高松こんまい通信

第14回 定点観測 チワワのななちゃんのこと

2011.07.27更新

「こんまいマチ案内」編(vol.7)――定点観測 チワワのななちゃんのこと

こんまい高松は小さなマチです。
「おはよう」
「元気?」
「今日も暑いね」
毎日同じような言葉を交わしながら、
笑顔でマチの人とすれ違います。
同じような毎日なのに退屈しないのは、
限られたフィールドを何往復もすることで
「マチ」を見る解像度が変わるからかもしれません。



チワワのななちゃんに出会ったのは、ちょうど一年前。

番傘つきの乳母車(ななちゃん専用)に押されて散歩する光景に圧倒されたのを覚えています。それ以来、取材や買い物でマチに出るとななちゃんにばったり会うことが多くなりました。

一年間、出会う度に手持ちのカメラ(急なときは携帯カメラ)でシャッターを押し続けました。お洒落な犬や愛らしい猫は他にもいるのですが、私にとってななちゃんは特別でした。
出会う度に、変わる服装、季節にあわし乳母車のデコレーション。

散歩のはずなのに、ななちゃんが自分で歩いているところを見たことがない、というところにも心のなかで突っ込みを入れ続けていました。

ななちゃんのファションコーディネーターは、飼い主のお父さん。季節ごとの造花を調達したり、行事や気温によって服をコーディネートします。春は花、夏浴衣、秋ニット、冬はコートに身を包み、毎日マチを散歩しているななちゃん。

先日、いつものようにお父さんと散歩をするななちゃんを見つけました。
「ななちゃん〜」
とななちゃんの方にかけよると、なんと乳母車のなかでダンスをしているではありませんか! いつも乳母車のなかで大人しく座っているななちゃんが、はっはっと息をはずませて踊っているのです。
「ななちゃん、踊ってるんですか?!」
ななちゃんのお父さんに尋ねると、
「そうや、なな、さっきまでハワイアンの音楽聞きよったけん。なな、好きなんや。家ではいつも踊っじょる」
出会って一年、ななちゃんの四季のファッションは制覇したと自惚れていた私。ななちゃんは大人しくて自分で歩かないと思い込んでいた私。ガツンとパンチを食らわされたような瞬間でした。
(この日、カメラを忘れた私は自己嫌悪に陥るくらい後悔しました)

そんなある日、ななちゃんのお父さんが1枚の紙を見せてくれました。そこには、設計図が描かれています。

「これな、ななの新しい車なんや」

もうすぐ新車に乗ったななちゃんをマチ中で見かける日も近いでしょう。

毎日こんまいマチを往復する。
期待をするのではなく、ただアンテナをぴんと張って自転車をこぐ。
そうやって、みること、きくこと、動くことを続けていると、「ありえない」光景に出会う瞬間があります。「日常」という仮面をかぶっているそれは、実は結構とんでもないものを隠していたりするのです。

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