高松こんまい通信

第28回 無限大の店舗

2012.02.23更新

「こんまいマチ案内」編(vol.21)――路上の花屋vegetataのこと

第28回 無限大の店舗
「こんまいマチ案内」編(vol.21)----路上の花屋vegetataのこと

「可愛がってやってくださいね」

とある花屋さんで、チューリップを2輪買ったときのこと。その花屋のご店主は、自分の子を嫁にやるかのように大事そうに花を手渡してくれました。vegetata(ベジタータ)という名のこちらの花屋には店舗がありません。ステージは、路上。高松の常磐街という商店街の一角に花や観葉植物を並べると、そこが彼のお店になるのです。

オープン当初は、「1日の売り上げがゼロとか300円」の日が当たり前だったと話す店主の佐野さんですが、今では主婦の人や商店街の買い物客など、常連さんも増えました。「これは何ていう木?」「あんたんとこの花、まだもっとるで」。商店街を通り過ぎる人が、次から次と佐野さんに話しかけていきます。

商店街にはアーケードがあるとはいえ、この冬の寒さ、大変じゃないですか?

「冬はそんなことないですよ。仕入れられる花の種類が多いので、むしろ楽しいくらい」。

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「こんまいマチ案内」編(vol.21)----路上の花屋vegetataのこと

店舗=ハコがないということは、いろいろ制約もあります。在庫をたくさん抱えられないし、お花の種類も「この寒さ」「この暑さ」に耐えられるものに限られます。それでも、2月のvegetataには、チューリップが約10種、桜などの枝ものから、南アフリカ産のお花、サボテン・・・まで実にバリエーション豊富。

はじめは、売れ筋のものや品揃えを考えて仕入れをしていた佐野さんですが、

「仕入れに行ったときにパーっと光ってるものが時々あるんです。今は、自分が素直にきれいと思ったものや、いいと思うものを仕入れています。そうやって選んだ花は、不思議と売れていってくれることに気がついたんですよ」。

自身で花屋を始めるまで、家具の営業をしていた佐野さんは、時には100万円単位の家具を売っていたことも。けれど、次第に高校生の頃夢見ていた花屋への想いが募り、転身を決意しました。

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「こんまいマチ案内」編(vol.21)----路上の花屋vegetataのこと

1日どれくらいお客さんが来られるんですか? 

という私の質問に、少し困ったような顔をしながら佐野さんは言いました。「通常なら、お店に入ってきた人を数えるんでしょうけど、うちはハコがないからカウントできないんですよ」と佐野さん。ということは、つまり、立ち止まっていく人たちはみんなお客さん!?

「ハコがないからこそ、できることがまだまだあると思うんですよね」。

そう話している間も、買い物ついでに立ち寄るお客さんが後を絶ちません。

「場所にこだわりはない」という佐野さん。それは、佐野さんにはっきりと"売りたいもの"があるから言えること。「家に花があるのとないのとでは、全然違いますから」。1輪の花が持つ力を信じて、丁寧に届けていく。お花を見る佐野さんのまなざしがあんまり柔らかいので、ついつい質問してしまいました。

お花、可愛いですか?

「そりゃあ、可愛いですよ」

佐野さんが自信を持ってお嫁に出せる子たちが、ここに並んでいるのです。


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「こんまいマチ案内」編(vol.21)----路上の花屋vegetataのこと

vegetata(ベジタータ)
場所:高松市常磐町ジャンヌガーデン前
営業日:月・火・水・金(時々、土・日)
営業時間:昼すぎから夜まで
※仕入れなどの関係で、休業することがあります。

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