高松こんまい通信

第31回 どこにいても、舞台は同じ

2012.04.12更新

「こんまいマチ案内」編(vol.24)――round.の慎さんのこと

第31回どこにいても、舞台は同じ 「こんまいマチ案内」編(vol.24)――round.の慎さんのこと

高松の商店街・南エリアの中心部、瓦町。ことでん瓦町駅前にあるレザーアイテムと文房具のショップround.では、用途や好みにあわせてオリジナルの革製品をオーダーすることができます。

文房具や革製品が並ぶ奥のスペースが工房になっており、そこで店主の慎さんはまるで「もぐらのように」黙々とRAGTIMEというブランド名で革製品を制作しています。制作は、お客様がいない時間帯や閉店してから行うことが多く、しんと静まり返った夜のマチに幽かに明かりが灯っている光景をよく目にします。

round.をオープンする以前は、設計事務所で図面を描いていたという慎さん。

「建築の設計事務所で働いていた頃から、機能的でデザインが優れているドイツ製の文房具を愛用していました。そういった文房具を調べたり、東京に行ったときに、まだ数少なかったお洒落な文房具専門店を見て回ったりするうちに、自分の店を持ちたいという気持ちが大きくなっていったんです。革製品は昔からつくっていました。設計図を描くところは、建築と同じ。その後も友達に頼まれてつくるうちに、自分のつくったものをお店に置くようになったんです」。

「当時働いていた設計事務所のボスはとにかく上を目指す人でした。"良いものをつくるには、良いものを見ろ"が口癖。今もボスの影響がありますね。地方で商売をしているからといって、"地方のみで通用するもの"や"地方を売りにしたもの"をつくるのではなくて、どこに出しても通用するものをつくらないとといけないと思うんです。クオリティを求めていくなかで、地元らしさは勝手に出てくるんじゃないかと思っています」

第31回どこにいても、舞台は同じ 「こんまいマチ案内」編(vol.24)――round.の慎さんのこと

オープンして5年目。革の加工技術は、独学で身につけたという慎さん。

「3年半までは、毎日のように朝帰り。工房に籠って夜中までつくっているから、友達には"もぐらみたいやなあ"ってよく言われていました。ブランドの土台をつくっていたオープンしてからの3年くらいは、技術をマスターするために他のショップを見て回ったり、気になる製品を手にとって研究し、工房で試すという作業を繰り返しました。思うようにならない日々が続き、心が折れそうになることもありましたが、今まで応援してくれた人たちのことを思うと、今ここで止めることはできない」と、夜な夜なひとりで制作を続けてきた慎さん。

「"誰かが見てくれとるはずや"と自分に言い聞かせることでなんとか続けて来れました」と話します。

夕方、会社帰りに修理やギフトの相談をしに来る人で賑わう店内。「お客様の選択肢を増やしたいんです」と、慎さんは言います。

第31回どこにいても、舞台は同じ 「こんまいマチ案内」編(vol.24)――round.の慎さんのこと

上質の革製品を欲しいと思ったとき、高級ブランド店以外の選択肢がまだまだ少ないのが現状の高松。

「選択肢が増えれば、"選ぶ力"が身につくはず。金額や知名度ではなく、自分の価値観でいいものを選ぶことができる人がどんどん増えていけばいいと思うんです」と慎さん。

「それには自分の腕をもっと磨かないといけないし、いいものを求めるお客様がいることが、いいプレッシャーになっていくと思います」。

「舞台はどこにいても一緒」。慎さんが取材中、何度も言った言葉。どこに立っていても、何をしていても、世界を見て、自分のベストを尽くしていくこと。今日もround.には、夜遅くまで明かりが灯っていることと思います。


第31回どこにいても、舞台は同じ 「こんまいマチ案内」編(vol.24)――round.の慎さんのこと

round.
住所:高松市瓦町2-7-10松本ビル1F
☎ 087-862-6169
営:12:00〜19:00
休:水・木曜日

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