木のみかた

第25回 森と林はどう違って、そもそも今、日本の森はどうなっているのか

2016.03.02更新

 みなさん、ご無沙汰しています。森の案内人の三浦 豊です。
 僕が住んでいる京都府城陽市では、梅の花が咲きはじめてきました。

 この度、2012年9月から2014年8月まで連載をさせてもらっていた「 木のみかた 」を、また再び始めさせてもらえることになりました。
 みなさん、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、記念すべき再開第1回目のお題は、
「 森と林って、どう違うの? 」
「 そもそも、日本の森は今どうなってるの? 」です。

 最初が肝心といいますが、いきなり本質的な問いです。
 森と林はみなさんにも馴染みのある言葉だとは思いますが、そもそも、この2つの言葉が示す場所の違いは何なのでしょうか?


 まずは森のことから、お話しますね。

「 森 」の語源は「 盛り( もり ) 」から来ています。

 森は、自然に、たくさんの木々が生い茂っている状態のことを指します。

 この日本列島では、じつにさまざまな草木が自生しています。
 たとえば何もない平地でも、月日が経てば、木々が「 盛り 」上がるように生い茂ります。人が種を蒔かなくても。

 太古の日本列島では、かつては陸地の98%くらいが森に覆われていました。
 大地を覆っていた森は、やがて人間によって切り開かれていきました。
 でも現在になっても、この日本列島の98%くらいは、あいかわらず森に復活する潜在能力を秘めています。

 僕は毎日のように森や街で木や森を愛でていますが、そんな中、実感として湧いてくることがあります。それは、

「 日本列島の大地は、再び森になろう。森になろうとしている。」

 ということです。この森になろうとする営みは、じつに荘厳なものです。

 僕は今のところ無宗教ですが、この「 盛り 」の力はどこから来るのか辿っていけば、多かれ少なかれ「 神 」の領域に入るような気さえしています。
 ほんと不思議です。センスオブワンダーです。


 対して「 林 」の語源は「 生やす 」から来ています。

 人が、特定の場所に対して、特定の機能を持たせるために、特定の種類の木が生えるように手を加えた空間が「 林 」です。
 神クラスの領域になる森とはちがって、林はあくまで人が関わって生まれる場所です。


 とくに野山で木がたくさん生えている場所は「 森林 」の一言でまとめられることが多いですが、そこが森なのか、はたまた林なのか意識をしながら歩いていてみると、ただ木が生えているだけではない、自然の営みや、人の営みが、奥行きを宿しながらあなたに迫ってくるはずです。
 ぜひぜひ、森と林目線で、野山や田舎を歩いてみてください。


 それでは、2つめのお題「 日本の森は今どうなっているのか」です。

 じつは今の日本は、日本という国が生まれてから有史以来、最もたくさんの木が生い茂っています。

 これを聞くと、以外に思う人が多いと思います。
 でも、本当にそうなんです。
 この日本列島を覆っていた、かつての木々や森が静かに復活しはじめているのを、日本中をぐるぐる巡っていると実感します。
 これはすごいことだと思います。

 今の日本は、昔と比べると人口が桁違いに増えました。
 例をあげると、縄文時代の日本の総人口のピークは26万人、江戸時代の日本の総人口のピークは3000万人でした。
 それでは、幾多の産業革新、技術革新を経て世界に冠たる経済大国になった現代の日本で、なぜ木々がたくさん生えはじめて、多くの森が復活をしようとしているのでしょうか?

 それは「 人々が伐る木の数が急激に減ったから 」です。

 昔、人が生きていくためには、必ず木を伐らなければなりませんでした。
電気や石油、ガスがなかった時代の生活エネルギーは、薪( まき )や炭( すみ )、柴( しば・山野に自生している小さな雑木のこと )だったからです。

 ちなみに、童話桃太郎の序文に「 おじいさんは山へ柴刈り( しばかり )に、おばあさんは川へ洗濯に行きました」とありますが、おじいさんが刈ったのはゴルフ場や公園にあるような芝生の芝ではなくて、野山に自生している雑木のことを指す「 柴 」です。

 今のように寒い毎日がつづいていると、木を燃やして暖をとらないと命にかかわりますし、料理やお風呂にも薪や柴は必需品でした。

 でも現代の日本で、日常的に森林で木を伐って、そこから家まで薪を運んで、薪を燃やして生活を送っている人は圧倒的少数派になりました。少なくとも僕の知り合いにはいません。


 つまり、人が木を伐られなくなったことで、木々がたくさん生えはじめているのです。

 これを知ると、テンションが上がってくるのは僕だけでしょうか。

 どんな種類の木が生えて、どんな木が立派に育って、どんな森が日本各地で復活をしようとしているのか、ワクワクしてきませんか?


 今回、再開した木のみかたでは、その「 これから 」な木々を中心に、今の日本で、現役バリバリで生えている木々や森を紹介していきたいと思います。

 みなさん、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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三浦豊(みうら・ゆたか)

1977年京都市生まれ。森の案内人、庭師。
日本大学で建築を学んで、庭師になるために京都へ帰郷する。
修行を2年間してから、日本中を巡る長い旅に出た。
2009年の春に京都に帰り、現在は京都府城陽市に住んでいる。

今、ホームページの「日本列島の点」を徐々に増やしている。
点は僕にとって「かけがえのない場所で、いつか日本列島が真っ白になったらいい」と願っている。
よかったら見てやってください。

旅が終わったと言っても、方々へ行きつづけている。それはずっと続けたい。
仕事の傍ら、自宅の庭のお手入れを一人で、人工林のお手入れを仲間とやっている。
古今東西の音楽と落語を聴くのが好き。温泉とラーメンも好き。

三浦豊

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