高松こんまい通信

第25回 床屋のススメ

2012.01.12更新

「こんまいマチ案内」編(vol.18)――小松理容所のこと

第25回こんまい通信 床屋のススメ

先日、人生初の床屋へ行ってきました。今回の目的は、顔のシェービング。田んぼに囲まれた田舎で育った私にとって、床屋はテレビのなかの存在で、数年前まで女性はカットしてもらえないということも知りませんでした。床屋に行ってきたと言うと、周りの人には「なんで!?」と驚かれます。でも、私にとっては念願の(!)経験だったのです。

髪を切るのは、小さいころから美容室でした。高校生まで母親と同じ美容室へ通っていたので、「いつもの」とか「少し長めに」で通じていたのですが、大学で県外へ出たとき、自分にとって居心地のいい美容室を見つけるのに時間がかかりました。

私の場合、美容室は髪を切るだけでなく、気分のリフレッシュを兼ねて行くことが多く、ほっとできることも大事な要素のひとつです。初めての美容室では、自分の希望の髪型はもちろん、身の上話をどんどん質問されることも。雑誌を読んで1時間過ごせばいいものですが、初めての美容室では、自分のなりたい髪がきちんと伝わったかどうかという不安が募り、心はそわそわ。美容室から出るころには、髪はすっきりしているのですが、心はふぅっとため息をつきたくなるようなそんな経験をしていました。当たり前と思っていた心地よさに出会うのは、思った以上に大変だったのです。

香川に戻り、その後も美容室探しは続いていました。髪を切りたいと思って「ここ!」と入ったのがたまたま床屋で「女性はしていないのですよ」の一言にがっくりきたこともありました。なぜ無意識に床屋に惹かれるのでしょうか。それは店構えや空気感から、職人的なにおいを感じ、安心して自分の頭を任せられる何かがあったからかもしれません。

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そんな私がついに理想の床屋さんに出会いました。高松の商店街で戦前から三代続く床屋を続ける小松理容所さん。看板には"Butchering is our speciality Glue no extra charge"の文字。外国の方は、この看板を見て指を差して笑うんだそう。意味は、「私たちの得意は虎刈りです。もちろん追加料金はいただきませんよ」。つまり粋なジョークで「腕は確かですよ」ということを表現しているのです。

なかに入ると、制服を着た4人の理容師さんがひたすらハサミに集中しながらてきぱきと働いています。イスに案内されると、クロスを巻き、まずは首周りから。理容師さんが泡を立てているのを横目でみながら、しばし待ちます。泡がもこもこついた刷毛で首筋をなぞり、いよいよカミソリが登場。カミソリまけが心配だった私ですが、意外にソフトな感触で何とも心地いいのです。剃り終わると、タオルで泡を拭き取り、続いて蒸しタオル。(あったかいおしぼりで顔を拭く男性の気持ちがわかりました!)最後に顔のマッサージをして、おしまい。この快適時間がもう終わってしまうのか、と惜しみながらイスを起こされ、「終わりましたよ」の一言で目を開け、顔を触れてびっくり。自分の肌とは思えないほどのつるつるさ。まさに劇的ビフォーアフターでした。

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聞くと、ハサミやカミソリは毎日研いでいるのだとか。他にも道具は、水牛の角を使っていたりと、さすが職人。私が男性だったら、この静かな空間で水牛の角でできた櫛で髪をといてもらったり、シャッシャッといい音を出すいつもピカピカに研がれたハサミで髪を切ってもらうことができるのに。いいなあ、羨ましいなあ、と思いながら外へ出ました。小さなマチの日常を支えている職人は、こんな風にマチのあちこちに存在しているのでした。


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小松理容所
高松市片原町1-4
☎ 087-821-7824
営:8:30〜19:00
休:月、第1・3の月曜に続く火曜

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