<彼女>の撮り方

12月5日水曜日、渋谷の SPBSにて『<彼女>の撮り方』刊行イベント「ぼくらのユースフルデイズ。〜「好き」が仕事につながった、その理由。〜」というタイトルのもと、写真家の青山裕企さん、建築家の光嶋裕介さん、ミシマ社三島による「仕事と青春」をテーマにした鼎談が行われました。どうやらまったく正反対の思春期を過ごした光嶋さんと青山さん。赤裸々な感情を共有する姿は、まさに「思春期」のまっすぐな高校生。普段ではなかなかきくことができないお三方のお話をうかがうことができました。青春期の「異性」という幻想の洞窟を抜け出したみなさま、いまだに洞窟を抜けられないみなさま、胸キュンの鼎談をお楽しみください!

文:大滝 空、写真:渡辺佑一

『<彼女>の撮り方』刊行イベント「ぼくらのユースフルデイズ。〜「好き」が仕事につながった、その理由。〜」(前編)

2013.01.09更新

同世代の、仕事と青春が直結している3人

『<彼女>の撮り方』刊行イベント

左より、三島、青山さん、光嶋さん

三島今日は、よろしくお願いします。そういえば、3人とも仕事と青春をテーマに本を書いていますね。まずは、自己紹介から。

光嶋僕は1979年生まれの33歳です。仕事は建築家、設計する仕事をしています。『<彼女>の撮り方』という本は、久しぶりに最初から最後まで一気読みした本でした。どうしてかというと、いろんな<彼女>がここでは書かれているのですけど、読み始めたら、次から次へとドラマティックな話があり、 それが自分の話のように聞ける面白さがあったんです。読んだ感想を三島さんに伝えたら、「青山さんと対談しないか」というお話をされて、今日のこの会が実現しました。

三島一瞬にして決まったんです。

光嶋一瞬にして決まって、一瞬にして告知されて、一瞬にして満席になって
一瞬にして今日になりました。

青山いやほんとうに、ありがとうございます。

光嶋建築家は施主と対話をして、一緒に仕事をする。写真家はモデルと対話をする。そういう意味でも、青山さんと僕は、いろいろな接点があるのではないかと思っています。

三島では、青山さんおねがいします。

『<彼女>の撮り方』刊行イベント「ぼくらのユースフルデイズ。〜「好き」が仕事につながった、その理由。〜」前編

『ソラリーマン―働くって何なんだ?!』(青山裕企、ピエブックス)

青山僕は1978年生まれの34歳です。『<彼女>の撮り方』という本をミシマ社から出させていただきました。写真家として今、『ソラリーマン』という、サラリーマンをジャンプさせて撮る作品と、『スクールガール・コンプレックス』という、女子高生を被写体にしたちょっとフェティッシュな写真を撮りながら、なんとか生きているという感じです。

仕事として、女優とかアイドルという、多くの女性を撮っています。写真家というと、どんなイメージを持たれているかは、みなさんそれぞれだと思いますが、僕が写真に興味を持つ前に持っていたイメージというのは、いわゆるグラビアカメラマン。現場でお姉ちゃんをイケイケな調子で、チャラい感じで、口八丁な感じで撮るというか。

光嶋かわいいね、かわいいねって。(笑)

青山そうです、いいねいいねーって撮る感じ。

三島ははは。

『<彼女>の撮り方』刊行イベント「ぼくらのユースフルデイズ。〜「好き」が仕事につながった、その理由。〜」前編

『スクールガール・コンプレックス SCHOOLGIRL COMPLEX』(青山裕企、イースト・プレス)

青山そういうイメージを持っていらっしゃる方もいると思いますし、現状報告としては、たしかに恵まれた眼福のかぎり、可愛い人ばかりと毎日会っているんです。申し訳ないと言うか・・・うらやましいでしょう?(笑)

一同

青山でもノリノリな感じはまったくなくて、女性に対して今も、「距離」を保ちながら、「距離」をつめることもなく写真を撮っています。ただ仕事なので近づいて撮ることもできます。ヌードを撮ることもいとわないですし、いかようにも、自由自在に女性を撮ることができる自負はあります。でも、そこに至るまでの経過として、もともと女性に対してぐいぐいいけるような人間ではなかった。なぜ今こうなったのかという、そのプロセスについて書いた本が『<彼女>の撮り方』という本です。

三島僕は1975年の6月生まれの37歳で、このなかでは最年長です。2006年の10月にミシマ社を立ち上げ、40冊くらい書籍を発刊して参りました。7人のメンバーでやってます。東京の自由が丘を拠点にしていましたが、僕自身は、今年の春から京都の城陽市を拠点に活動をしています。自由が丘はいままでのメンバーにやってもらっていて、僕は今「地方」という東京一極集中じゃない出版の可能性を探る必要があると思っていて、城陽市は出版社がまったくない場所で、デザイナーさんはいないし、カメラマンさんもいない。そんな非常にハングリーな環境で、出版活動をやっています。

『<彼女>撮り方』は、勇気をくれる本

『<彼女>の撮り方』刊行イベント

三島僕は『ソラリーマン』という写真集で青山さんを知って、一度一緒にお仕事したいなと思っていたんです。青山さんとやりたかった企画があるんですとお話をしたとき、その企画が『<彼女>の撮り方』このままのタイトルだったんです。

青山そうですね。タイトルは最初からあったんです。

三島その時点で、青山さんは写真は撮ったことがあったけれど、文章を書いたことは・・・

青山出版に向けてはまったくなかったですね。

三島そんな状況で、「ああぜひぜひ」とおっしゃってくださったんですけど、たくさん話した後に青山さんが「あ、僕書いたことないんですけど・・・本当にいいんですか?」とおっしゃられたのを、鮮明に覚えてます。

青山覚えてます覚えてます。

三島ミシマ社というのは、今までの世の中にはちょっとなさそうなものを題材に、形にするのを追いつめて、追い込んでいったら、何か面白いものができるかもしれない。その可能性を信じて作ろう。という本作りをやっています。その意味で『<彼女>の撮り方』という本は、編集者としての粋を集めたような一冊になったと思っています。

青山最初にタイトルをいただいたときに、いろいろな<彼女>、といってもつきあってきたということではなく、また「撮り方」というとハウツー的な意味合いを含む言葉にも聞こえるんですけど、そういう本にするつもりもないということを、お話いただきました。ミシマ社さんのウェブマガジンで週に一度、連載させていただいて、それを書き溜めていきながらも、どうなっていくのか自分でもわからなかった。

三島青山さんのすごいところって、誰しも思春期とかひとめぼれとかあると思うんですけど、18歳から27歳まで片思いしつづけてるんです。しかも実は27歳で終わってないと思う。今もこう、ひきずりながら、生きているんじゃないかと。

光嶋爆弾発言じゃないですか(笑)。

三島でもこれ、青山さんの才能じゃないかとおもうんです。そういう話があって、これはこの人にしか書けない、と思ったんです。

青山お買い求めいただいている方も、まだそんなにいらっしゃらないので、一目惚れってなんだって感じだと思いますけど・・・。

光嶋ネタバレしないほうがいいんじゃないですか、面白いんで、ね。

青山では、わからない程度に言ってしまうと、僕18歳の大学受験の前日に一目惚れしたんです。それが27歳まで、8年半ですかね、その時点で女の子ともつきあったことのない状態なので、あらゆる手段でアプローチしようとするんですけど。

三島あらゆる手段って・・・危ない感じがしますよ(笑)。

青山そのアプローチの仕方が、普通の人だとデートに誘うとか、いろいろあると思うんですけど・・・この片思いの過程で、僕もちょっとずつ成長しているんです。

三島そういうこと自分で言っちゃうんですね。

光嶋ちょっとずつ成長してるんですね。

青山ネタバレになりますけど、デートを1回しているんですよ。8年半で、1回だけデートしたっていう、このスゴさ。

光嶋これは、希有な。

青山希有ですよ(笑)。僕が彼女にいちばん近づけたのは、その1回デートした時でした。で、8年半経って、まあいろいろあって、実は去年まで何かしらちょっとあったりするっていう話が。

光嶋え、え、え?(笑)

青山というところが『<彼女>の撮り方』に書いてあるんですよ。

帯に、「カメラを持ったら女性にモテた」って書いてあります。けっこうこれに引っかかっているひとが多いんですよ。Twitterとかでも、この帯で興味を持ってくれている人が多くて、ヤバいなーって思っていて(笑)

光嶋本心なんですか?

青山いやでも本当に、モテるってことには、非常に語る所は多くあるんです。

三島だから僕、この本ほんとうに「勇気の出る本」だと思いますよ。勇気出ますよね?もうね、ほんとうに青山さん奥手なんですよ。よくこの、青山さんがいま、吉高由里子さんなどを毎日撮る生活を送っているという。そんなこと想像してました?

青山想像してないですよ。でも、写真を始めた男の子が女の子撮りたいって思うのは、僕は100%だと思ってるんですよ。

三島ほお。

青山いや絶対。これは100%なんです。それは間違いがなくて、僕なんて大学で一目惚れした子に限らず、女の子を撮りたいと思っていたわけですけど、何せアプローチができない、どうやって撮ったらいいかわからない。誘うのも、なかなか・・・。カメラがあるから撮らせて、と言えたんです。でも、モテるというのは、別にハーレム状態になりたいわけじゃなくて、ひとりの女性にモテればいい、と思っていて。要するにカメラを持てば、ひとりの女性に深くモテることもできますし、あらゆる女の子から、ちやほやされるモテ方もできるんです。

思春期の幻想の洞窟を抜け、諦めた先にある異性との向き合い方

『<彼女>の撮り方』刊行イベント

三島光嶋さんにとってのドローイングもそうですか? 女の人描きたいと思ったことは?

光嶋ないです。ひとが描けないんです。描きたいとも思わない。女性にモテることに関して離れますが、写真というのは、一瞬で物事をとらえますよね。ひとつの視点からみたものとしては、かなりの精度でもってとらえることができる。絵、スケッチというのは、どれだけうまくても時間がかかるわけです。時間がかかるということは目が動いているんですよ。どれだけ止まって集中して描いていても、正確なカメラの視点よりも絶対に動いてる。その振れ幅を僕はけっこう大事にしている。

三島へ~

『<彼女>の撮り方』刊行イベント「ぼくらのユースフルデイズ。〜「好き」が仕事につながった、その理由。〜」前編

『幻想都市風景―建築家・光嶋裕介ドローイング集』(光嶋裕介、羽鳥書店)

光嶋正確に描くことよりも、そこに表れる空気感みたいなものを描きたいというふうになっていったのが、この『幻想都市風景』を描いている時なんです。

それによって解釈をしなきゃいけなくなります。だからもし女性を描いたら、女性に対して解釈を考えてしまうだろうと。描くことに対する僕の誠意の方が、女性に対して失礼になるのではないかと思います。だから、「タイタニック」でレオナルドディカプリオが、裸のケイトウィンスレットを描くシーンなんかは・・・いや嘘だよなあと思ってしまうんです。

三島ははは。

光嶋写真は嘘つけないじゃないですか。だから、写真の切り口と、絵を描くというのは似ているようで違うんじゃないかなあと。

青山でもそう見えてですね、写真は嘘をつけまくれるんですよ。

光嶋そうなんですか?・・・!それ教えてください・・・!。

青山写真はたしかに、撮ったらそのままの世界が切り取れます。でもいつ撮るか、どの視点で撮るかというのは、非常に恣意的で、選択の上では無限にあるんです。例えば明るくしゃべっている女の子なんだけど、ふとため息を一瞬だけついた瞬間を撮っちゃえば・・・。

光嶋ああーなるほど。

青山はい。この本にはいろんな女の子が登場しますが、僕は全体的に女性に対して不信感があります。というのも、けっこう苦い話を書いていて、女の子に騙されたりもするんです。でも「女が悪い」ということを言いたいわけじゃなくて、女性ってそういうもんだよなって、「諦める」っていうことをすごく書いているんですよ。

三島うーむ。すごく書いてますよね。

青山諦めて、諦めはじめてから見えてくるものがあって。

光嶋へえー。

青山女の子にはこうあってほしいなという幻想みたいなものを、思春期の時には持っている。わかりやすいかたちでいうと、ジブリに出てくるようなヒロインですね。天真爛漫純真無垢みたいなそういう子って、僕はこの世にいると信じてきたんですけど。

光嶋僕にとっては、タッチの南ちゃんですね。

青山本当にそういう女の子が存在すると思って生きていて。・・・でもその辺で大半の女性はうすら笑いだと思うんですけど。

一同

青山その最上級の崇拝の対象が、本のなかで書いている一目惚れした女の子です。全部背負わせたというか、もう、この子だ。みたいな感じでした。

光嶋そういう意味では誰もが通る道やったんですよ。一生独身で、まったくこの幻想から抜けられない人もいると思うんです。ここに希望があるのは、やっぱり最後青山さん結婚してるとこだと思うんですよ。最後に幻想の洞窟から抜け出たんですよね。

青山そう、そう、そう、そう。そういう幻想をすべて諦めていった先にある、女性との向き合い方というのを、結婚相手には見つけることができたということです。

光嶋それがひとりへのモテ方だということで、そうやって自分の好感度を上げるというのは、素晴らしいもっていき方だと思います。

青山ははは、そうですよねえ。でも、結局、僕モテたいって思ってなかったんですよ。

三島そうですよね、この人に振り向いてほしかったわけですもんね。

光嶋でもそれって、いきなり気づきます? 最初やっぱり、とにかくたくさんのひとにモテたいっていうのがある。でも実は、大人になってその洞窟を抜けると、たくさんのひとにモテる必要はなくて、自分が好きな人に振り向いてもらえれば、他はどうだっていいってことに気づくんじゃないですかね。

青山僕一貫してモテ期が来た記憶はないんですけど、言えるのは、女性に限らずですけど、ガツガツして、こうほしいほしいって言っているうちは、たぶん手に入らないんですよ

三島ああー。

青山心底どうでもよくなったあたりで、ふって目の前に現れて、手に入るんだなってのは、思ってます。

光嶋なるほど、それ今日の副題につながるんじゃないですか? 仕事に関して言いますと、僕ドイツから帰ってきて、ガツガツしていた時期があるんですよ。だって独立して収入源がないから。いろんなところに顔を出して、それこそパーティとか異業種交流会とかで、ばらまいていたんですよ、名刺を。

三島へえ。

光嶋全っ然、だめでしたね。当時知り合ったひとたちっていうのは、今も全然縁がない。ガツガツしすぎてたんですよ。

三島光嶋さんにそんな時期あったんですね。

光嶋ありましたよ。打算的に動くのって簡単じゃないですか。打算的に計算しようとすると、自分の思想の枠が絶対に狭いので失敗するんですよね。考え方が薄っぺらくなってしまう。でも、「諦める」ってことをした瞬間に、つながっていくんじゃないでしょうかね。

三島それでも、最初からは絶対無理ですよね。

光嶋最初からは無理だと思います。


後編に続きます!

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青山裕企(あおやま・ゆうき)

青山裕企

写真家&「ユカイハンズ」代表。
1978年愛知県名古屋市生まれ。2005年筑波大学人間学類(心理学専攻)卒業。2007年「キヤノン写真新世紀」優秀賞(南條史生選)受賞。
サラリーマンや女子高校生など“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしながら、自分自身の思春期観や父親像などを反映させた作品を制作している。
著書は『ソラリーマン』『思春期』(ピエ・ブックス)、『スクールガール・コンプレックス』(イースト・プレス)、『吉高由里子 UWAKI』(マガジンハウス)、『つきあいたい』(扶桑社)など。
好きな食べ物は、抹茶系全般とココイチのカレーと一蘭のラーメン。好きな動物は、ペンギン(グッズ収集家)。誕生日の覚え方は、「よい子(4.15)」。
長所は、晴れ男。座右の銘は、「愛嬌は、老けない」。

旅して一番好きな国は、アイスランド。行きたい国は、ブータンとイエメン。近頃ハマっているのは、昔よく聴いてた曲をリバイバルすること。
子どもの頃の夢は、お天気おじさん(気象予報士)。
現在の夢は・・・やっぱり秘密です!

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