高松こんまい通信

第22回 飴色の滋味

2011.11.24更新

「こんまいマチ案内」編(vol.15)――くつわ堂総本店のこと

讃岐の3つの白「讃岐三白」って何を指すかご存知ですか? 
先にお伝えしますが、讃岐うどんではありません。
讃岐の特産である、砂糖、塩、綿の3つのことをいいます。

ところが「白」といいながら、和菓子に使われることで有名な讃岐和三盆糖は、薄茶色。
「白色になる前」という意味の白下糖からつくられます。

白下糖は、様々なミネラルを含んでおり、蜜状で、色は深い飴色をしています。
この色、香川の東讃地域周辺で採れたサトウキビでしか出せない色だとか。
同じ技法で作っても、沖縄のサトウキビを使うと黒砂糖になるとのこと。

この白下糖を使った高松名物が「瓦せんべい」です。全国あちこちでこの名前を耳にしますが、高松の瓦せんべいの特長は、香川の白下糖を使っていること。白下糖だからこそ出せる風味と食感が高松ならではなのです。

高松三越のすぐ南にある、瓦せんべいで有名な「くつわ堂総本店」は、明治初年創業。昭和43年に店舗を建て替えて以来、そのままの喫茶室は、世界的な家具デザイナー、ジョージ・ナカシマで有名な桜製作所の家具を使い、壁には猪熊弦一郎や李禹煥の作品が並ぶ、昭和のレトロさと上質さが入り交じった空間が広がっています。もともと画廊をしていたというこちらのオーナー、田村さんにマチのことをうかがいました。

第22回 高松こんまい通信 飴色の滋味

「高松のマチは生活の場ではなく、「物を買う」だけの場所になりつつある。店主の顔の見えない店舗も多くなってきました。物を買うだけならそれで足りる。けれど、物を買うときって、物の周りに感じるものが大事だと思うんですよ」

物の周り!? 
田村さんの言う「物の周り」というのは、例えば店員さんの笑顔だったり、"まけて""まけれん"の駆け引きであったり、「物を買う」ことで得られる興奮であったり。買い物は「物」を手に入れるためだけにされるものではない、ということ。画廊を経験していたからこそ語られる田村さんの「買い物」の醍醐味は、日本に限らず、ヨーロッパなど海外の街でも同じ。記憶に残るのは「物」を取り巻いているディテールに魅力があったから。そのなかでもやはり、店員さんの「笑顔」は何より心を満たしてくれるんだ、と田村さんはいいます。

余計なものが入っていない純白の砂糖は、料理の邪魔をせず、予定通りの味をつくってくれるかもしれない。けれど、一見余計なものが混じっているからこそ、思いがけない風味やこくが出て、滋味深くなるもの。灰汁は強すぎると「美味しさ」にはなりませんが、少々の渋みがスパイスになることもある。その絶妙なバランスのとれた旨味の出し方、それってマチのことにも言えるかも、と思いました。

私にとって高松のマチは、まだまだ白になる前の飴色に見えるのです。


くつわ堂総本店
高松市片原町1-2
☎ 087-821-3231
営:9:00〜20:00
休:月曜(祝日の場合は翌日)
http://www.kutsuwado.com/

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