイデアが膨らみそうです。

 実は、果物に旬や名産地があるように、スパイスも収穫時期や産地で香りが全く異なります。そのため香辛堂さんでは、そのシーズンに一番良いもののサンプルを取り寄せ、その中から厳選したものだけを扱っています。そこには、店主である勝又さんの、香りに対する強いこだわりがうかがえます。
 「鼻が詰まっているときは、ご飯はおいしくないですよね。一方で、お腹が空いているときに歩いていて、焦げた醤油の匂いなんかがしたら胃が動くじゃないですか。香りはおいしさの決め手なんです。お腹が空いているとき、うちのミックススパイスのふたを開けて嗅いだら、いきなり胃が動きますよ」
 お客さんは、気になったミックススパイスをスプーンで味見することで、「香りが脳にはたらきかける」ことを体感できます。スパイスには馴染みのある外国人のお客さんも、香辛堂さんのスパイスの鮮度や香りの違いには驚かれ、リピーターになる方が多いそうです。




スパイスにはドラマがある

 勝又さんが初めてスパイスにふれたのは、今から22年程前のこと。インドから帰ったご友人が食べさせてくれたサグカレー(ほうれん草のカレー)、そしてチャイ(スパイスの効いたミルクティー)がきっかけでした。
 それまでカレーというと、市販のルーからつくるカレーしか知らなかった勝又さん。スパイスから作るカレーのおいしさに驚きました。たっぷりジンジャーが効いたチャイもまた、「エナジードリンクかな!?」と思うほどの衝撃を受け、一発ではまってしまったそう。飲んだ次の日からチャイ作りを始め、いつしかスパイスを求めて世界中をまわるようになりました。
 訪れた産地はどこも強烈でしたが、その中でも特に印象に残ったのが、マレーシアのブラックペッパーの産地だったといいます。どこのお店に行ってもコショウが置いてある今からは考えられないことですが、はるか昔の大航海時代には、金よりも高価だったという香辛料の産地をめぐり、ヨーロッパ諸国が多くの戦闘を繰り広げました。
 「そんな歴史を踏まえて、広大なブラックペッパーの農園を見たときは、すごく感動しましたね」と勝又さん。それぞれのスパイスたちには、たくさんのドラマが詰まっているのです。




どんどん使おう、どんどん試そう

 日本では、日常的にスパイスを使う人はまだまだ少数派です。「大さじ小さじ、いったいいくつ入れればいいの?この料理には合うの?」こんなふうに、スパイスを使うことは難しいというイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。また、実際にスパイスを使ってみたいと思っても、気軽に立ち寄れる雰囲気の専門店はまだまだ身近には少ないはず。勝又さんはそこを変えたかったといいます。
 「インドの一般の家庭ではみんな、適当に、深く考えず使っています。『ちょっと入れておいしくなればそれでいい』くらいの感覚で試してみるのがいいと思うんですね」
 「『体をつくっているのは食べ物だ』という認識がより多くの人に広まれば、スパイス文化ももっと広がるかもしれない。健康に高いアンテナを張っていなくても、ごくふつうの家庭の主婦が、ごくふつうのレストランが、ふつうにスパイスを料理に使ってほしいです」
 スパイスに対する心のハードルを上げる必要は全くない、もっと気軽に試してみてほしい――勝又さんのメッセージです。
 今日のお料理、ちょっとスパイス入れてみませんか?


香辛堂

〒152-0035
東京都目黒区自由が丘1-25-20
Tel.Fax : 03-3725-5454  
営業時間:11:00~19:00
定休日:水曜日,第4木曜日(不定休あり)
ホームページ:http://koushindo.net/

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ミシマ社 編(みしましゃ)

ミシマ社は、「原点回帰の出版社」として2006年10月に創業。現在メンバーは約10名。全員全チーム(編集・営業・仕掛け屋)の仕事をするというスタイルで、東京・自由が丘、京都府京都市の二拠点で、「一冊入魂」の出版活動を展開中。取次店などを介さない「直取引」という営業スタイルで「一冊」を全国の書店に卸している。

本企画は「大好きな地元自由が丘のことをもっともっと知りたいなぁ。そして、この空気感を多くの方々と共有したいなぁ」という三島の思いから発し、ミシマ社編として2013年8月に書籍化。その後も、本に入りきらなかったお店やお話を本コーナーで連載中です!

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