古代文字で写経

ヘブライ語で旧約聖書 第2回

2014.09.20更新

新しい言語を勉強するときは歌を覚える

 先週から始まったヘブライ語で『聖書(旧約聖書)』を写経。前回は「マイム・マイム」の後半でしたが、今回はその続きというか、続きじゃないね、その前の部分を写経しましょう。

 こここそが『聖書』の本文の部分です。

「イザヤ書」の12章3節です。まずは現代日本語(新共同訳)で紹介しましょう。

「あなたたちは喜びのうちに/救いの泉から水を汲む。」

 ここだけ出されても「ん?」と、よくわからないと思うのですが、今回は歌えて書けることを第一の目標にしますので『聖書』の話はまた別の機会にすることにして・・・。

 新しい言語を勉強しようとすると、すぐに負けちゃう人は(僕もですが)、歌をたくさん覚えるといいです。今回のマイム・マイムも歌ですね。踊りまでついている! そうそう、次回以降も『聖書』を写経しますが、これも歌でいきます。

 ヘブライ語の『聖書』の章句は歌になっているものが多いので嬉しいです。

 さて、前回はとても簡単でしたね。「マイム」と「ベサンソン」を繰り返せばいいだけ。さすがに今回は、それよりはちょっと難しい。

 まずは一度、聞いてみてください。わざと字幕なしでいきますね。どこかで聞いたことのある単語が入っていないかどうかをチェックしてみてください。ただしスピードはちょっとゆっくりめ。


字幕入りだと・・・

 耳のいい方は、前回の「マイム」と「ベサソン」が含まれているのに気づいたでしょう。いかがでしたか。

 では、今回は字幕入りでお届けします。「マイム」と「ベサソン」だけ色を変えておきますね。まずは、ここだけでも歌ってみてください。スピードは、やはりちょっとゆっくりめです。


「イエス」が登場

 あれ、もうひとつ赤い字がありましたね。

「イェシュア」という言葉です。

 この「イェシュア」という言葉、どこかで聞いたことがある、そういう方がいるでしょう。

 そうです。「イェシュア」は、あるいは「ヨシュア」になったり、「ジョシュア」になったり、「ホシュア」になったり、そして「イエス」になったりします。

 そう、ここに「イエス」が登場しているのです。

「え~、旧約聖書の時代ってまだイエスはいないんじゃないの」

 そういう方。さすがです。おそらくほとんどの方は、そんなことを気にせずに読み進めたはずです。

「イェシュア」というのは「救い」、あるいは「救い人」という普通名詞。イエス・キリストの「イエス」というのも固有名詞ではなく、「救い人」という普通名詞なのです。

 ちなみに「イェシュア」の前に一瞬聴こえる「ハ」は英語の「the」、定冠詞です。

 ですから「ハ・イェシュア」という音が聴こえると思います。はい。では、さっきの映像をもう一度、どうぞ~。


「シャブ」ではなく「シャアブ」

 さあ、ここまで聴くことができればあとはちょっとです。

 まずは、聴き取れていない最初の部分、行きましょうか。

「ウシュアブテン」と言ってます。これは3つの部分に分けることができます。

「ウ」・「シュアブ」・「テン(tem)」です。

 前回、お話したようにヘブライ語では、いくつかの語がくっついてしまっています。

 ついでなので意味も見ちゃいましょう。

 最初の「ウ」は、英語の「and」です。

 次は「シュアブ」。ここがメインです。

「シュアブ」は動詞。ちなみに原形ですと「シャアブ」ですが、まあ細かいことは気にせずに。「シャアブ」が「シャブ」だと急に危ない言葉になるので間違えないように。

「シャアブ」は「(水を)汲み出す」。みんなで井戸から水を汲んでいるんですね。

 水を「シャアブ」!

 最後の「テン(tem)」は、未来(you all will)形であることを現しています。英語と違って後ろにつきます。

 というわけで「ウ・シュアブ・テン(and you all will draw)」は「そして、あなた方、みんなは水を汲む」という意味になります。これらの語が全部くっついているので、英語で書くと「andyouallwilldraw」

 まあ、いまは意味はあまり気にせず「ウ・シュアブ・テン」を何度か繰り返し、もう一度、さっきの動画をご覧ください。

「一緒に歌っちゃおう」という方は、最初の「ウ・シュ」は拍の前にきます(アウフタクト)のでちょっと注意を!

 あ、何をいっているかわかんない~という人は無視して~。


「なん」「ちゃら」「かん」

 さあ、ここまでいけば、あとはちょっとです。

ウ・シュアブ・テン」「マイム」「ベサソ~ンなんちゃら・かんちゃらイェシュア

...の、この「なんちゃら・かんちゃら」の部分だけです。しかも「かんちゃら」の「ちゃら」は「イェシュア」につく冠詞「」なので...

「なんちゃら・かんハー」となるので、「なんちゃら・かん」の部分だけです。

 もう少し細かく分けると「なん」「ちゃら」「かん」ですね。

 では、ここにヘブライ語を当てはめてみると「ミマ」「アイ」「ネイ」

 はい。では、これを続けていってみましょう。

「なん」「ちゃら」「かん」/「ミマ」「アイ」「ネイ」

「なん」「ちゃら」「かん」/「ミマ」「アイ」「ネイ」

「なん」「ちゃら」「かん」/「ミマ」「アイ」「ネイ」

 3回で覚えられない人は5回でも10回でも100回でもやりましょう。

 さて、ここでもう一度、前に戻って動画(字幕付き)を観てみましょう。今度は一緒に歌えるでしょ?


書いてみましょう

 歌えるようになったら、今度は書きましょう。

 ヘブライ語はまだ二回目なので、慣れるまではひとつひとつの単語ごとに見ていきます。

 最初は「ウ・シュアブ・テン」ですね。

 では、ヘブライ語で書いてみましょう。しつこいようですが、ヘブライ語は「右」から「左」に書きます。英語などとは反対ですからご注意を!

 おや。見たことのある文字が多いですね。前回やった文字をにしてみましょう。

 おお、6文字のうち、なんと4文字は前回やっちゃいました。今回のは次のふたつだけです。

 最初の「 」。これはヘブライ語のアルファベットの一番最初。「アレフ」と読みます(あ、どこかの団体と同じ名前だ)。もともとは「牛」です。ちなみに前回もやった「 」。これは「ベート」と読みます。

 そうです。このふたつで「アレフ」・「ベート」、これがギリシャ語に入って「アルファ」・「ベータ(ヴィータ)」で、アルファベットになりますね。

 さて、この「 (アレフ)」、音としては「ア」なのですが、日本語の「あ」とはちょっと違う。でも、今回はその話はパス。

 それよりも、まずは書いてみましょう...って、これも書き順が人によって違います。
※いま小倉でこれを書いているのですが万年筆を落としてしまい、書き順のところ先が割れています...とほほ。

基本の書き順

 こんな書き順もあります。

 さて、次はこの字です(中の点は気にしないことにしましょう)。これは「T」です。

 これも活字体と手書きではずいぶん違いますね。左下の部分をちょっと出すことが大切です。では、書いてみましょう。

 「ウ・シュアブ・テン」に使われる文字はこれだけですが、「 」は前回は「サ」行でした。今回は「シャ行」ですね。上に打つ点の位置が違っています。
 左上だと「サ」、右上だと「シャ」になります。

 もう一度、「ウ・シュアブ・テン」、見てみましょうか。今度はわかるでしょう(母音記号は気にせずに)。


書いてみましょう その2

「ウシュアブテン」が終わったので、次の言葉にいきましょう。「ミマ」「アイ」「ネイ」

 ヘブライ語ではこのようになります。

 この「ミマアイネイ」、さっきは意味の説明をしませんでしたが、これも実は、いくつかの語がくっついてしまっています。が、今回は細かいことは気にせず、2つに分けてみましょう。

「ミ」と「マアイネイ」です。

「ミ」は英語の「from」、「~から」です。

「マアイネイ」、これは井戸です。

 ですから、「ミ・マアイネイ」で「井戸から」。井戸から水を汲んでいるのです。


書いてみましょう その3

 さきほどのヘブライ語、「ミ・マアイネイ」、今までにやった文字はにしてもう一度見てみます。

 この「ミ・マアイネイ」で新しい文字はひとつだけです。

「 」。う~ん。これも説明が難しい文字ですね。まあ、今回は細かいことは気にせず「ア」と発音すると覚えておいてください。

 では、書いてみましょう。

 お、よく見るともうひとつありました。にしてありますが、これです。

 なぜ赤にしてあるかというと、実はこれ、前回にやってあるのです。「ベ・サソン」の最後の文字です。あれは語尾形でしたが、途中に入る場合は、このような形になります。

 というか、これが基本の形です。

 では、これも書いてみましょう。


書いてみましょう その4

 さあ、最後のひとつです。「ハ・イエシュア」。これもまずはヘブライ語で見てみましょう。

 これも既出の文字は赤にしてみますね。

 おお、新しい文字はたったひとつしかありません。これです。

 この文字は「h」、ハ行です。このほかにもちょっと書きたいことはあるのですが、あまりに多いと混乱しちゃうので、今回はこのくらいにしましょう。

 では、この字を書いてみましょう。

 今回、新しく学んだ文字は以下の4つ(と1つ)になります。


全体の復習

 では、今回の分を全部、見てみましょう。前回にやった「マイム」と「ベサソン」の部分は赤にしてあります。しつこいようですが「右」から「左」です。


写経しましょう


 それでは写経です。聖書の部分は今回の分だけなので、この部分を写経しましょう。


*クリックすると拡大します


一緒に歌おう!

 前回の「マイム・マイム」の部分に続けて歌ってみましょう。今回の映像は普通のスピードに戻ります。

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安田登(やすだ・のぼる)

1956年千葉県銚子市生まれ。高校時代、麻雀とポーカーをきっかけに甲骨文字と中国古代哲学への関心に目覚める。高校教師をしていた25歳のときに能に出会い、鏑木岑男師に弟子入り。能楽師のワキ方として活躍するかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を東京(広尾)を中心に全国各地で開催す る。また、公認ロルファー(米国のボディワーク、ロルフィングの専門家)として各種ワークショップも開催している。著書に『能に学ぶ「和」の呼吸法』(祥伝社)、『身体感覚で「論語」を読みなおす。』(春秋社)、『異界を旅する 能  ワキという存在』(ちくま文庫)『本当はこんなに面白い「おくのほそ道」』(実業之日本社)、『あわいの力 「心の時代」の次を生きる』(ミシマ社)など多数。

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