高松こんまい通信

第2回 水曜日だけの靴磨き

2011.01.27更新

「こんまいマチ案内」編(vol.2)――大日本社員食堂のこと

第2回こんまい通信

高松の中心部を南北につなぐアーケード商店街。その一角に、ちょっぴり不思議な食堂があります。その名も「大日本社員食堂」。ここには、毎週水曜日だけ現れる靴磨き屋さんがいます。きっかけは食堂の店長・石井さんが、靴の修理屋さんをしていた広瀬さんに声をかけたことが始まりでした。

午後19時。
お店に現れた広瀬さんは、食堂奥のテーブルを持ち場にすると、テーブルの上に何種類もの靴クリームを並べ始めました。広瀬さんの靴磨き歴はかれこれ15年。なんでも中学生の頃から自分の靴を磨いていたんだとか。好きが高じて、自ら靴の修理屋を営んでいたこともあります。今は別の仕事をしながら、頼まれるとときどき自宅で修理をすることもあるそう。

「なぜ靴磨きがお好きなんですか?」

私の質問に少し間を空けて、ぽつり、ぽつりと、広瀬さんは話し始めました。
「靴ってさあ、綺麗でしょ。彫刻みたいでしょ」
形も風合いも佇まいも、履いている人がにじみ出てしまう靴。ごまかしようがなく、そのまんま丸出しになってしまいます。そういう意味では、確かに彫刻に似ているかもしれません。

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私も靴を磨いてもらいました。
かれこれ5年履いているお気に入りの革のショートブーツ。雨の日も山登りの日も、毎日のようにこの靴を履いてきたので、傷だらけのシミだらけ。でも、気に入った靴を履き倒してしまう私に、広瀬さんはこう言います。

「いい靴は一生履けるんで。手入れしないことに文句はないけどさ、一生履こうと思ったら大事にするよね」

履きっぱなしではなく、ときどきは気にかけ、手間をかけること。
そうすると、靴はどんどん愛着を増していきます。
広瀬さんの手にかかると、靴はまるで生きもののよう。
力強く磨いてもらった私の靴は、生まれ変わったようにつやつやになりました。
「あなたの靴は、実はこんなに素敵なんですよ」と広瀬さん。
この日以来、私も自分で靴磨きをするようになりました。

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食堂で靴磨き。こんまいマチの日常です。「職人が元気なマチがええ」と言う店長・石井さんの言葉通り、水曜日の夜には靴磨き屋さんの他に、占い屋さんもいます。
そんなちょっぴり不思議な光景を見守りながら、「食堂のなかが商店街みたいになったらええなあ」とますます夢を膨らませる石井さん。これからも大日本社員食堂には、小さなテーブルのお店が増えていくに違いありません。

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