高松こんまい通信

第46回 わたしたちの30年後

2012.11.22更新

こんにちは、小西です。
先週から、牛島、高見島、女木島と、香川の中でも特に小さな島々を歩いてきました。牛島は人口12人、高見島は人口43人、女木島は人口192人。なかでも高見島は、来年開催される「瀬戸内国際芸術祭2013」で新たに開催地に加わった島。高松でも「高見島ってどんなとこ?」と聞かれることが多くなりました。

こんまい通信 わたしたちの30年後

かつては、山頂まで段々畑で覆われていたという高見島

高松から車で西へ約1時間。多度津港から船で30分ほどで高見島に到着です。島内を歩くと、人よりもネコに会う方が多いくらい静まり返っていますが、昭和35年頃までは、除虫菊の栽培が盛んで、5月になると山のてっぺんまで真っ白な段々畑に覆われたと言います。しかし、その光景も今となって島の人の思い出話から想像するしかありません。

高見島のある長老のお宅で、お話を聞いていた時のこと。
70代のその長老は、物心ついた頃から船に乗っていたという生粋の漁師さん。「島では食えない」からと、学校を出ると島外の水産会社に出稼ぎに行き、19歳の時に、島で3台目の白黒テレビを担いで帰ってきたと言います。大卒の初任給が7000円の時代に、14万円のテレビを買ってきたというのだから、どれほど働いたのか、"戦後"を知らない世代の私には想像すら及びません。

ときどき、AKB48やワイドショーネタも混じえながら、ひとつ、またひとつと島の古い資料を取り出しては、長老が見てきた半世紀以上の島の変遷を話してくれました。お陰で、お昼前には、貴重な資料が目の前にずらり。大学の研究室がまとめた報告書や、古い観光パンフレット、地元の市報や小さな新聞記事まで・・・。丁寧に集められた資料は、どれもその時代の高見島を克明に記録しています。そして資料の列の一番端っこに並んだ「せとうち暮らし(=弊社で発行している香川の島の雑誌)」を見て、長老がぽそり。

「これは2〜3年たったらゴミになるで」。

ドキッとしましたが、私は否定できませんでした。ずらりと並んだ資料を前に、「島の何を見よんや」と問いかけられたように思えたから。

「今の島の平均年齢は80歳近いやろ。あと5年したら、80歳のもんは85歳に、90歳のもんは95歳になる。日本中やって、今までと同じとは限らんで。わしらの50年分を、自分らはこれから20年くらいで体験するんちゃうんかい」。

たとえば高見島の場合、最盛期の人口が1000人以上だったことを考えると、現在はそのわずか4%余り。もし自分の暮らすまちの人口が4%になったら? たしかに今と同じというわけにはいかないけれど、わたしたちの数十年先が現実化している小さな島の人たちを見ていると、ニュースなどで報じられる重苦しい将来像とは異なる姿が見えてきます。自分で"生きる術"を身につけていれば、モノに埋もれた今よりも、むしろ人間らしい暮らしと言えるかもしれない。できることが限られると、やるべきこともシンプルになる。それは、まさにわたしたちの未来のお手本にも思えるのです。

目の前の島の姿を、どうとらえるのか。
長老は、目先の楽しい話ばかりじゃなくて、もっと時代を見ろと言いたかったのか、あるいは、瀬戸内の足跡が消える前にもっと記録に残るものをつくれと言いたかったのか。
あの言葉は、体ひとつで人生を渡ってきた先輩からの大いなるエールだと思っています。

こんまい通信 わたしたちの30年後

島の山頂にある山の神様。急な山道を小一時間歩いて、ようやく鳥居が見えました。元気なわたしたちでさえ息が上がる悪路。年々、参拝できる島の人も減ってきているそうです。あと何年祀ってもらえるか。崩れかかった鳥居の奥には小さな祠が静かに座しておられました。

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