高松こんまい通信

第15回 いつものお店の魔法

2011.08.11更新

「こんまいマチ案内」編(vol.8)――中井ストアーのゼリーのこと

第14回こんまい通信

マチで唯一の映画館・ソレイユを西に進んだ路地にある中井ストアーは、創業昭和28年の八百屋さん。店先には、トマトやオレンジ、タマネギが並んでいます。けれど、こちらのお店が「八百屋」ということを知らない人は少なくありません。それもそのはず、扉を開けると目の前にゼリーの冷蔵庫がばーんと置かれ、お店の奥にはお弁当とお惣菜がずらーっと並びます。

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なかでも手作りゼリーは、一番の人気商品。高校生は中井ストアーを『ゼリー屋』と呼び、こちらでつくられているお弁当を『ゼリ弁(ゼリー屋さんのお弁当)』と名づけているというから、もはや野菜や果物は立つ瀬がありません。

もともと八百屋として営業していた中井ストアーで、現在の看板娘・中井さん姉妹のお母さんがお惣菜を売り始めたといいます。
「鯖の焼いたんとか、けんちゃん(高菜の一種を揚げなどと煮た讃岐の郷土料理)とか1皿20円で売っじょったんで」と中井さん姉妹。

当時、まだお惣菜屋が少なかった時代、八百屋でお惣菜販売は斬新だったようです。そのうち、お正月のおせちも受注するように。そこに寒天を入れ始めたのがきっかけで、20年くらい前からゼリーを販売するようになったということです。1個100(税抜)円、ボリュームたっぷりのゼリーは、今では看板メニューになりました。

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ある平日の午後、「ゴマすり、ゴマすり〜」と中井ストアーに入ってきたおじさんは、丸く色とりどりのゼリーをレジ横にどんどん積み上げていきます。「全部で30個ちょうだい〜。これ持って行ったら、打ち合わせが上手いこといくんや」。ゼリーは、いろんな場面で大活躍しているとのこと。集金に行く人や会社の女の子へのお土産に、という人は多いようです。

以前、「中井ストアーの中井さんの笑顔に癒される」というTwitterのつぶやきを見たことがあります。わかる、わかる! とついつい声に出して言いそうになった私。おいしいゼリーと中井さんのにっこり笑顔に今までどれほどの人が力をもらってきたことか。

横から声がきこえてきました。
「これな、お母さんが高校生のときにいつも食べよったゼリーなんで」
お子さん三人連れた女性が「ゼリーどれにする?」と話しています。
そこに、「元気にしとったんな?」と中井さん(姉)が声をかけます。
そして、帰り際ににっこり笑顔で「ありがとー」。

いつものお店の魔法は、
中井さんの「ありがとー」にありました。
お店に行けば、いつもその人がいてくれる。
その安心感に中井ストアーにまた行きたいと思う秘密があると思います。


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