高松こんまい通信

第42回 島のロバート・デ・ニーロたち?!

2012.09.27更新

こんにちは、コニシです。
朝夕、すっかり涼しくなりましたね。
9月に入り、秋の気配が近づき始めると、瀬戸内の島々は、ザワザワ、ソワソワ、なんとなく落ち着かない日々が続きます。
そう、祭りの季節!
10月の声を聞くと、あちこちで一斉に祭りの声があがります。そんなわけで、ROOTS BOOKSでは、毎週末のように島から島へと祭りを追いかける日々が続きます。

そんななかでも、私にとって特別なお祭りが、小豆島に400年以上伝わる「中山農村歌舞伎」です。
小豆島は、瀬戸内海で淡路島に次いで2番目に大きな島で、オリーブや、そうめん、お醤油づくりなど、美味しい産業に恵まれた島。また人口3万人に対し、年間100万人が訪れる観光の島でもあり、ここ数年は島へ移り住む移住者も増えています。

そんな、香川の島々のなかでは"大都会"な小豆島ですが、農村歌舞伎が最も盛んだった明治・大正の頃には、島全体で歌舞伎舞台が30以上、役者が600~700人もいたというから驚きです。小豆島の歌舞伎は、役者はもちろん、義太夫、舞台方、衣裳方、化粧師など、すべてを地元の人たちが担い、氏神様に捧げる奉納歌舞伎です。現存するのは中山と肥土山の2カ所のみになってしまいましたが、江戸時代から変わらぬ庶民の娯楽としての歌舞伎の姿が、今も大切に受け継がれています。

じつは中山地区は、私が島で初めてお世話になった地域。この農村歌舞伎の取材がきっかけでした。話を聞かせてくれたのは、「4代続く女形の家系」という長老。芝居の話が盛り上がってくると、突然、歌舞伎のセリフが飛び出したり、自然と手足が動いて芝居の型をやってみせてくれたり、そのたたずまいは役者そのもの。役者魂はプロにだった負けません!!

40年ほど前までは、農閑期になると、みんな大根や野菜を持って稽古場に集まり、交代で食事をつくりながら、朝の10時から夜中の12時まで稽古に没頭したと言います。今ではサラリーマンが増えたので、昔のようには稽古ができなくなったと長老たちが嘆きますが、それでも、さっきまでどこにでもいそうな島のおじさんやお兄さんたちが、見事なセリフ回しで役者に変身する姿は、何度見ても、やっぱりカルチャーショックです(笑)。

歌舞伎当日は、午後4時頃から、地区中の老若何女が、弁当やお酒を携えて桟敷に集まってきます。オレンジ色の夕焼け空はやがて濃紺の星空に変わり、まさに自然の舞台照明。夜風に吹かれ、ほろ酔い加減の観客からは、おひねりに混じって時折、ヤジが飛んでくるのもご愛嬌。自然のなかで役者と観客が一体となって楽しむ農村歌舞伎。こうした観劇が午後9時頃まで続くのです。

芝居が終わると、いつも何とも言えない幸福感に満たされます。今年も無事に歌舞伎が奉納できた。それは、その集落が今年も安泰に過ごせた証。その幸せを神様と一緒に祝う、豊かな時間なのです。


★ 中山農村歌舞伎
今年も、歌舞伎の季節がやってきます。お近くに来られる機会があれば、ぜひ一度ご覧になってみませんか?
開催日/10月7日(土)17時〜
場所/小豆島中山農村歌舞伎舞台にて

※観劇をご希望の方へ
この農村歌舞伎は、地区の人たちが奉納行事として行っているもので、観光客仕様にはなっていません。あくまで主役は地元の人たち。マナーを守って楽しんで下さいね。


第42回 島のロバート・デ・ニーロたち?!
第42回 島のロバート・デ・ニーロたち?!
歌舞伎の話を聞かせてくれた保存会長の矢田さん。私の島の先生です。

第42回 島のロバート・デ・ニーロたち?!
背景の桜は、舞台方の長老が何カ月かけてつくった力作。桜の花は、一枚一枚ティッシュペーパーでつくられています。

第42回 島のロバート・デ・ニーロたち?!
桟敷席は階段状になっていて、一番高いところに神社のお社が祀ってあります。神様と一緒に芝居を楽しむ配置になっています。

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

ROOTS BOOKSルーツブックス

日本で一番小さな県、香川県の高松市にある出版社。
本は、考え方や生き方の「ものさし」をつくるものだから。
本という媒体を通して、借り物ではない自分たち(香川)のものさしをつくって行きたいと思います。

ROOTS BOOKS vol.1
せとうち暮らし

バックナンバー