<彼女>の撮り方

12月17日月曜日、『〈彼女〉の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~が下北沢のB&Bにて行われました。面識なし、事前打ち合わせなしの完全初対面ながら、名古屋出身という共通点を持つ写真家の青山裕企さんとブックディレクターの幅允孝さん。そんなお二人の対談はどんどん盛り上がり、会場は沢山の笑い声に包まれました。明るく楽しいお話のなかから、お二人のアツい仕事観、人生観も伝わってきます。会場の雰囲気が少しでも伝わればうれしいです。

(文:小野智美、写真:平田薫)

『<彼女>の撮り方 』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B(前編)

2013.02.20更新

ミシマ社から出た2冊の本

青山写真家の青山裕企と申します。

BACH(バッハ)の幅と申します。今日はうちの息子も来ているので「モテ」とはかなり遠いところからスタートさせようかなと・・・(笑)。初めてですよね、お会いするのは。

青山はい、初めてです。

『<彼女>の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B

『透明人間 再出発』(谷郁雄 詩、青山裕企 写真)

僕、けっこう前から青山さんの写真はひっかかっていて。今日は、この『<彼女>の撮り方』という本の出版記念ということなんですけれども、ミシマ社からは二冊目ですよね。まず一冊目の『透明人間 再出発』は、どういう経緯で出た本なんですか?

青山出してくれる出版社を探すときに、どうしようかなと谷さん(谷郁雄・『透明人間 再出発』は氏との共著)と話していたんですね。『ソラリーマン』という僕の一冊目の書籍を2009年に出版したときに、ミシマガジンで取材をしていただいて以来縁があったのと、ミシマ社という出版社は本当に志が高いということで。

まあ、超絶的に変わり者の三島くんがやってますから(笑)。

青山(笑)。なので、ぜひミシマ社から出してみたいなということで、谷さんに「ここなら出してもらえます!」というふうに力強く、根拠なく(笑)、言って。僕、自分から営業ってしないんですよ。ちょっと恥ずかしいというか。

人見知りだしね。本にも書いてあります(笑)。

青山新宿の喫茶店で三島さんに見せて、その場でやりましょう! と言っていただいて、やることになったんです。そのあとにお話をしていたら、三島さんがもともと僕と本をつくりたいと思っていてくれたという、思いもよらない話がありまして。

素晴らしい出会いじゃないですか。

青山そちらもぜひ! ということで。で、そのときにタイトルが決まってたんです。『<彼女>の撮り方』という本でどうでしょう、と。

『透明人間 再出発』が言葉の余白みたいなところを存分に活かしていたのに対して、『<彼女>の撮り方』はギュギュっと、ちゃんと言いきっていると思ったんですけれども、三島さんから『<彼女>の撮り方』をつくるにあたってこんな本で! みたいなものはあったんですか?

青山最初から彼女という言葉に<>が付いている状態で言われたんですよ。だから、いわゆるガールフレンドとしての身近な彼女をイメージされる方が多いと思うんですけれども、そうではなくて、あらゆる<彼女>、色んな関係性をもった<彼女>について書いてほしい、と。

『<彼女>の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B

もどかしさを武器にする

青山さんは、いまではキレイな女性や可愛い女性を撮る写真家になったわけですが、僕は青山さんが戸惑っているから撮れるっていうのをこの本のなかで書いていると思うんですよね。いろんな後悔とかをあえて、どんどんトレースするというか繰り返す。結実したとか結ばれちゃったところまでいかないもどかしさが逆に作品のモチベーションになってるのかなという気がしてるんですけど。

青山まさにそうだと思います。叶わなかったことは、もう叶わないんです。ただそれは逆の視点から見ると、何度でも失敗できるというところでもある。今、写真を撮るなかで、自分の叶わなかったことや満たされなかったことを出せるので。今はもう結婚もしていて、モテる必要もないんですけど。

ないんですか? ただイベントのタイトルが、『モテたくて2013』(笑)。一応そうなっちゃってるんですけど、青山さんにとって『モテたくて』の概念はないんですね。

青山もう単純に写真が好きで好きでしかたないんですよね。で、良い写真を残すためにどう撮るかという。自分が経験してきたこと、もちろん読んだもの見たもの聞いたものも含めて、突き詰めると自分のしてきたことが、写真に載せられるんだなって実感できるようになってきたら、どんどん写真が思い通りに撮れるようになっていったというか。

『<彼女>の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B

『スクールガール・コンプレックス SCHOOLGIRL COMPLEX』(青山裕企、イースト・プレス)

なるほど、なるほど。僕、『スクールガール・コンプレックス』を2006年ごろ雑誌でよく見かけていたんですが、正直言って「この方は元来、エロくないな」と思ったんです(笑)。

青山(笑)。

どちらかというと、女性をすごく崇高視しているというか、距離感が絶妙だと思ったんですよね。好きなんだけど、近すぎるとダメというか。距離が0になると、触った瞬間にそのものが風化してしまうというか。だからこそ青山さんの写真が男性だけでなく女性にも受け入れられているのかなと思いました。

この本のなかでも、写真を撮るということは距離感をつかむことだと言ってるんですけど、青山さんが「あ、距離とれてるな」と思えるようになったのは、自然なグラデーションみたいにそうなっていったのか、あるとき急にストンと距離が見えたのか、どっちなんですか?

青山まさにその『スクールガール・コンプレックス』という作品を2006年から撮り始めるまでは、そこまで距離感をつかめていなかったと思っています。これは女子高生が被写体なんですけど、顔が出ていないんです。でも僕にとっては、向き合わないからこそじっくり見れるというか、安心して凝視できる。まさに、コンプレックスを写しているんですよね。撮りながら自分でそのコンプレックスを倒そうっていう。

でも結局これは倒しきれてないのが、この写真集が成功したところというか(笑)。たぶん、もういまは余裕で女子高生何人もとメールしてますって訳ではないじゃないですか。

青山基本は変わらないです。まあ撮影はできますけど、それ以上は何もない(笑)。

『<彼女>の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B

自転車乗らなきゃ人生終わる

話を『<彼女>の撮り方』に戻すんですけど、この本は、高校時代のそうとう苦い初恋の思い出や一目惚れした女性との恋みたいなところから、大脱線して急に自転車旅行、と、青山さんが今まで歩んでこられた来歴がかなりギュギュッと詰まっています。僕が気になったのは、そこから写真というところに自然に辿り着いたのか、それとも紆余曲折といいますか、写真を選び取るまでにひょっとしたら別の可能性もあったのか。写真に落ちついた道筋をもう少し詳しくうかがいたいんです。

青山ふり返ってみると、大学に入って、その一目惚れした女の子と色々ありまして。

ほとんどないですけどね。勝手に妄想のなかでいろいろあっただけ(笑)。

青山たしかに、事実だけを書いたら数ページで終わってしまう(笑)。まあそれで、大学に行かなくなって引きこもりみたいな形になって。それは彼女とのやりとり以前に、自分についてすごく悩んでいたというか。自分とは何者か、何ができるのか、どうやって生きていけばいいのかということをずっと悩んで悶々としていたんです。僕、悩むとふたつの場所に行くんですね。

一つ目が東急ハンズなんですけど、モヤッとしたら意味もなく行って、最上階から全フロアを回って一階まで降りて外に出ると、なんだか何でもできそうな気がするんです(笑)。

東急ハンズすごいですね(笑)。

青山一円も使わずに無敵になれる(笑)。もう一つが本屋なんですけど、本って出会いですよね。本との出会いに期待して、行く。

はい。

青山人見知りで、誰かに会いに行って何かを吸収するということもできなかったので、本屋で出会いたい! という気持ちで当てもなく本屋を歩いていたときに、『自転車旅行をはじめよう』という本をたまたま見つけて、見た瞬間に「旅しよう!」と。

迷いとかもなく、全身全霊でヨッシャー! って感じで向かうんですか?

青山よく行動力ありますね、とかも言われるんですけど、そういう訳ではなくて、追い込まれてるんですよね。「これしかない!」という、崖っぷちだったんですよ。自転車乗らなきゃ人生終わるくらいに思って(笑)。

自転車 or DIE(笑)。

青山そこまで追い込まれると、反動でよくわからないすごいエネルギーが出てくるというか。そして旅先の、札幌でカメラを買ったんですよ。

なるほど。

青山旅先では一人なので、自転車を置いて風景を撮っていて。記念写真としてタイマーで自分を撮ろうとして、本当に思いつきで跳んでみたんですけど、その写真が面白かったんです。面白い自分がいたんです(笑)。そういうことを実感しながら旅から帰ってきて、大学に復学して。最初のころは大学内で自分が跳んでる写真を撮ってたんですね。

筑波大のなかで、「あいつ跳んでる、大丈夫かな」と思われながら作品を撮りためていったんですね(笑)。

青山そうですね(笑)。だんだん、まだ女性にはいけないんですけど、男友だちを跳ばせて一緒に盛り上がって。そのうちに同級生の女子とかも、ちょっとずつ。

同級生いけたから、じゃあ女子高生いってみるか! ってなったんですか?

青山そういうわけでもないですね。そこからけっこうタイムラグがあります。『スクールガール・コンプレックス』を撮り始めるまでは、ジャンプ写真を通してしか女性を撮れなかったと思います。ジャンプ・キャラだったんですよね、跳ばせ屋みたいな(笑)。それが自分のなかの個性としてあって、自信のひとつになったというか。


 次回、話は「写真の撮り方」や「仕事観」、そしてイベントのタイトルにもなっている「モテ」へと続きます。2013年、モテたい読者の方は必読です。

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青山裕企(あおやま・ゆうき)

青山裕企

写真家&「ユカイハンズ」代表。
1978年愛知県名古屋市生まれ。2005年筑波大学人間学類(心理学専攻)卒業。2007年「キヤノン写真新世紀」優秀賞(南條史生選)受賞。
サラリーマンや女子高校生など“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしながら、自分自身の思春期観や父親像などを反映させた作品を制作している。
著書は『ソラリーマン』『思春期』(ピエ・ブックス)、『スクールガール・コンプレックス』(イースト・プレス)、『吉高由里子 UWAKI』(マガジンハウス)、『つきあいたい』(扶桑社)など。
好きな食べ物は、抹茶系全般とココイチのカレーと一蘭のラーメン。好きな動物は、ペンギン(グッズ収集家)。誕生日の覚え方は、「よい子(4.15)」。
長所は、晴れ男。座右の銘は、「愛嬌は、老けない」。

旅して一番好きな国は、アイスランド。行きたい国は、ブータンとイエメン。近頃ハマっているのは、昔よく聴いてた曲をリバイバルすること。
子どもの頃の夢は、お天気おじさん(気象予報士)。
現在の夢は・・・やっぱり秘密です!

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