高松こんまい通信

第18回 こんまいマチは広かった

2011.09.22更新

「こんまいマチ案内」編(vol.11)――ジャスティンのこと

マチで生活していると、いつの間にか、知らなかった人と「顔なじみ」になることがあります。あるお店でオーナーさんを通して出会い、その後も道端ですれ違ったり、他のお店で出会う度に挨拶を交わしたりしているうちにその人の顔がインプットされてしまう。

いつ出会えるかもわからない上、交わす言葉は挨拶程度。でも、会う度にちょっと嬉しくなる、そんなことってどんなマチでもあると思います。

ジャスティンもそのひとり。自転車で、カフェで、雑貨屋で・・・いろんなところで出会ううちに「顔なじみ」になりました。自転車ですれ違う度に「ハーイ!」と一言交わすくらいですが、すれ違う回数が多いので、自然と親近感が湧いてくる存在でした。

アメリカのワイオミング州出身のジャスティン。モンタナ州の南に位置するワイオミング州は、四国が4つは入る大きさの国立イエローストーン公園があるくらい広大な土地(ちなみに、この地域はバッファローの肉を食べるそう。牛肉よりもおいしいよと、ジャスティンは言います)。旅行はあまり好きではない、という彼が知り合いを訪ねて高松に来たのは大学生のとき。約3カ月間の滞在で高松を気に入り、また来ようと決心したと言います。そして、大学を卒業し、再び高松へ。

どうして高松を選んだの? など質問攻めにしたくなる気持ちを抑えて、ひとつずつお話を聞いていくと、ジャスティンから以外な言葉が。なんと彼は高松のことを「広い」と表現したのです。アメリカ合衆国内4番目の大きさのモンタナ州で住んでいたジャスティン。そんな彼が、高松のことを「広い」と感じている?! 私のなかはハテナの嵐でした。

今まで「こんまい(小さい)」を形容詞に、まるでそれが唯一の特徴であるかのように人に話してきた私。ジャスティンの見ている「高松」がどんなものなのか、知りたくなりました。

高松は坂が少ないので、自転車で移動することが楽です。ジャスティンも14年間自転車で生活してきました。観光名所の屋島や仏生山へは、マチ中から自転車で数十分で行くことができます。少し遠くへ行くときは、ことでん(香川の鉄道会社)に乗れば、海が見え、川が見え、山が見え、コトコトと心地よく目的地までの時間を過ごすことができます。

この小さなマチに海も川も山も美味しいものも出会いもぎゅっと詰まっている。それ故に、ジャスティンは高松を「広く」感じるんだそう。こんまいからこそ広い、つまり密度が濃い。自分が一歩動く度に何かに出会う。面積ではなく、出会いと出来事の多さが、ジャスティンが高松を広く感じる理由だったようです。

普段英語の先生をしているジャスティンは、実はアーティストです。彼がつくるものは精霊や小人といった目には見えない生きもので、自然のなかに隠れている彼らの存在を目に見える形にして表現しています。

「多くの人は生活に必要ないものをすぐに捨ててしまう。教え方も、気持ちも、物も」

何を持ち、何を大事にするか。「偶然はないと思っている」と話すジャスティン。小さな出会いや出来事を切り捨てずによく見てみると、日常のなかに詰まったそれらが、次の出会いに導いてくれることを教えてくれているのかもしれません。

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