今月の一冊

第12回 2011年8月 僕たちプロになりますプロジェクト――新書に学ぼう編

2011.08.30更新

三島では、8月の「今月の一冊」始めたいと思います。

今月の一冊2011年8月

一同よろしくお願いしま〜す。

三島突然ですが、今回は、この3カ月以内に発刊された「新書」という縛りでいきたいと思います。これまでこのコーナーに選書の縛りはなかったですよね。10年前に読んだ本、最近読んで面白かった本など、個人が思い思いに紹介していました。しかし、今回は「新書」、しかも「この3カ月以内に発売された新書」という縛りでやりたいと思います。

と言うのもなぜかといいますと、今回西村佳哲さんの本を出しましたが、そのまえがきがとても長いんですが、それに倣って今回は少し長めに前口上きをしますと、実は今回から「あの『アマチュア論。』を出したミシマ社が、みんなでプロになろうじゃないかプロジェクト」というのが始まったわけです。

い、いつの間に?

三島おっ。全然共有されてなかったという反応がありましたね(笑)。
けど、実はもうすでに始まっているのです。

「僕たちプロになりますプロジェクト by ミシマ社」
いよいよ2011年夏、たったいま、公に宣言します。

と、いきなり自らを曝すようなことをしているわけですけど、単純に「プロだったら最近出ている本くらい知ってないといけないよね」と思った次第です。それを言うのも、先日、社内で企画会議をやりましたが、他社のプロの編集者の方たちにも参加してもらいました。
わざわざ「プロ」をつけるのもおかしな話ですが、対比させる意味でいうと、プロの編集者に来てもらって、これはもう見事なものでしたよね、星野さん。

星野はい。

三島どうでした?

星野歴然とした差を感じました。

三島感じましたか。

渡辺僕と星野さんは会議に加わっていなかったので、聞こえてくる声に耳をそばだてていたのですが、まぁ、盛り上がってましたよね。転がり方が非常に。「これがプロだな」という空気を感じました。

三島うちの場合、いかにこれまで転がってなかったかということがリアルに体感できたわけですが、私も久しくプロの世界から遠くはなれていて(笑)、「あ、プロって楽しい」と思ったですよ。「いいな。パスつながる」と。

や、まぁまぁ、とにかく、ミシマ社もこういうプロの技を持っていたほうがいいと思い「ミシマ社プロ計画」を始めることにしました。
第一弾として、プロの出版人としての教養を磨くために、まずは新書を一生懸命読みましょう。ということで、長い前口上をおいて、いよいよ「今月の一冊」を始めたいと思います。じゃあいきましょうか。

ジャンケンポン。

〜〜〜


つまり、根回しが重要なのである

今月の一冊2011年8月

渡辺では、僕から行きます。今日は『思い通りにyes!と言わせる事業計画書の作り方・通し方』(長田静子、PHPビジネス新書)を持ってきました。

この本は、6月23日にPAPERWALL(ペーパーウォール) ecute品川店というオリオン書房さんがやっているオシャレな駅ナカ本屋さんで買いました。

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『思い通りにyes!と言わせる事業計画書の作り方・通し方』(長田静子、PHPビジネス新書)

実は、自分でも「なんでこの本買ったんだ?」と思うところもあるんですが、おしゃれな本屋さんでこういう実務的な内容の本がふいに目に止まってしまったんですね。あと「事業計画書の書き方」という本はたくさん出ていると思いますが「通し方」と謳っているところが気になりまして、思わず買ってしまった次第であります。

まず、帯にある「100社以上の事業計画書の策定に携わってきた著者が、事業計画書を作る・通すための"1つ上"のテクニックを明かす」という、このおばさまですね。この写真を帯に入れたところに、勝負をかけた感があるのかないのか? わからないんですけど、気になってしまいました。不思議な感じです(笑)。

三島読んでみてどうでした?

渡辺「事業計画書」というと、現実的には、経営資源とか収支計画、返済計画、利益計画といったお金や数字の吟味みたいなところから入ると思うんですが、この本はまず企画段階のアイデアを事業計画書に落としこんで実際のかたちにし、対外的にプレゼンに持って行くまでの過程を丁寧に説明してくれています。

企業で働くサラリーマンに向けて書かれていて、社内での企画実現の難しさも踏まえて「A4ワンシートでまとめて、それをもとに上司とコミュニケーションをとってブラッシュアップしなさいね」とか「プロセスを踏むことが大事ですよ」というようなことが書かれています。

帯の著者、気になりますねぇ。

渡辺そう。気になるんですよ。気になっちゃったんですよ(笑)。

星野コピーもすごい(笑)。「いますぐ使える根回し術満載」「他部署を巻き込め」とか、「同僚を通して提案しろ」とか(笑)。

渡辺企業の担当者あたりを口説く想定って感じですよね。

「苦手な上司に何度もダメ出しをされている」「対立する部署の横槍でなかなか進まない」「新たな業務が増えることを嫌う他部署に反対されている」そんな問題を解決する方法満載(笑)。

三島リアルにこの問題に答えが必要な人たちたくさんいるよね。

渡辺ええ。そんな、悩んでいる人の心にすっと入るキャッチフレーズです。タイトルといい、帯といい、これは「編集力」ですかね。
まさに、プロの仕事じゃないかと思いました。

じゃぁ、次は窪田さん。


寝られなくさせます。ある意味(笑)

(京都オフィスよりスカイプ)

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窪田僕ですか? はい。では行きます。今日はふたつ用意しました。

ひとつは、江弘毅さんの『「うまいもん屋」からの大阪論 』(NHK出版)です。
そして、もうひとつは『新・ムラ論TOKYO』(隈研吾、清野由美、集英社新書)です。

どっちもテーマが「ローカル(地元)」ですね。京都オフィスにいる私としてはローカル的なアプローチをする本がどうしても気になるこの頃です。

三島なるほど。

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『「うまいもん屋」からの大阪論 』(江弘毅、NHK出版)

窪田まず、江さんのこの一冊。帯に「江弘毅は大阪のヘミングウェイだ(食べ物描写限定ですが)――内田樹」という内田先生のコピーが入っているんですが、なんといっても濃いです。
江さんがひたすらミナミ、キタ、大阪24区、北摂、芦屋、京都、神戸という街の「うまいもん屋」について語りまくるという本です。ガイドブックでもなく、うまいもん(店)についてひたすら語りまくっています。

ポイントは、とにかく読んでるとお腹がすきます。僕は、夜寝る前に読んで、お腹が好きすぎてインスタントラーメンを食べてしまいました。眠る前だったので胃が持たれて寝られなくなっちゃいました(笑)。

三島寝られなくさせる本。

窪田寝られなくさせますね、ある意味(笑)。

三島一番ぐっときたのはどの店?

窪田第7章の神戸編に、お好み焼きについての下りが出てくるんでが、これがまたなかなか難しい。まるで哲学書を読んでるみたいで、キャッチしきれない部分があるんですよ。ちょっと読みますね。

「お好み焼き屋はやっぱり大阪。やっぱりスタンダードな豚玉が一番。大阪出身の私からすると確かにそう思う。しかし、それを地元神戸で言うと、店員からあからさまに非難を浴びる。いくら20年以上神戸に住んでいるからと入ってそれは通用しない。喧嘩売ってるのか? と言われるかも知れないけど、逆に「あんたはアホか?」と嘲笑されるかもしれない」

どこが哲学的なんですか?

窪田もうちょっと読みますね。

「お好み焼き屋はもうちょっと独自の特徴があるが、大きな括りとして大阪や神戸の下町にはそれぞれのスタイルの地元のお好み焼きがある。言うなれば、その地域ごとの郷土料理みたいなものである。それも都道府県とか市とか摂津、河内、泉といった単位よりも小さく、町の呼び名の違うところにはそれぞれのお好み焼きがあるという感じだ。お好み焼きに関して言うと、本場という名は総本山のような店があってその町寺が散らばっているというようなありかたではないのだ。だからお好み焼きは本来その地元でしか食べられないスタイルのものであり、大阪のキタでもミナミでも神戸や京都でも博多(風ラーメンは食べられるが神戸のそば飯やオウガイのお好み焼きは食べられない)そして、地元の人間は自分の町のお好み焼きにそのスタイルの本場としての並々ならぬ愛着を持っている」

三島どこが哲学的やったのかが、まだわからへん(笑)。

渡辺キャッチしきれない(笑)。

窪田普段「お好み焼きは自分とこが一番や」っていうのもここに繋がってくるのかなとか。

って、今回のプレゼンの趣旨って何でしたっけ? あってますか? これ。

三島自分の仕事と絡めて「最初にローカルな視点を持って行こう」っていうことだよね。

窪田そうですそうです。

もうひとつの方はどうでしたか?

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『新・ムラ論TOKYO』(隈研吾、清野由美、集英社新書)

窪田これもおもしろいです。まず「ムラ」って書かれているのがポイントです。昔からある「村」じゃないんですね。新しくできた「ムラ」で、その解釈は読んでほしいです。下北沢、高円寺、秋葉原、小布施という街をテーマにしていて、おもしろいです。

三島清野由美さんは『セーラが町にやってきた』(プレジデント社)という本で、セーラ・マリ・カミングスさんのことを書いていますよね。

渡辺だから小布施が入ってるんですね。

三島セーラさんは林萌の師匠にあたる人ですよ。

渡辺破壊するところがですか(笑)。

私もこの『新・東京ムラ論』書店で気になってました。

三島違うよ、タイトルが(笑)。

窪田そうなんです。『新・ムラ論TOKYO』もおすすめです。


「半端じゃなく好き」って伝わるんだなって思いました

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『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』(荒木飛呂彦、集英社新書)

三島では、次は三島が行かせてもらいます。「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦さんで『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』(集英社新書)を持ってきました。2011年6月22日第一刷。7月9日第二刷。即増刷。さすがですね。版元はもちろん「ジャンプ」を出している集英社です。

まず、なぜこれを選んだかといいますと、一般的に「映画の本は売れない」と言われるんですね。これは定説で「黒澤明以外、映画本は売れない」という人もいます。

なぜかというと、映画はビジュアルがあって成り立っているもので、本にするとなると、脚本から映像化してさらに活字の本にする、という3段階くらいステップを踏んですでにややこしいことになっているということがある(話の内容や伏線を理解できる知識が必要とされるなど)。

さらに、映画を観ている人口もそんなに多くないことがベースとしてある。
『となりのトトロ』クラスの映画ならみんなわかるけど、ちょっとマニアックな映画、例えばホラー映画になるとみんながわかるわけではない。林さん『悪魔のいけにえ(The Texas Chain Saw Massacre)』観たことある?

ないです(笑)。

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三島1974年のアメリカの映画ですね。これは名作ですよ。
ホラー映画にも『13日の金曜日』とか『ゾンビ』とかメジャーなものもあるけど、ホラー映画に限定すると、観ている人はすごく限られてくる。だから、映画に関して売れる本をつくるのは難しいんですね。

でもこの本はすごく読みやすくて、ホラー映画が好きじゃない人でも観てみたくなるように書かれています。なにより、荒木さんがホラー映画をこよなく愛していることがよく伝わってくる。

「恐怖を通して現実世界の不安からひとときの開放をもたらしてくれるのがホラー映画です。僕はこの本を通して少しでもその魅力を伝えたいですし、ホラーという表現手段を理解するきっかけにしていただければと願っています」

愛ですね(笑)。

三島こういうまえがきでぐっときて、実際読むと「死者を敬うためにはゾンビを殺せ」とか言っている。

「ゾンビ映画の中では死者を敬うどころか殺すことで生きる意味を認識するという価値の逆転を余儀なくさせる。そうしなければ自分も噛まれてゾンビの一人になってしまうという抜き差しならない状況に追い込まれてしまうわけです」

ゾンビひとつを通しても、それこそ哲学的なんだよね。

渡辺哲学的ですよね(笑)。

三島死者と生者の関係を突き詰めていて、読ませるわけですよ。
「おおっ、ゾンビって恐いだけの映画かと思ってたけど、そういうことだったのか」っていう気にさせる。

今月の一冊2011年8月

『悪魔のいけにえ(The Texas Chain Saw Massacre)』

例えば、僕の大好きな『悪魔のいけにえ(The Texas Chain Saw Massacre)』。この映画は、「『田舎に行ったら襲われた』系ホラー」という章で説明されているんだけど、そういう映画なんですよ(笑)。

ある日、男女5人のグループが、テキサスの田舎に帰郷して山小屋にこもったら、レザーフェイス(人皮でつくられた仮面を被った大男)がいた。帰郷した男女はどんどん襲われていく。レザーフェイスの武器は人骨とかでつくられている(笑)。レザーフェイスがチェーンソーでビーーーーーってどんどん切っていくっていう、ものすごい恐い映画なんですよ(笑)。

で、『悪魔のいけにえ』がなんであんなに恐いかというと、1970年代のアメリカはロックの時代だった。既存の価値観を全部ぶっつぶす、という表現の最大限に行き着いて描いたのがこの映画だったという解釈をされていて、「ほー」と唸ったんですね。

アメリカの74年という時代背景が持っていたパワーとか時代特有のカルチャーというものが全部体現されていて、単純に恐いだけじゃないということとかもわかる。

『ゾンビ』は1970年代につくられていますが、映画の中で、ゾンビがいると、女の人はひたすら逃げるんだって。それを、荒木さんは「物足りない」と書いている。「80年代だとそこでパスっとゾンビをぶった切るんだけど」って。「女の人が逃げ惑う」というパターン化されたところしかまだできてないのが70年代の限界だと書いてある。そういうことがスラリスラリと書いてあっておもしろかったです。

『悪魔のいけにえ』を始め、ホラー映画界のメジャーな作品も教養として「こういう見方ができる」ことがわかります。

どうですか? 星野さん。

星野私は本当にホラー映画が苦手で、1回か2回しか観たことないんですけど、存在が不思議(笑)。

三島たしかに、ホラー映画は存在が不思議でしょ。それを解決するために読んでみるのもいいと思う。ちなみに1回か2回は何を見たんですか?

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『サイコ』

星野ヒッチコックの『サイコ』ですかね。リメイクの方。

三島ヒッチコックはほんとに怖いよね。「きゃー」っていうシャワー室からの叫びが、寝てても聞こえてくる(笑)。

星野シャワーが嫌になりますよね(笑)。

三島この本では『セブン』とかね。みなさん知ってるような映画も抑えられているので非常にいいと思います。ここまで愛を持ってつくりきったら、逆にいうと、どんな対象でも伝わる本になるんだなと編集者的に勇気の持てる一冊でもありました。

じゃぁ、星野さん。


そう、企画は掛け算

今月の一冊2011年8月

『生物学的文明論』(本川達雄、新潮新書)

星野私は、新潮新書の本川達雄さん『生物学的文明論』を持ってきました。
この方は『ゾウの時間 ネズミの時間――サイズの生物学』の著者でもあります。

この本の「はじめに」は「環境問題、資源・エネルギーの枯渇、超高齢化社会、赤字国債の山、私たちが直面している問題は、きわめて深刻です。これらにどう向き合うべきか、誰もが考えねばなりません」という始まり方をします。
この最初の2行だけだと、問題意識としては『創発的破壊』とほぼ同じだなと。

三島おお。

星野なんですけど、その問題意識に掛けあわされているものが「生物学」というところで、米倉さんの話とまったく違っていて、それがすごくおもしろいと思いました。私のいまの仕事上の悩みは「企画が出ない」ということなんですが、この本を読んで「企画は掛けあわせればいいんだ」ということがわかりました。そう、企画は掛け算なんだなって。

今月の一冊2011年8月

この方の専門はナマコで、海の無脊椎動物の生理学や形態学を中心に研究しているそうなんですが、ナマコとかウニ、ヒトデは棘皮動物(きょくひどうぶつ)といって、すばやく硬さを変える結合組織(キャッチ結合組織)というものを持っているそうなんですね。

それで、棘皮動物であるナマコは、もともと柔らかくてぷにゅぷにゅしているんだけど、強く掴むと一度硬くなる。ところが、ある一定以上さらに強く掴むとまたぐにゃっとなって、皮をドロドロに溶かして、腸を吐き出すみたいな行為をする。で、ドロドロになって吐き出すんだけどまた生き返る(回復する)といった性質があるそうなんです。

すごい生き物なんですね(笑)。

星野そこで、例えば、それを車の素材に応用できないかなという話が出てくるわけです。ナマコのこの性質をもった素材ができれば、クラッシュする前は一旦硬くなるんだけど、実際クラッシュした後は包み込まれる、みたいなことができるんじゃないか? とか。そうやって考えると車と生物学を掛ければ、デザイン論の本もできるし、車論もできる。いっぱい企画ができる。

三島すごい。そのとおりだと思う。

今月の一冊2011年8月

恐怖の人駄魔軍団 ホラーボール 魔球駄魔ホーナス~悪徳球児時代を思い出す五厘の歴史☆~

渡辺ちょっと話の腰を折っちゃうかもしれないんですけど、昔少し流行ったんですけど、ホラーボールというものがありました。知ってます? スーパーボールとホラーを掛けあわせると、ホラーボールというのが立ち上がりまして、ホラーボールはぐにゃっとやると、そこから何かぐぇっと出てきて、それがまたホラーっぽい玩具で(笑)。

星野すごいのがつながりましたね。

渡辺あれも玩具メーカーの人がホラー映画とか観て思いついたのかな。

星野この方、シンガーソングライターの肩書きもあるんですよ。

三島作詞作曲までしてる(笑)。

2011年8月今月の一冊

『世界平和はナマコとともに』(本川達雄、阪急コミュニケーションズ)

そういえば、NHKの「人間大学」か何かで「生物は円柱形」っていう歌、歌ってましたよ。

星野たぶんその人だ。

「生物は円柱形〜 円柱形〜」ってやってました(笑)。
円柱体操とか、棘皮動物音頭とか。あぁその人なんだ。

三島『世界平和はナマコとともに』(阪急コミュニケーションズ)ですか(笑)。なるほど。いろいろ掛けあわされているわけですね。

じゃぁ、ラスト、林さん。


ん? んー mmm

今月の一冊2011年8月

『ん―日本語最後の謎に挑む』(山口謠司、新潮新書)

はい。実は発刊が3カ月以内ではなかった本なんですが・・・『ん―日本語最後の謎に挑む』(山口謠司、新潮新書)を持ってきました。

この本を書店で見かけるまで「ん」について考えたこと、ありませんでした。たまたま見かけて「何だこれは?」と思って目次を見てみたら「ん」にまつわる話があらゆる角度から論じられていて、思わず衝動買いです。しかも、おもしろい。

第二章では「『ん』の起源」が説明されているんですけど「『古事記』に「ん」はない」とか『土佐日記』にも「ん」がないとか、いろいろ語られています。「ん」ってなんだろう? と遡ってみるとやっぱり理由がある。日本語の起源や中国の漢字との関係、言語的にみた文法のあり方とか、意外と奥の深い話が書かれていて驚きました。本文で書かれているんですが、著者の山口さんの奥さんはフランス人らしいんですね。

渡辺Uh huh.

まぁ、奥さんのエピソードがあるんですけど、フランス人は「んー」が嫌いなんだそうです。喉の奥の方から鼻に抜けるような「んー」という声を生理的に受けつけないそうで、著者が悩んだりしたときに「んー」ってやってると「そういう音、出さないでくれる」なんて言われたりするそうです。

じゃぁ一方、フランス人は悩んだときどうしているかというと「mmm」とか「hmmm」で表現している。試しに著者が奥さんに向かって「んー」ではなく「ムムム」と答えてみると、嫌な顔をしないんだそうです。

渡辺深いですねぇ(笑)。

空海の話につながったりもしています。「空海が持ち帰った真言」「空海と言葉」など、「宗教的にこれを広めたい」という思想に「ん」が一役買ってるとか、いろいろな方向に実は「ん」の歴史があるということが書かれています。
ほんと、奥が深いんですよ(笑)。

渡辺この本は、著者の「書きたい」が先なのか、企画が先なのか気になりますね。「ん」で書ける著者を探そうといったって、なかなかねぇ。

三島この人は「ん」の本の前に『日本語の奇跡―「アイウエオ」と「いろは」の発明』(新潮社)という本を出してますね。

星野「アイウエオ」と「いろは」をやっていて「ん」に辿り着いた。

三島あとがきに「氏のアドバイスなしに「ん」の本はつくらなかっただろう」って書いてある(笑)。おもしろいね。

渡辺帯に「日本語最大のミステリーを解く!」と書かれていますが、結論として、日本語最大のミステリーは解かれているんですか? 

いろんな仮説として解かれつつある、という感じです。

渡辺なるほど。いいですね。
青春18きっぷで鈍行に揺られながら読みたい(笑)。

星野前に立ってる人がこの本を読んでたらけっこう気になりますね。

三島「ん?」って思うよね(笑)。
これは「企画力」でしょうね。絶対に二番煎じできないもん。真似したら格好悪いし。メインタイトルとしても一番短いタイトルだと思うな。

この本に出会ってから、アルファベットも漢字も、一字一字気になり始めました。一文字の中にもいろいろ詰まってるんですね。

渡辺新書縛りでもけっこう気になる本がでてきますね。


〜〜〜


三島ということで「プロになりますプロジェクト」で新書をやってみましたが、どうでした?

改めて新書を見直しました。新書といっても、会社ごとにいろんなカラーがある。新潮社の新潮新書には一定の何かがあるというか、一定の基準で他社のものと比べやすいジャンルかなと思いました。

三島文芸書とかになると好き嫌いになってしまうからね。

星野単行本だと、例えば生物の本だと生物の置いてある棚に行かないといけないですけど、新書コーナーに行くとひと通り全部のジャンルがあるのがいいですね。小さな本屋さんがそこにある、という感じですかね(笑)。

渡辺僕は昔から新書は好きで、新書の売り場はいつもちらっと見ちゃいます。新書コーナーは、お店の客筋が見えてくるのも、立ち寄ってしまう理由のひとつですね。各社レーベルが目指しているお客さんの構成や、読者とのキャッチボールみたいなものが如実に出るジャンルなのかしら、という感じで今後も追いかけていきたいなと思います(笑)。

雑誌の特集がおもしろくて買う、という感覚? 雑誌の人気トピックスが売れているという感じで、わかりやすいかもしれないですね。お店が見るときに。「この新書が売れるお店なんだ」とか。

渡辺あと、気軽に買えていいですよね。1000円で買えておつりが来る。

三島その気軽さもいいですよね。本をつくる側の視点で単行本との違いで言うと、新書のおもしろさは制約があるところですよね。単行本の場合、編集してても最後までどうなるかわからないところがある。文字の組み方も自由だし、カバー、表紙、帯も自由で紙も決まってない。だからいろいろなことが試せる。

一方、新書の場合は各社全部フォーマットが決まっている。本文の組み方、見出し、書体も決まっていて、タイトルと著者名の配置もほぼ決まっている。だから、見た目で違うものにする余地は、ほとんどのケースにおいてない。だからこそ企画一発勝負(編集力)のすごくシンプルな戦いができる。

2011年8月今月の一冊

だから、こんな帯になるんですね(笑)。

三島それに、新書は毎月すごい数発刊されるから、その中で生き残っているもの、僕らの目に届いているもの(買おうと思うもの)は、より多くの人に伝えるレベルがすごく高いと思うんですよ。そこは、普段から僕らもウォッチして学ぶ必要があると思います。企画もどんどん熾烈になっているし、おもしろいものがたくさん出てきています。これからは、新書もどんどん読んでいきましょう。
ということで「新書に学ぼう」プロジェクト第一弾でした。

今日もありがとうございました!

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ミシマガ編集部

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