高松こんまい通信

第8回 島のごちそう

2011.04.21更新

こんにちは、小西です。

先日、男木島へ行ってきました。
昨年開催された瀬戸内国際芸術祭に参加した「ONBA FACTORY」の作品集の仕事で、男木島の長老に話を聞くのが目的です。「長老の話を聞くこと」と「島へ通うこと」。今ではすっかりこのふたつが私のライフワークになりました。少なくても週に1回はどこかの島へ。その8割くらいは長老の話がセットです(笑)(島では若い人を探す方が難しいからね)

朝8時のフェリーに乗って40分で男木島に到着。港につくと、今日は天気がいいからと、外でお話を聞くことになりました。男木島は周囲約5km、約100人が暮らす小さな島です。お店と言えば、民宿が2軒とお好み焼き屋さんが1軒、それからJAの売店が少し。もちろんコンビニなんてありません。それでも芸術祭以降、週末になるとときどき港に市が立つようになりました。小学校テントに、公民館から持ってきた会議机とパイプ椅子が客席。島のおばあちゃん自慢のちらし寿司やピーナツの炊いたん、いけすには漁師のじいちゃんが朝獲ってきたばかりの天然鯛やチヌが悠々と泳いでいます。B5サイズくらいの鯛がなんと500円! 島ならではの贅沢です。

テーブル席で話を聞き始めると、ひとり、またひとりと島の人たちが集まって来て、気がつけばインタビューはどこへやら? すっかり井戸端会議に。長老たちは、ほぼ5.1chサラウンドで口々に話をしてくれるので、聞く方はちょっぴり酸欠になりますが(苦笑)、それでもコツをつかむとちゃんと聞き分けられるようになります。

それにしても、島の長老たちはほんとうに楽しそうに昔の話をします。決して楽しい話ばかりではないだろうけど、こうして楽しく語れる生き方をしてきた人たちを私はいつもカッコイイと思うし、自分もそうなりたいなぁと思います。

この日は春のサワラ漁の話をひとしきり聞いて、さあ帰ろうと思ったら目の前をフェリーが音もなく出航するではないですか!? うっかり乗り過ごし、次のフェリーまでぽっかり2時間空いてしまいました。こういう時、まちなかで暮らしていると、あれもできた、これもできたのに・・・と"2時間のロス"で嘆いて心が急くばかりですが、島ではジタバタしてもしょうがない。いつの頃か、こういう予定外のすき間を「2時間もうけた」と思えるようになりました。
 
せっかくもうけた2時間。さてなにしよう?

第8回こんまい通信

私は、港の市でちらし寿司を買って、自販機でお茶を買って、一直線に"豊玉さん(豊玉姫神社)"を目指しました。集落の高台に立つ島の氏神さんなのですが、じつはここ、桜がとってもキレイなんですよ。

境内につくと、期待通り満開の桜が出迎えてくれます。1組、花見の先客もおられました。神社にお参りをすませて、ベンチに座って、先ほどのちらし寿司を広げたら、私もお花見です。

第8回こんまい通信

おばあちゃんのお寿司は、ちょっとかため。几帳面に細かく刻まれた、ちくわやごぼう、おこや、にんじんが入った素朴なもの。まちで売っているような華やかさはないけれど、私にはそれ以上に価値のあるお寿司です。

このお寿司をつくったおばあちゃんは、島の人も一目置く島一番の働き者。決しておしゃべりではないけど、懐の深さがにじみ出ているような方です。若い頃は、夜が明けたら朝の8時までに畑をすませて、それから男衆さんに混じって大工の手伝いをして、夕方5時に仕事が終わったらまた畑して。その上、時期によっては貝を堀って市場に出して。もちろん家のことや子どもの世話もして・・・。この小さなおばあちゃんのどこにそんな力があるんだろうと、思わず「いつ寝てたんですか?」と聞くと、「子どもたちには手に職つけさせないかんって思うたから、なにしよったか覚えとらんよ」と一言。朝から晩まで働いて、りっぱに子どもを育て上げたお母さんの味。忙しいなか、手間を惜しまず丁寧につくられたちらし寿司は、何よりのごちそうだったに違いありません。

島のごちそうと、桜と、誰にも邪魔されない時間。
玉姫さんからのごほうびだったのかもしれませんね。

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