高松こんまい通信

第49回 ワカメとアワビ

2013.01.24更新

「ワカメじゃなくて、アワビをとってきなさい」

代表小西が(私、今井に)しばしば言う言葉です。
ちょっと潜れば、すぐにとれる「ワカメ」ではなく、簡単にはとれないけれど、どうせとるなら自分にしかとれない「アワビ」をとってこよう、という意味です。もちろん実際の漁のことではなく、取材にせよ、原稿にせよ、その仕事が「ワカメ」なのか「アワビ」なのか。仕事全般におけるひとつの「基準」のこと。
時には、「ワカメ」も美味しいからいいじゃん! と開き直りたくなることもありますし、「アワビ」が見えなくて、とることをはじめから諦めてしまうこともあります。

「アワビをとろうとしている人は、他の人からもわかるのよ」とそんな私に小西のもう一声。
「アワビ」がはじめからとれるわけではないし、とれるかどうかもわからない。でも、「アワビ」をとろうとしている人は、周りの人が気づいて、(例えていうなら)漁の仕方やよくとれる漁場の方向を教えてくれるかもしれない。でも、教えてもらったからと言って、「アワビ」がとれる保障はどこにもありません。息切れ(〆切切れ)して、ついつい「ワカメ」を掴んでしまう私の手・・・。

「ワカメ」を掴んでとりあえずのお腹は満たされたものの、今季の「アワビ」の味を知らないまま、次の季節がやってきました。そしてまた同じ声。

「ワカメじゃなくて、アワビをとってきなさい」

「ワカメ」をとることに慣れてしまっては、「アワビ」の味は知らないまま。自分のお腹を満たすためなら、「ワカメ」でもいいかもしれません。でも、人に食べてもらう(伝える)立場なら、誰でもとれる「ワカメ」では満足してもらえない。


私たちが通う島には、それぞれ漁の達人がいます。「魚は買わんでええ! 自分でとったらええんや」がみなさんの口癖。日々、海へ出て蓄積された脳内マップと、自分の手を動かして魚をとってきた技術、そしてその日の波や天候を読む勘とが合わさり、美味しい魚をふるまってくれます。その人たち(けしてプロの漁師さんばかりではありません)の話を聞いていると、とにかくエネルギッシュ。

「漁や釣りの醍醐味は、『これだ!』と思うものがとれた瞬間」
「海へ出るのが楽しみで、毎日冷蔵庫に入りきらんくらいとってくるけん、嫁さんに止められたこともあるわ」
「よっけ(たくさん)とれたら、近所の人に配っていくんや。ハハハ!」


「ワカメじゃなくて、アワビをとってきなさい」という言葉は、「アワビ」をとることにこだわりなさい、という意味だけではけしてないような気がします。「自分が本当に食べたいもの」を、海に思い切り潜ってとってきなさい、ということ。ただただ今日のお腹を満たすためだけでなく、とるまでの過程や美味しさを誰かとわかち合うことも「ワカメ」ではなく「アワビ」を目指すからこそできることなのかもしれません。


【おまけ】

自分たちでとってきたもの、自分たちでつくったものを誰かと一緒に食べる幸せ。
香川県の豊島で民泊を体験したときの写真をご紹介します。
民泊は、料理を島の方と一緒につくるのが特徴です。

第49回 ワカメとアワビ

とれたてワカメ。もちろん、おいしい

第49回 ワカメとアワビ

アワビの刺身

第49回 ワカメとアワビ

味噌は、自家製

第49回 ワカメとアワビ

民泊初日の夕ごはん

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