今月の一冊

今回の「今月の一冊」は、いつもと趣向を変え「この夏に読むおすすめの一冊」を
メンバーそれぞれの夏の思い出とともにお届けします。
どうやら夏におすすめの一冊が一切ないメンバーが約2名いたようで、今回不参加となりました。
わたしの記憶が正しければ、たしかそのうちの1名は自ら

「新潮社の『夏の100冊』みたいに、夏のおすすめの一冊やれたらええなぁ」

と話していたはずなのですが、いつの間にか

「夏のおすすめの一冊って言われてもなぁ・・・」

と申しておりました。自分が言い出したくせに・・・。酷い話です。よくあるパターンです。
ということで気分を変えて、ミシマ社メンバー5名の夏の一冊をお届けします!

第10回 2011年7月

2011.07.06更新

『オーパ!』開高健(集英社文庫)

『オーパ!』(開高健、集英社文庫)

夏の一冊というお題で、しばらく頭を悩ませた結果、この本が思い浮かびました。あの文豪、開高健が、雑誌(たしかプレイボーイだったと思います)の取材で南米アマゾンを旅したルポルタージュです(雑誌の取材で長期間、作家と編集者とカメラマンが海外旅行できたというのは、今から考えると本当にうらやましい)。

読んだのはたしか小学校5年生ぐらいだったと思います。父親が買って、家の本棚にあったのを見つけたところ、あまりの面白さに夢中になってしまいました。表紙のピラニアの写真からして迫力満点ですが、文豪の文章がこれまたすばらしい。世界最古の魚と言われるピラルクーを塩焼きにして食ったりするところの描写が実にウマそうで、「いつか俺もピラルクーを食べに南米に行こう」と胸をときめかせたものでした(ちなみにピラニアもうまいらしいです)。

アマゾン川を進む船の上で、ハンモックに揺られて昼寝するのが最高だ、と本書にあるのですが、それもいつかかなえたい夢のひとつであります。暑い夏のぎらぎら太陽の下で読むのにぴったりの一冊です。(編集 大越裕)


『夏の葬列』山川方夫(集英社文庫)

『夏の葬列』(山川方夫、集英社文庫)

中学2年生の教科書に載っているので、きっと読んだことがある人も多いはず。私はそのときに読んで以来、何だかこの短い小説が胸に刻まれてしまい、今でも夏になると、ふと思い出してしまいます。まるでトラウマのように・・・。

戦争末期、疎開先で少年に起こったある夏の出来事。おまんじゅうをもらおうとして葬列に駆け寄った少年に艦載機の機銃掃射が迫ります。そして戦後。10数年の後、大人になったその主人公は、かつて疎開していたその海岸の小さな町を再び訪れます。そこで見た夏の葬列が、あの夏の出来事を鮮烈に呼び覚まし、そして・・・。

なんと言えばいいのでしょうか。救いがないような、あるような・・・。この話が教科書に載ったのは、戦争の悲惨さを忘れないため、でしょうか。それにしたって、このストーリー展開は中2の僕には重たかったかも・・・。主人公の心の動きが、なんともいえず生々しい印象を残します。

教科書で読んだ中2の僕は、人生の「因果」というか「業」というか、そういう、逃れられない何か恐ろしいものを感じて背筋がゾーッとしたのを記憶しています。でも、なにかそこに「希望」というか、その恐ろしいものを抱えて生きていく(生きねばならない)ことへの「力強さ」のようなものを感じて、いったいどういうことだ?
と、すこし混乱したことを覚えています。あとは、主人公の身勝手さみたいなものに、怒りを覚えたんですよね。なんか、コイツ勝手だよなあって。

今ふたたび読み直してみると、また何か少し違ったような印象を受けました。かつての私が「恐ろしい」と感じたなにかは、いくつか形は違えど、自分のなかにも「痛み」として刻まれました。それは、大人になった主人公と同じく、私も齢を重ねて大人になったことの証なのでしょうか。思い出すと痛いこと、誰にでも多かれ少なかれ、あると思います。それを抱えて生きることが、身勝手さから人を解放するのではないか、なんてことをふと思ったりもします。よくわかんないですけど。

ちなみに作者の山川方夫は、交通事故で早世。享年34だそうで今の私とおない年。このような文を書ける人がある日突然亡くなったのだということを知り、何ともいえない気分です。もっと、生きたかっただろうに・・・。(営業 渡辺佑一)


『日本国憲法』森達也(太田出版)

『日本国憲法』(森達也、太田出版)

夏の思い出ということで、思い出すのは、小学5年生から中学2年生まで暮らした、茨城県大洋村での日々です。大洋村は海沿いの村で、自宅から自転車で10分くらいの場所に海がありました。

私は中学に入ると、卓球部に入り、ヤンキーやゲーマーの友だちと、楽しい中学生活を過ごしました。茨城県の学校だからか、過去に校内が荒れた時期があったそうで、夏休み中も生徒が悪さをしないように、休みなしの部活動が義務づけられていました。毎日、めんどくさいと思いながらも、朝から部活に行き、その後、部のみんなで海に行く、というのが日課になっていました。その頃は、日本の社会がどうとか、政治がどうとか、そんなことがあることすらも知らず、今から思えば、ただひたすらに楽しい、夢のような毎日でした。

その後、私はもともと暮らしていた岡山に転校することになり、そのころの友だちとは音信不通になってしまいました。いまとなっては、その頃の思い出を語り合う友だちもおらず、あれは本当に夢だったのかな? と思うこともあります。ひとりでは、思い出も不確かなものになってしまうんだな~、と実感する今日このごろです。

というわけで、大人になった私としては、夢ばかりを追うのではなく、少し現実的にこの国のことを学びたいと思いました。夏のおすすめは森達也さんの『日本国憲法』です。「相当に気が早い現行憲法への鎮魂」という帯コピーを面白いと思い、手に取りました。たくさんの人の想いがからみあう、熱いテーマです。夏にぴったりではないでしょうか。(営業 窪田篤)


『幻獣ムベンベを追え』高野秀行(集英社文庫)

『幻獣ムベンベを追え』(高野秀行、集英社文庫)

読むと、夏の暑さのなかで汗だくになりながら遊んでいたころを思い出す本をご紹介します。

この本はエンタメノンフ(エンターテイメント・ノンフィクションの略)の旗手・高野秀行氏の処女作です。早稲田大学探検部の11人が、コンゴの奥地へ伝説の怪獣モケーレ・ムベンベを探しに行った78日間の日々が綴られています。

もう、解説で宮部みゆき氏が「今の世の中には、絶対に、こういう本が必要なんです」とおっしゃるとおりの、期待を裏切らないワクワク感がたくさん詰まった一冊です。

夏休みになったら、たまにはぜーんぶ忘れて、この学生時代の高野さんのようによくわからないことに力を注ぐ方向で、外国に行ってみてはいかがですか。少なくともわたくしは、そんな旅をしたい。(仕掛け屋 林萌)


『潮騒』三島由紀夫(新潮文庫)

『潮騒』(三島由紀夫、新潮文庫)

夏になると、いつも思い出す景色があります。
それは、おそらく中学生のときだったと思いますが、家族で旅した三島由紀夫の『潮騒』の舞台となった神島(物語のなかでは「歌島」)の風景です。

我が家は毎年夏と冬に家族旅行をしており、その年の夏、「どこに行こうか?」という話になったとき、父が「三島由紀夫の『潮騒』の舞台に行ってみたい」と言い出しました。
普段あまり本を読まない父の言葉に、少し驚きを感じつつ、海と魚の魅力に惹かれ、その年の旅の行き先となりました。

『潮騒』は、伊勢湾にある歌島という小さな島を舞台にした、若い漁師・新治と船主の娘・初江との恋の物語です。今の恋愛事情と比べると、島という閉じられた空間ゆえかもしれませんが、ふたりの恋はすんなりとは成就しませんでした。初江には、村一番の家の息子との縁談話がありましたし、新治と公に会うことは許されず、ふたりは人目を忍んで会うことしかできませんでした。嵐の日、ふたりが密会した監的哨でのシーンは印象的で、当時の私はドキドキしながら読んだのを今でも鮮明に思い出します。

この作品は、三島由紀夫のものとしては、とてもストレートで読みやすく、結末もハッピーエンドを迎えるので、個人的に大好きな一冊です。
『潮騒』は、家族旅行で訪れた神島の美しい風景と幸せな記憶とともにあるのです。(経理 亜希子)


ミシマ社夏の一冊、いかがでしたでしょうか。
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