へなちょこ古代史研究会

たかが「へなちょこ」、されど(?)「へなちょこ」。
「へなちょこと」といえども、いや、「へなちょこ」であるからこそ、古代史の研究・勉強は欠かせない。そもそも、「研究会」であるわけだし・・・。
そこで今回は、古代史の本を一冊ずつ持ち寄って、内容をみんなでシェアして、いろんな視点で古代史を学んでしまおうという座談会企画をお届けします。
連載メンバー(高瀬・ミルコ・かやはら)に加えて、最近にわかに古代史熱が高まってきたミシマも参戦。
ではさっそく、古代史座談会の始まり始まり。

(文:かやはらまさつぐ)

第13回 「へなちょこ」たちが選ぶ、<古代史>な一冊(前編)

2012.05.02更新

坂本勝監修『まんがとあらすじでわかる古事記と日本書紀』(宝島SUGOI文庫)

ミシマということで、古代史を学ぶ会の第一弾を始めます。

一同(拍手)

ミシマジャンケンで順番決めましょう。ジャンケンぽい(高瀬さん勝利)。勝った人がご指名ください。

高瀬じゃあ、ミルコさん。

第13回 「へなちょこ」たちが選ぶ、<古代史>な一冊(前編)

『まんがとあらすじでわかる古事記と日本書紀』(坂本勝監修、宝島SUGOI文庫)

ミルコはい。私のおすすめ本は、一番最近に読んだ『まんがとあらすじでわかる古事記と日本書紀』(坂本勝監修、宝島SUGOI文庫)です。古事記と日本書紀を、マンガとわかりやすい文章でまとめた本です。私は、『古事記』のことを知りたいと思っていたんですけど、何を読んでもあんまり頭に入らなくて・・・。

ミシマミシマ社の『超訳 古事記』(鎌田東二著)以外は(笑)。

ミルコそうそう、失礼しました(笑)。
『古事記』は、なんてったって、人の名前が長くて読みづらい。なかなかその世界に入れなかったんですけど、これは、こういう絵柄のマンガ(表紙カバー参照)、ライトノベルっていうのかな、そのタッチで描いてるんですよ。テイストとしては、まったく自分の趣味と遠いところの本なんですけど、これだったらわかるかも、と思って買ったら期待通りの本でした。

第13回 「へなちょこ」たちが選ぶ、<古代史>な一冊(前編)

本の構成は、テーマごとにまず「原文」があって、「現代語訳」があって、最後に「あらすじ」がある3ステップと、イラストや4コマ漫画や図解(写真参照)っていう形です。

監修の坂本勝さんは法政大学の先生で、いろいろ古代の本を書かれています。

「あらすじ」の文章は坂本先生が書かれていると思うんですけど、人物への親しみが湧く、読みやすくてわかりやすい文章なんです。読みやすさっていうのはすごく大事ですよね。

この先生は、きっと体に古代史が入っちゃってる人で、すごく鮮やかに解説してるんですよね。ぐんぐん読めた。しかも、最後に年表があるのもありがたい。

どういうふうな感じで日本ができて、天皇の血が紡がれていったのか、というのが、やっと整理がつきはじめた、そんな本でございます。

ちなみに、この本は2010年1月に出た『別冊宝島 まんがとあらすじでわかる 古事記と日本書紀』を文庫で編み直した本みたいなんですけど、私は、この本の内容のよさはもちろんなんですが、この本をつくる編集者の人ってエラいよなって思います。

高瀬いつ出たんですか?

ミルコこの文庫本は、今年(2012年)の2月21日。新刊ですよ。

高瀬古事記編纂1300年に合わせたんですね。

ミシマこういうわかりやすくつくる本って一番難しいじゃないですか。

ミルコ古代の神様が「えへへ」とか言ったりしてね。

ミシマいらんと言えばいらんものですよね(笑)。そういうのを入れる手間は大変だと思います

ミルコくだらないんですよ、マンガが。でも、これで登場人物に親しみが湧くんですよね。日本書紀と古事記の違いも書いてあるので、入門編としていいんじゃないかと。

高瀬わかるようでわからないんですよね、日本書紀と古事記の違いが、なかなか・・・。

ミルコそれを、坂本勝氏は読みやすく書いているという、そんな本でした。

ミシマ・高瀬・かやはらありがとうございます(拍手)。

かやはら辞書がわりも使えそうですよね。

ミルコどこからでも読めて、おすすめスポットも乗ってるし、取材の参考にもなるよね。

高瀬こういうのは、ありそうでないんだよな。ここまでやってるってのは。

ミルコそうそう、そう。編集の人のご苦労がしのばれるけど、これをやった人はエラい! 勝手に讃えよう、古代史研究会で。編集者の名前も書いてないけど(笑)。エラい! この人!! ぱちぱち。

じゃあ、次は隊長(高瀬さん)行きますか?

溝口睦子『アマテラスの誕生――古代王権の源流を探る』(岩波新書)

第13回 「へなちょこ」たちが選ぶ、<古代史>な一冊(前編)

『アマテラスの誕生――古代王権の源流を探る』(溝口睦子、岩波新書)

高瀬はい、じゃあやりましょう。

私は、『アマテラスの誕生――古代王権の源流を探る』(溝口睦子著、岩波新書)です。出たのは2009年ですね。著者の溝口さんは、まだご存命だとは思いますけど、1931年のお生まれでなので、かなりお年ですね。もう退官されていますが、十文字学園女子大学の教授をされていた方です。

要は、アマテラスってみんな知ってますよね、言葉としては。でも、知ってるんだけど、いったいどういう神だったかをなかなか説明できない。この、謎めいたアマテラスを、歴史の軸を縦軸にとりながら、実は、北東アジアとの関係があるんだということを解き明かしていく本です。

ミルコ北東アジアっていうと・・・?

高瀬いまの朝鮮半島から中国東北部、モンゴル、もっといくと、北方の草原地帯まで含めた地域です。
アマテラスは、皇祖神、天皇の神、国の神でもあるけれど、実は、アマテラスは最初からそうではなかったということがまず書かれています。

『日本書紀』のなかでは、まずタカミムスヒが、皇祖神として出てくるんです。アマテラスはそれに続くような形で出てきて、ふたつの神、という形になります。で、『古事記』は、アマテラスを、一応皇祖神にしてるんだけれども、それも1カ所しか出てこないらしくて、あと7カ所くらいは、タカミムスヒがやっぱり出てくる。

となると、タカミムスヒってのは一体何なんだっていう話になってきますよね。この、タカミムスヒは、もともと北方アジアからやってきたんです。

天孫降臨ってあるじゃないですか。天孫降臨っていうのは、北方アジアにもともとあった神話らしくて、それを日本が、古い時代に――『古事記』や『日本書紀』の時代も古代ですけど、そのまたもっと古代にですね――どうも取り入れているらしいんですよ。それは、渡来人がどうも運んできただろうと。高句麗、百済、新羅の三韓がありますよね。そういうところを通じて、タカミムスヒが日本に伝わってきた。それが、天皇を補佐するような役割の人たちが信奉していた神様だったらしいんです。

ミシマそうなんですか。

高瀬で、じゃあアマテラスは何だっていうと、実はもともと地方神で、別にヤマトでどうのこうのっていうわけでもなく、地方で太陽神として崇められていて、どっちかっていうと、こっちは大衆性があったわけですね。

だから、天皇の周辺では、ずっとタカミムスヒが中心で来てたんですけど、それこそいま僕が書いている蘇我を打ち倒して天智天皇が天下をとるあの時代に、白村江の戦い(663年)があるじゃないですか、唐と新羅の連合軍にやられるわけですよ、半島に行って。それで、自分たちが滅ぼされるんじゃないかと思った朝廷は、近江に都を遷していくわけですよ。国際情勢を考えなきゃいけないっていう時代に入る。

ここが一番、日本史のなかの大転換点になるわけです。まさにいまも、国際化、グローバル化の波が来てるんだけど、もう古代からあったわけですよ、すでに。

もちろんその国際化の波は白村江の前からもあるんだけど、この時代が非常に大きなポイントになってきて、そのあとに天武が、天智天皇の息子を倒して、壬申の乱(672年)で倒して天下をとる。天武が天下をとったときに、国際情勢がより厳しくなってくるなかで、政治の求心力を高めるために、神話と政治の統一を図らなきゃいけないっていうことを考え始めた。

そのときに、神様はタカミムスヒがいるけれども、実は、タカミムスヒは新羅あたりが持っているらしくて、それと同じ神様を一番上に置いては、あまり面白くない。しかも、民衆はタカミムスヒなんて神様を知らないんですよ。朝廷というか、中心部の人は信奉していた神だけど、日本中の人たちは知らない。むしろアマテラスの方が知られている。っていうんで、アマテラスを中心に持ってくるということをしたらしい。だけど、それまで信奉していたタカミムスヒを追放するわけにはいかないから、ふたつの神という形にしたっていうことのようなんです。

かやはら面白いですねぇ。

高瀬そうなんですよ。それだけじゃなくて、この本では、この説にまつわる面白いエピソードも紹介しています。

岡正雄さん(1898-1982)という民族学者の先生がいるんですが、この人が、昭和29年(1954)に、天皇にご進講をするんですよ。民俗学的に言って皇祖神はアマテラスではない、タカミムスヒが皇祖神である、と。そういうことを言ったらしいんですよ、宮内庁に呼ばれていって。そのとき、昭和天皇は、「そうか」とただ頷いて、科学者のように客観的態度で聞いていた、ということらしくて。

で、その説は、いつごろつくられたか、まとめられたかというと、昭和21年(1946)、戦後のあの焼け跡の時代に、東京の神田の駅前にあったバラックの2階建てで、この岡先生と、騎馬民族征服説の江上波夫さん(1906-2002)と石田英一郎さん(1903-1968)と、あともうひとり、八幡一郎さんという人がいて、この4人で討論・議論をしてまとめたらしいんです、3、4日、朝から夜まで議論して。

それで、日本本来の神はアマテラスじゃないと、専門家が4人集まって決めたと。そういうことはおそらく初めてのことであろうと、そういうふうなことがこの本で書かれているんです。その岡さんが、昭和29年に昭和天皇にご進講されているんです。

ミルコよく許されましたよね?

高瀬宮内庁から呼ばれてますからね。
この本(『アマテラスの誕生』)を読むと、『日本書紀』と『古事記』の関係もそうなんですけど、日本の天皇っていうのがどうやってつくられてきたのか、天皇制につながっていく神話がどういうふうにまとめられていったのかがよくわかります。それを、7世紀の後半のあの時代に、うまくまとめたわけですよね。

「天皇」という称号をつくったのも天武天皇だと言われているし、「日本」という国号は大宝律令で初めて使われた。それまではそうじゃないですよね、「天皇」という言葉も、「日本」という言葉も使われていないです。要するに、その時代に、『古事記』とか『日本書紀』を編纂して、過去に神話をさかのぼって、天皇を決めていったということなんですよね。

本からは話が逸れるんですが、たまたま、杉浦康平さんという有名なグラフィックデザイナーさんを取材していたら、あの人がすごい仕事をされていましてね。日本神話の時空構造を、ダイアグラムで絵にしたわけです。時空間を取り入れてるんですね。

タカミムスヒがいて、そこからイザナギとイザナミが出てきて、アマテラスがいて、そこから天孫降臨があって、という話を。天孫降臨は、アマテラスの孫が日向(ひむか)に降りて、その4代後に神武東征していく。こういうふうな神話構造なんですね。このダイアグラムは、天孫降臨と神武東征がセットでつくられています。

さらに余談ですが、ほかの本の知識も引っ張ってくると、どうも邪馬台国は、九州説と大和説とがあって、これがいまだに決着ついてないじゃないですか。

ミルコ新潟も・・・。

高瀬新潟、ね・・・(笑)。まぁ、でも、越前、いまの福井県から王が来て継体天皇になったと言われていますから、まあ新潟も昔から何かあった可能性は否定できませんね。って、それはまたちょっと別の話ですけど・・・。

で、邪馬台国はふたつあったっていう説があるんですよ。それは、九州から、ある事情があって、大和へ移ったんではないか、と。そうすると、これは神武東征と符号してくる可能性もあるんですよ。そういうことを言っている人たちもいます。その辺に話を発展させて読んでいくと、面白いですよね。

まぁ、いかようにも言えますのでね、古代史は、仮説を。

第13回 「へなちょこ」たちが選ぶ、<古代史>な一冊(前編)

『古代学への招待』(谷川健一、日経ビジネス人文庫)

かやはらニギハヤヒの東征が神武東征の前にあって、それが物部氏の東征だっていう話もありますよね(『古代学への招待』(谷川健一著、日経ビジネス人文庫)より)。

高瀬そうですね。実際に勢力移動があったことを、神話化したのではなかろうかという話ですね。

この本(『アマテラスの生誕』)に話を戻すと、学者の本なので、文章がしっかりしてるんですよ。変な意味の胡散臭さがない。古代史の本って胡散臭くなりがちで、それはそれで面白いんだけど、この本は、そういう意味で安心して読めて、わかりやすい。かなり勉強になりました。

ミシマ・ミルコ・かやはらありがとうございます(拍手)。

高瀬じゃあ、次はミシマさんで。

ミシマ途中までしか読めていないんですが、『日本に古代はあったのか』(井上章一著、角川選書)を選びました。平成20年(2008)の本です。

ミルコいいタイトルだね。

ミシマ古代史研究会と言いながら、「古代」ってなにか、そこをわかってないといけないんじゃないかなと。
古代っていつからいつまでを指すと思いますか?


(つづく)

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山口ミルコ、高瀬毅、萱原正嗣というフリーライター三人衆+ミシマ社京都・城陽オフィス窪田

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