木のみかた

第30回 赤芽槲(あかめがしわ)

2016.05.26更新

森のはじまりを告げる木







 街中でこの木が生えているのを見ると、僕はテンションが上がります。

 なぜなら、この木が生えているということは、森の本格的な「 はじまり 」を意味するからです。
 明るい場所にすかさず芽吹いて、容赦ない早さで大きくなります。そのスピードは日本の木の中 でも1、2を争います。
 どのくらいの早さかというと、環境と個体の調子が良かったら、種から芽吹いて20年くらいで、 なんと10メートルくらいの高さになります。
 他の木では、たとえば森の中で芽生えた樅(もみ)の若手だったら、種から芽吹いて20年で25センチくらいの高さになります。それと比べてみると、赤芽槲は圧倒的な成長をします。その勇姿を見ていると、癒されるというよりは、まるでアントニオ猪木から闘魂ビンタを受けたような気分になります。

 この木が生きていくのに必要な条件は、ともかく強い日光です。 たくさんの日差しを浴びながら生きているこの木にとってのライバルは草です。草たちに負けないために、猛スピードで成長してその生涯を駆け抜けます。


 木の名前は、赤芽槲(あかめがしわ)です。

 新芽が赤くて、大きくなる葉っぱを炊し葉(かしは・食べ物をのせたり、包んだりする葉のこと)として使われてきたことから名づけられました。


 熱帯地方によく生えているトウダイグサ科の木で、熱帯が起源のようです。
 南は台湾・沖縄から、北は秋田県まで自生しています。
 ここ数年の市街地はヒートアイランド現象で年々暑くなってきているように感じますが、この木 は街が暑くなっても快適そうです。なんといってもルーツが熱帯ですからね。どんどん成長します。







 赤芽槲はまた、地方によって名づけられた方言名をたくさん持っています。
菜盛葉(さいもりば)、五菜葉(ごさいば)、赤柏(あかがしわ)、味噌盛葉(みそもりば)、ヤマユーナ、アカタッピャギ、タッピシチャ、久木( ひさぎ )、あかべ、あかぼー、あかんべん、等々。


 集落でも田畑でも、明るい環境だったらとにかく元気に生えるので、人々にとっては身近な木だったのでしょうね。


 種は発芽をしなくても、土の中で20年くらい眠り続けることができます。 土の温度が35°C以上になるまで、発芽をしないで、じっと待ち続けます。土の温度が35°C以上になるということは、たくさんの日光が地面まで射していることを意味します。


 街中でも、道沿いや空き地など、とにかく「 明るい場所 」では、元気いっぱいに生える木です。


 赤芽槲が成長して木陰を落とすようになると、草はそれほど生えなくなって、日陰でも生きていくことができる木々が生えはじめます。

 いよいよ、森のはじまりです。







お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

三浦豊(みうら・ゆたか)

1977年京都市生まれ。森の案内人、庭師。
日本大学で建築を学んで、庭師になるために京都へ帰郷する。
修行を2年間してから、日本中を巡る長い旅に出た。
2009年の春に京都に帰り、現在は京都府城陽市に住んでいる。

今、ホームページの「日本列島の点」を徐々に増やしている。
点は僕にとって「かけがえのない場所で、いつか日本列島が真っ白になったらいい」と願っている。
よかったら見てやってください。

旅が終わったと言っても、方々へ行きつづけている。それはずっと続けたい。
仕事の傍ら、自宅の庭のお手入れを一人で、人工林のお手入れを仲間とやっている。
古今東西の音楽と落語を聴くのが好き。温泉とラーメンも好き。

三浦豊

バックナンバー