からだのなかの微生物

第4回 身体の「中」ってなんだろう? 後編

2015.07.16更新

 前回では、「そもそも、身体の『中』ってなんだろう?」という問いかけをし、たとえば「胃腸」は、厳密には、身体の中とはいえないかも・・・と、お話ししました。
 それでは今回は、改めて「身体の『中』ってどこだろう?」ということを探っていきたいと思います。


細胞でできた身体

 いきなり余談ですが、今年の4月から、高校の非常勤講師として、生物の授業を教えています。更に余談ですが、この連載のミシマ社の担当さんは、今、私が教えている高校の卒業生だそうです(びっくり!)。完全な偶然なのですが、世の中、いろいろな所で繋がっているのだなあと感じさせられました。

 それはさておき、高校の生物では、まず最初に教える「生物の大原則」というものがあります。それは、

「生物は『細胞』からできている」

 というものです(教科書的には、「生物体の構造と機能の基本単位は細胞である」と言います)。
 細胞は非常に小さく、顕微鏡を使わないと目には見えないものなので、普段、普通に暮らしているときに意識することはほとんどありません。
 ですが、「身体は細胞からできている」というのは、微生物がどのように私たちの身体に入ってくるかということを考える上で非常に重要です。
 なぜなら、ミクロの世界でみてみると、微生物という小さな存在が出会うのは、私たちの身体を作っている小さな細胞だからです。


細胞でできたバリアーを突破する

 前回、身体は「チクワ型」であるというお話をしました。
 つまり、身体の「中」というべきは、このチクワの「身」の部分かもしれません。


 このチクワの「身」の部分には、内臓があり、筋肉があり、血管や神経が走っている、まさに身体の「中」と呼ぶのにふさわしい領域です。
 ただ、これらの身の部分は、細胞という頑強なバリアー、壁で守られています。


 たとえば、「チクワの内側」である胃腸の壁を拡大してみると、図2のように、細胞がずらっと並んだ壁、バリアーを作っています。この細胞の壁は、とても強固にできているので(※1)、おいそれと微生物は突破できません。
 けれど実は、この壁を微生物が突破できる、2通りの方法があるのです。

 1つ目は、この細胞の壁の壊れた部分を見つけるか、あるいは、壁を強引に壊してしまうという方法です。これは、わかりやすいですね。
 実際、自力で細胞の壁を壊して侵入してくる微生物はあまり多くありませんが、怪我などの損傷部位から侵入してきたり、蚊が刺したり(=皮膚の細胞の壁に穴を空ける)、動物が噛んだり(=皮膚の細胞の壁を盛大に破壊する)したところから侵入してくる微生物は、たくさん知られています。

 一方で、壊れた細胞の壁の部分から侵入するよりも、更に巧妙な手口で、侵入してくる微生物もいます。

 それが2つ目の、「細胞の中に入ってしまう」という方法です。


細胞の「中」へ

 細胞の壁を壊す、というのは、小さな微生物にとっては、決して簡単な方法ではありません。そこで、微生物たちが編み出した方法というのは、壁をつくっている細胞の「中」に入ってしまうという方法です。


 細胞の「中」。
 最初に、私たちの身体は細胞からできていると言いました。ですが、細胞というのはレンガのような単なる身体の部品ではなくて、細胞の中には液体で詰まっていて、更にミクロな空間が広がっています。そして、「からだのなかの微生物」の仲間たちには、そんな細胞の中の空間に住む、「細胞のなかの微生物」も多く知られています。

 前回、今回の連載では、ちょっと理論的な話が続きました。
 次回は、もっと具体的な話として、「からだのなかの、更に、細胞のなかの微生物」には、実際どんな仲間たちがいるか紹介します。


(※1)細胞同士が密着して並んでいて、更にその間には、タイトジャンクションと呼ばれる結合構造があり、細胞と細胞の隙間も埋められている。

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早川昌志(はやかわ・まさし)

1987年生まれ。微生物の研究をしながら、微生物に関する教材を作ったり、イベントの企画をしたりしています。

現在は、神戸大学大学院理学研究科生物学専攻博士課程在籍、日本学術振興会特別研究員(DC1)。

Twitterアカウント → @Markchloro

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