<彼女>の撮り方

12月17日月曜日、下北沢のB&Bにて行われた『〈彼女〉の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~。後半では、イベント名にも入っている「モテ」について、そして「写真における距離感」「仕事観」について、話はさらに深まります。

(文:小野智美、写真:平田薫)

『<彼女>の撮り方 』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B(後編)

2013.02.27更新

女の子はみんな、純真無垢?

跳ぶというところから始まって、だんだん青山さんならではの女性の撮り方ができていくときに、被写体が同世代じゃなくて年下になっていったじゃないですか。もし自分の初恋を照らし合わせるような形で女性を撮っていくことを志すんだったら、年をとってくるにしたがって被写体にしたい女性の年齢も上がってくると思うんです。被写体が年下に向かったのはなぜなんですか?

青山僕は、同世代の女性と遊んだりコミュニケーションを取ったりしないまま高校生になったんですね。だから、女性観というか、女性に対する考え方が、たとえばジブリに出てくるようなアニメや漫画のヒロインというか(笑)。

ちなみにだれが好きだったんですか?

青山ラピュタのシータです(笑)。ナウシカではなかったんです。今はナウシカいいなって思いますけど。

なんでナウシカはダメだったんですか?

青山女性に強さを求めてないんですよね。

なるほどね。じゃあもののけ姫のサンとかは絶対ダメだ(笑)。

青山女の子はみんな、天真爛漫で純真無垢だと思ってたんですね。自分が高校生だったころ、性的に多感な時期になるじゃないですか。ピュアに見ているのに、やらしくも見て、でもどうしようもない、何もできない、触れられない、声も掛けられない。その頃の感情の塊みたいなものが、大人になってもなくなってない。

思春期のときに抱えていた、満たされなかった思いは、マグマのように自分の奥底に眠っている。そのときに何ともならなかったモヤモヤみたいのは一生消えないんでしょうね。でもそういう情念があるから、逆に今の独特の写真の撮り方ができる。

青山結果オーライとしか言いようがないです(笑)。

いかにウィンクで写真を撮るか

ケータイのカメラの普及によって、写真を撮る、撮られるっていうのは身近にはなってきたんですが、やっぱり一眼レフで撮る、撮られるというのはちょっと大げさな事象のように思われがちだと思います。この本に書いてあるのは、そのカメラの大きさとか重さとかをいかに排除するか、いかにウィンクで写真を撮るか、ですよね。パチッと目を瞑ったら写真が撮れる、ウィンクで撮れたら一番いいですよね。

青山そうなんです。カメラっていうのは、必ずふたりの間にいるわけで、そこがまず、もどかしい。『スクールガール・コンプレックス』を撮り始めた頃は、クラシカルなじゃばら式の扱いづらいカメラをあえて使ってたんです。今だと、どこでも誰でも、シャープにピントを合わせることができますけども、僕の高校時代の思いを撮ろうと思ったときに、スムーズにピントが合ってしまうよりも不自由な方がいいんじゃないかと。

カメラは常にじゃま者として間にあるけれども、いかに被写体と撮り手が距離を埋めていくかってところですよね。

青山仕事でもiPhoneで撮ったりもするんです。当然iPhoneしか持って行かないわけではなくて、一眼レフも持っていくんですけど、大きなカメラを持っていることで被写体が緊張するならば小さいカメラで撮ります。画素は落ちても、そっちの方がいい顔するのかな、と。

この本のなかで、ノーファインダーでカメラを首に提げているときにシャッターを押すやり方も披露されてましたけど、ノーファインダーでもそのとき出た表情がよければいいってことですよね。

青山本当にそれがすべてです。写真を勉強していると、ここはピントが甘いとか、人だったらピントが目に合ってなきゃいけないのに口元に合っていますねっていうことを散々言われたんですね。でも、見たところにピントが合ってしかるべきなんですよ。耳を見ることもあるし、そのときは耳にピントが合ってたっていいじゃないですか。ただやっぱり経験もあるので、ノーファインダーでもどの角度にずらせば撮れるっていうのがわかるからできるというのもあります。

なるほど。やっぱり青山さんは距離のとり方、縮め方が面白いんですよね。こう言ったらこう跳ぶだろうとか、こうしたらこういう写真が撮れるだろうということを経験的に知っているにも関わらず、そうじゃない偶然性とか被写体のゆがんだ部分とかをそのまま愛でるという姿勢ですよね。

青山女性でもそうですね。慣れ親しんだ人ならある程度は予想できるにせよ、基本的にどういうものが撮れるかは予想できないし、思い通りのものは撮れない、って最初から諦めてる。

『<彼女>の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B

SとM、撮る人と撮られる人

まぁ、今日は一応「モテたくて2013」というタイトルがついてしまっているので、「モテるってなんなんだ?!」というところを最後にうかがいましょうか。僕にとって「モテる」ということは、例えば「若くてきれいな独身女性にモテたい」みたいな、男女間の関係を超えているものなんです。つまるところ「モテる」って、誰に対してどうモテることなんですかね。

青山僕は、大事なのは「モテた」先に何があるかってことだと思うんです。例えば独身男性にとって、女性にモテる先には若い女の子とつきあって、やがて結婚する・・・ということが予想されるわけですけど、きっと多くの「モテたい」人たちは、複数の女の子から一生ついていきますって言われたいわけじゃないんですよ。

たしかに一生を捧げられても困りますよね(笑)。

青山その場限りなんですよね。写真ってその究極というか。ちょっと座ってみてと言えば座ってくれて、頭にみかん乗っけてと言えばみかん乗っけてくれるんですよ。この経験があれば、辛いことがあっても二、三週間生きていける(笑)。

(笑)。じゃあなんかあったときはその写真を見るんですね。

青山けっこう自分の撮った写真を待ち受けにしたりしてます(笑)。帯コピーにある「カメラを持ったら女性にモテた」というひとつの意味としては、撮影をしている瞬間は一対一で、どうにでもできるんですよね。相手を完全にコントロールできる。

青山さんのなかのMっ気というか、上手くいきたいんだけどいかないもどかしさがモチベーションになっているようで、そうかと思いきや、逆にこの瞬間は牛耳れるという裏腹なところがありますよね。人間ってどっちも持ってますよね。

青山そうなんですよね。女の子でも純粋なときもあって荒んでいるときもあって、それがぐるぐる回っているのが人間だし、自分も誰でもそうなんですよね。ただ、撮影のときは純粋さだけを抽出できるんですよ。そこが写真のいいところ。

最高ですね。僕はSM論に関しても、サービスのSと真心のMだと思っていて、どっちも思いやりなんですよ。攻める側攻められる側とか一見そういう風に思えるんですけど、この本のなかにもあるように意外と、撮る人=撮られる人になる瞬間があるし、コミュニケーションの楽しいのはそういうところなのかなと思いましたね。なんだか章立ても含めて、スーっと綺麗な円を描くような本で、面白いなあと思いました。

青山編集の力で上手くまとめていただきました。それぞれバラバラに書いていたので。ありがとうございます。この本をこんなに幅さんに語って頂けて、こんな素敵なことはないです。

距離と軸足

青山幅さんは、今だとわが子にモテることが第一じゃないですか?

そうですね・・・今って承認不足の世の中だから、承認とモテっていうのは密接に結びついているように感じるんです。最近は女の子じゃなくてもおっちゃんにもなにかほめられると、モテた、うれしかったと感じますね。子どもでもそうですし。

青山なるほど。

昔、モテるモテないって、文脈のなかにあった気がするんです。あいつは、ああいう雑誌を読んでて、こういうお店で服を買うから、こんな女の子にモテたい、例えばオリーブ少女にモテたい(笑)、みたいな。今はなるべくそうじゃない、自分がわからない文脈からモテる、容赦のないところからモテるとうれしいというのはあるかもしれません。

青山僕は、フェティッシュな写真を最初撮ってたころは、女の子からドン引きされると思ってました。モテを捨てたんです。捨てると案外・・・というところがあるんですね。まあ、その先にはなにもないんですけど(笑)。

僕、本を選ぶときにいつもインタビューをするんです。先日、ギャル向けの携帯コンテンツを開発してる会社から、エントランスにギャルうけのいい本棚をつくってくださいといわれて。『ポップティーン』からはじまって『BLENDA』やら、周辺の雑誌をめちゃめちゃ読み込んで行くんですが、まったく意味がわからないんですよ。

青山まあ、そうですよね(笑)。

だけど、おもしろいもので、青山さんでいう写真が、僕にとっての本なんですよね。最初は「好きなブランドなに?」「やっぱりヴィトンは好きです」みたいな感じで始まる。たまたまインタビューに持っていってた本で、ルイヴィトンの本があると、それを見て「これ超ほしかったんですよ、こないだ大黒屋でいくらで売ってました」って、ちょっとずつ話ができる。

青山なるほど。

向こうは向こうで、全然関係ない本屋のおじちゃんであっても話せると意外に楽しいわけですよね。距離をさぐってるんです。距離をさぐるときに、僕はいつもバスケのピボットターンを例に出すんですが、自分はここに立ってますよという軸足をもって、もう片足でいろんなところにターンをする。

青山さんは、写真という片足がめちゃめちゃはっきりしているので、女子高生を撮ろうが跳んでるおっさんを撮ろうが、っていうところはありますよね。
ひょっとしたらみなさんにも言えることで、軸足が一発しっかりしてると意外に誰とでも話せるし、そこは承認される可能性は高まると思ったりするんですよね。

青山それはほんとうに、そうだと思います。

まあ、そんなこんなで沢山しゃべってそろそろお時間なんですけど。青山さんありがとうございました。楽しかったですね。

青山ありがとうございます、本当になんかもう、嬉しいです。感動しちゃいました。

『<彼女>の撮り方』刊行記念イベント~モテたくて2013~@下北沢B&B

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青山裕企(あおやま・ゆうき)

青山裕企

写真家&「ユカイハンズ」代表。
1978年愛知県名古屋市生まれ。2005年筑波大学人間学類(心理学専攻)卒業。2007年「キヤノン写真新世紀」優秀賞(南條史生選)受賞。
サラリーマンや女子高校生など“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしながら、自分自身の思春期観や父親像などを反映させた作品を制作している。
著書は『ソラリーマン』『思春期』(ピエ・ブックス)、『スクールガール・コンプレックス』(イースト・プレス)、『吉高由里子 UWAKI』(マガジンハウス)、『つきあいたい』(扶桑社)など。
好きな食べ物は、抹茶系全般とココイチのカレーと一蘭のラーメン。好きな動物は、ペンギン(グッズ収集家)。誕生日の覚え方は、「よい子(4.15)」。
長所は、晴れ男。座右の銘は、「愛嬌は、老けない」。

旅して一番好きな国は、アイスランド。行きたい国は、ブータンとイエメン。近頃ハマっているのは、昔よく聴いてた曲をリバイバルすること。
子どもの頃の夢は、お天気おじさん(気象予報士)。
現在の夢は・・・やっぱり秘密です!

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