高松こんまい通信

第37回 兼業編集者?

2012.07.12更新

こんにちは、小西です。

近頃、私は1年に3回、出産をする。
といっても、産むのは「人間」ではなく「本」なのだけれど(笑)。

「せとうち暮らし」の夏号が、先週ようやく下版(印刷工程に移ること)しました。来週はいよいよ店頭に並びます。本と言っても、わずか数十ページの雑誌、それでも毎回、なかなかの"産みの苦しみ"なのです。

「せとうち暮らし」は、その名の通り、せとうち(香川)の島々の暮らしを紹介するコミュニティマガジンです。現在15人ほどのメンバーでつくっているのですが、プロのライターやデザイナー、カメラマンもいれば、島の人やサラリーマン、考古学者、醤油ソムリエール、消しゴムハンコ作家・・・などなど、じつにバラエティ豊かな面々。本や雑誌をつくった経験のないメンバーが大半です。当然できあがってくる原稿は様々(というか、バラバラ?(笑))。たとえ、共通ルールを決めたところで、そもそも持っている"ものさし"が違うので、絶対同じ結果にならないのが、悩みのタネであり、面白いところでもあります。

私が出版社を始めたのは、地元に商業出版で本をつくるところがなかったから、と以前このコーナーでも書きましたが、出版社がないということは、当然本をつくるプロも少ないのです。先日東京である飲み会に参加したときのこと、名刺に「編集者」や「編プロ」という肩書きを持った人がこんなに身近に集まるものか、とプチカルチャーショックを受けました。出版社をつくらなくても本の仕事ができるんだぁ・・・。東京の人には??? かもしれないけど、出版社がない県に住む私としてはそれが現実。事実私も、出版社で働いた経験はありません。(「出版はそんな甘いもんじゃないゼ!」という諸先輩方、どうぞお許しを(苦))

「せとうち暮らし」をつくっているメンバーも、今はいろんな仕事をしていますが、もし機会があれば、編集者やライターになっていたかもしれない人たち。つまり、みんな本がつくりたくてROOTS BOOKSに集まっている仲間なのです。

本づくりの"い・ろ・は"を知らない私たちですから、当然、制作はえらいことになります(!)。何号分つくるの? ってくらい取材する人もいれば、5校、6校、7校・・・と書き直す人もいます。迷ったりわからなくなったら島と陸を往復して・・・。とても非効率な作業ですが、一方で、自分たちは、どこに暮らし、どんなルーツを持ち、どこへ行こうとしているのか。誌面づくりに奮闘しているメンバーの姿は、私には、自らの"足元"を確認しているようにも見えます。 

これだけメディアが発達している時代ですから、外の人とつながろうと思えばいつでもチャンスはあります。でも世の中が多様になればなるほど、外とつながればつながるほど、自分の"よりどころ"が大事になってくると思うのです。

例えば、自分で野菜を育ててみると、その品種の性質や、土や天候との関係、味の変化など、ひとつひとつの関係性がより深く見えてきますよね。そうすると、料理方法も変わってくるし、新しいアレンジのアイデアも広がる。同じように、自分の住んでいる土地をより深く知れば、新しい発想やアイデアも生まれやすくなるかもしれない。そのためのきっかけとして、兼業農家ならぬ兼業ライターや兼業編集者が活動する場があってもいいのかな。もちろん、中味が美味しくなければダメですが(苦笑)。

小さな出版社を立ち上げて2年。手探りの毎日のなかで、"地"出版社として何ができるのか、最近そんなことを考えています。


●夏のオススメ島情報

カタマランヨットでサンセットクルージング
瀬戸内海もいよいよ夏本番!特に夏の夕焼けはほんとうにきれいです。
ただ風に吹かれているだけで気持ちいいし、船前方のネットに寝転がって海を真近に感じたり、もちろん片手にビールがあれば言うことナシ! 
一度乗ると、やみつきになります。

○ 風向 http://www.foucault.co.jp/


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日本で一番小さな県、香川県の高松市にある出版社。
本は、考え方や生き方の「ものさし」をつくるものだから。
本という媒体を通して、借り物ではない自分たち(香川)のものさしをつくって行きたいと思います。

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