高松こんまい通信

第10回 立ち入り禁止

2011.05.26更新

こんにちは、小西です。
5月に入って、島も海も山も、急に思い出したみたいに、にわかに活気づいて来ました。郊外を車で入ると、畑は一面、黄金色の小麦のじゅうたん。(うどんの郷ですものね(笑))。風も、山の匂いも、ギソギソ(ってわかります? 落ち着きがないって讃岐弁の擬態語なんですけど)してて、私もなんだかお尻がムズムズ・・・。というわけで、週の半分は島か山にいる今日この頃です。

先日、香川県の西の端、五郷地区というところに行って来ました。ROOTS BOOKSでは、昨年からここの地域調査の一環で、五郷の魅力を伝えるお手伝いをしています。

生まれも育ちも香川の私ですが、お恥ずかしながら、「五郷」という地名を知ったのは今回がはじめて。しかも数年前の市町村合併によって、現在は、地図上にも「五郷」という地名は存在しません。けれど、地元の人たちとお話ししていると、当たり前のように「五郷人」としての自負がひしひしと伝わってきます。彼らのアイデンティティは今でも「市民」ではなく「五郷人」なんですね。地図にもなく、おおよそ観光とも程遠いこの地域で、何を伝えればいいのか。そんなことを探しながら、この地域に通っています。

五郷地区は、その名の通り、5つの集落からなる山合いの地域で、あっちの峠を越える愛媛県、こっちのトンネルを抜ければ徳島県という県境エリア。特に山奥の集落は、山道を走っていて、ぽつぽつと8〜9軒ほどの屋根が見えて来たら、そこが集落という感じ。

このサボテンみたいな植物、何かわかりますか?

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答えは「ハナ松」。お正月に飾る「松飾り」に使われる松、アレです。山に生えた状態だとちょっと想像つかないですよね。石砂(いっさこ)の集落では、平地が少なく農地に適さないため、こうした枝モノを栽培して生計をたてています。

石砂の集落を見守り続けているのがこの観音堂。五郷では集落ごとに必ずこうした神社や土地の神様を祀ったお堂があって、そこが集会所の役割も果たしています。境内にはブランコや鉄棒があって、かつては子どもたちの遊び場にもなっていたんでしょうね。

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ここには、大きなもみじの木があって、地元の人はもみじ神社と呼んでいます。雨上がりのもみじはキラキラとお日様に照らされて、思わずうっとり。かわいいピンク色の種をつけていました。竹とんぼのような形をしているのは、風に乗ってヒラヒラと遠くへ飛んでいけるため。自然はかしこい!

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小さな棚田を見つけました。
まわりには人の気配も車の音もなく、聞こえてくるのは鳥と風の音だけ。
かすかに聞こえる田んぼの水の音がうれしくて、ちょっと録音。
しばし五郷の空気をお楽しみください。

今回のお目当ては、犬神神社。海老済(えびすくい)という集落の土地の神様なのですが、これまで何度探しても見つからず(苦)。当然地図にも載っていないので、地元の人の話をたよりに今日こそは! と、ちょっぴり気合いが入ります。

山道を迷うこと3回。その度に、民家のピンポンを押して場所を訊ねます(残念ながら通行人がいない!)。なんとか近くまでたどり着いたものの、入り口が見つからず立ち往生していると、さっき道を教えてくれたおばあちゃんがやってきて、側まで案内してくれることに。どうしても見つけられなかった入り口は、なんと家と家の間。もちろん看板も、そこに神社があるというそぶりもなく(苦)。ネコ道ほどの細い道を下っていくと、川を隔てた対岸に、ようやくおられました!

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「女の人は鳥居のなかへは入らんようにね」とおばあさん。

「私も海老済で生まれて育ったけど、なかへは一度も入ったことないんよ」と言われて、ちょっぴり背筋が伸びます。80歳近いおばあちゃんが守ってこられた約束事を私たちが破るわけにはいきません。鳥居の外から、静かにお参り。遠くにおられる小さな石の祠に手をあわせます。

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その昔、この地域一帯で流行り病が発生した際、事態の終息を祈って神様に犬を生け贄に捧げたとか、捧げなかったとか。そんなイワレの残る神社ですが、側に住んでいるおじいさんに聞いてみると、「そんなことはないけど、犬神さんはなかなか荒々しい神さんやからなぁ」と、やっぱり一目置いている様子。

五郷の人たちに接してきて思うのは、暮らしのなかに当たり前に神様がおられるということ。山にも田んぼにも、それぞれに人間が踏み越えてはいけない"一線"があります。それは宗教というよりも、そこで暮らすための「道理」という感じ。世の中では「限界集落」という呼び名を与えられていますが、長年五郷で暮らして来た人たちは、どんな便利な都会よりこれほど暮らしやすい所はないと、口を揃えて言います。

限界集落とは何の「限界」なのか。もしかしたら、人が暮らすための限界ではなく、自然が許容できる人間を選んでいる限界なのかも。

この結界、いったいどっちが引いているんでしょうね。

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