高松こんまい通信

第9回 宵が来〜れば思い出す〜♪ 

2011.05.12更新

「こんまいマチ案内」編(vol.5)――ぎょうざ屋のこと

第9回こんまい通信

 「カウンターだけの小さなお店を持つのが夢だったんです」と話すのは、ぎょうざ屋の山中さん。

ぎょうざ屋は、その名の通りメニューは餃子だけ。あとはビールと焼酎となぜか牛乳(山中さんが好きだという理由から)。そして、カウンター8席と小上がりにちゃぶ台ひとつという店内。

「夢が叶ったんですね」と私が言うと、「ほんとはカウンター5席くらいでもいいんだけど。狭すぎるかな・・・」と山中さん。もはや採算度外視(?)とも思える山中さんの"狭さ"へのこだわり。思わず理由を聞いてみたくなりました。

「お客さんとの距離って大事だから。近すぎず、遠すぎず。それには、店の広さが影響してると思うんだよね。広さが店の空気感を左右するというか」と話しながら、一冊の雑誌をカウンターごしに見せてくれました。『料理通信』というその雑誌には、「ハレの日ではなくケの日の店」というコピーと共に、カウンターだけの小さなお店の特集が組まれています。

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「ここに載ってる東京のお店は、ほとんど行ったかなあ。特に西荻窪に好きな空気感のお店が多いんですよ。小さくて味のあるお店がいっぱいで! 四国から来たって言ったら、隣に座っとった人がいいお店を紹介してくれたり、お店の人が一緒に飲みに連れていってくれたり・・・」と幸せそうにす山中さん。

一見さんも気持ちよく入れて、常連さんに混じって、その場に溶け込むことができる。そういう空気感を醸しているお店を山中さんは、いい距離感のお店といいます。

目の前で、次々と餃子を包みながら「何軒か飲み屋をハシゴした人が、シメにふらっと寄ってくれたりすると、うれしいよね。酔っぱらったあとで本能的に"帰りたくなる"店ってあるじゃない」と山中さんは下を向いたまま目を細めて言いました。

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餃子が焼き上がると、「ちょっと待っててもらってもいいですか?」と言い、山中さんは、自転車で配達に行ってしまいました。あらら、行っちゃった。アルバイトの人が来るまでひとりで店を切り盛りしている山中さんは、電話が入ると時々こうやって配達に行ってしまうのです。でも、お客さんはまったく気にしない様子。変わらず餃子を口に運んでいます。

あのお店に行きたい、とふと思い出すとき。出てくるメニューだけでなく、お店が醸している空気感が恋しくなることがあります。当たり前のものを当たり前においしく食べさせてくれて、家でも仕事場でもない自分の時間を過ごせる場所。

約束しているわけではないけれど、のれんをくぐればいつもの顔ぶれ。

どんな小さなマチにも、そこで住む人の「ケの日の店」が灯りをともしているのだと思います。

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