高松こんまい通信

第6回 赤い暖簾のどんぐりさん

2011.03.24更新

「こんまいマチ案内」編(vol.4)――赤い暖簾のどんぐりさんのこと

第6回こんまい通信

ROOTS BOOKSのある通り、トキワ新町は「高松の台所」。それぞれのお店の前にのれんがかけられ、焼き鳥や煮物のにおいがしてくると、猫も赤ん坊も鳴き(泣き)はじめます。まるで「お母さん、ごはんまだ〜」と言っているかのよう。そうすると私のお腹も鳴きはじめるので、仕事を一段落させてマチへくり出します。事務所を出て、南へ。自転車をこいでいると、後ろから誰かの声。

「ミムラさん! アイス食べて行きまい(標準語:アイス食べて行きなさい)」。振り返ると、にこにこしながら立っていたのは、焼肉どんぐりのマスター・高橋周二さんでした。

第6回高松こんまい通信

焼肉どんぐりは、創業昭和38年。トキワ新町で2番目に長く続く飲食店です。高橋さんのお母さんの代から、このマチで焼肉屋をしています。赤い暖簾に白文字で「どんぐり」。

この暖簾の佇まいに、ついつい引き寄せられて入って来る方も少なくありません。カウンター席のみの店内に、子どもからおばあちゃんまで、年齢、性別、職業問わず高橋さんの焼肉を食べに来ます。

カップルで行っても、少年野球チームで行っても、親子で行っても。まるで高橋さんも一緒に焼肉を楽しんでいるかのような雰囲気。

「この肉おいしいですね!」というと、すかざず「ネコの肉やけんの」と冗談が飛んできます。そして、突っ込みを入れるお客さん。見知らぬ人が集まっているのに、まるで家族で焼肉を楽しんでいるかのよう。

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「夜景」高橋周二・作

そんな高橋さん、実は絵描きでもあるのです。

50年間、焼肉屋をしながら油絵を描き続けてきました。お店が終わるのが夜中の12時。そこから家に帰って、絵を描きはじめます。「筆を持ったまま、絵に向かって寝てるんですよ」とは、高橋さんの奥様談。「はよ帰って、絵を描きたいんや。気になってしょうがない」と個展前の高橋さんはそわそわと落ち着かない様子でした。

お店に用意された筆で、時々お客様の似顔絵を描くことがあります。焼肉屋をしていても、心は画家です。冗談を飛ばしながらも、人に対して、自分の心に対して、真っ直ぐ芯が通った高橋さん。その姿勢に惹かれて、人々は赤い暖簾をくぐり、高橋さんに会いに来るのです。

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