高松こんまい通信

第16回 未来の記憶

2011.08.25更新

「こんまいマチ案内」編(vol.9)――ピーカブーヤのトッペさんのこと

第16回こんまい通信

港が近い高松のマチ。港から東へ行ったところに北浜アリーという路地裏の倉庫街が並びます。カフェや雑貨屋が並ぶ最も東に、輸入子供服専門店ピーカブーヤはあります。お店の目の前は瀬戸内海が広がり、いつもお客様で賑わうカラフルな店内。そこには、店主のトッペさんがヨーロッパやアメリカから買い付けてきた子供服や雑貨がまるでおもちゃ箱のように並んでいます。

高校卒業後すぐアメリカに渡ったトッペさん。語学学校に通いながら半年もたたないうちに、アメリカのブランド服のバイイングを始めます。日本のファッション関係のサイトに"このブランドの買い付け希望の方募集"などと自ら営業。「当時だからできたのかも」と話すトッペさんですが、需要はばっちりあったらしく、その後、学生と専属バイヤーを両立させながら5年と半年をアメリカで過しました。

この経験が、香川に帰ってきて輸入子供服専門店をするきっかけになったのです。北浜にお店がオープンしたのは、7年前。アメリカから帰国してすぐのことでした。誰に教わるわけでなく、彼自身のアンテナとセンス、そして経験で子供服のセレクトショップを続けてきました。

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ベルギーの服/トッペさん撮影

ピーカブーヤに並ぶものは、どれもトッペさんが選び、買い付けたものばかり。パリやベルギーに足を運び、デザイナーと直接交渉し、服がつくられた背景も一緒にお客様に届けています。若いカップル、おしゃれな親子、出産祝いを買いにきた女性・・・どんなに混んでいても、トッペさんの接客は変わらず丁寧です。

ピーカブーヤでプレゼントを買うと、トッペさん特製ラッピングつき! オランダ製スタンプやマスキング、海外の雑誌を使い、世界にひとつしかないギフトに仕上げてくれるのです。「中身だけでなくて包むものも贈りものだと思うから」とトッペさんは言います。

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ギフト/トッペさん撮影

ある日のピーカブーヤのブログに書かれてありました。

"お店に足を運んでくれる方にとっての、
心地よい未来の記憶の端っこにでもなれたらと願う"

ピーカブーヤのブログに、しばしば出てくる『未来の記憶』という言葉。トッペさんがどんな想いでこの言葉を使っているのか、お聞きしたいと思いました。

「言葉に対しての意識はなかったけれど、子どもの未来に対する意識はあるかもしれないね」

「大きくなってから、過去の経験と今の経験がリンクすることはない?」と私に尋ねるトッペさん。

「例えば、子どものころ、いつも家にあったデンマークの刺繍。当時は意識していなかったけれど、自分がデンマークに行ったとき、小さいときのことを思い出した。それらがリンクする感覚というか。昔あったなあ、好きだったなあ、という漠然とした気持ちでもいい。そんな風に自分のルーツとつながっていると気づくと、その記憶に力をもらうことがあると思う。今の自分を後押ししてくれたり、栄養剤みたいになってくれたり。

仕事でもなんでも、多くのものからひとつだけ選ぶというのは、誰でも勇気がいるし、覚悟のいること。選んだとしても、そこからアクションを起こすことは、億劫だったりエネルギーのいることだったりするから、できない理由を並べたりする。そんなとき、それまでのものとのつき合い方や、人とのつき合い方が大事になってくるんじゃないかな。音楽でも、映画でも、趣味でもなんでも。きっと子どものころに出会ったものは、なおさら。

だから、子供服屋として、責任をとても感じていますね」

いつかその子の今と未来がリンクするときが来るかもしれないから。
子どものころこそ、そばにあるものの影響は大きい。

「今は、子どもたちが気に入ってくれたらOK。今わかってくれなくても、大人になったときに家族の会話に出てきてくれたら! 20年後の種まきですよ」

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「トッぺさんの奥様ひろこさんの絵」
お腹に赤ちゃんがいたときに描かれたもの。電話などライフラインもばっちり。

そんなトッペさん、実は先日(8月19日)父親になったばかり。
「今までお店にきてくれる子どもを120%可愛いと思っていたけれど、やっぱり我が子はちがう存在。当り前のことなんだけど、こういうことを繰り返してこの社会が成り立っていることを凄いと思う。考えだすと宇宙の話までなっちゃうけどね」

過ぎていく毎日の中に散らばっている種が、いつか誰かの未来の記憶になればと願いながら、日々こんまいマチで小さな種を蒔き続けているトッペさん。今日も店内は、子どもたちの笑顔で咲き乱れていることと思います。


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