究極の文字をめざして

第7回 かわいいから許す/オリヤー文字

2013.10.03更新

 前回、「インド棒」(シローレーカー)を取り払ったグジャラーティー文字の話をしましたが、そこまでラディカルではないにしろ、みなこのインド棒の扱いにはそれなりに困っているようで、長いインドの歴史の中で、いろいろな形に変化していきました。
 その中の一つが、インドのオリッサ州を中心に使われる「オリヤー文字」です。
 オリッサ州はインド東部、ベンガル州の南西に位置しています。
 正直ちょっと地味なところですが、世界遺産のスーリヤ寺院や、ブヴァネーシュヴァルという長ったらしい州都の名前で(一部好事家の間で)有名です。

 字面だけ見ると、インド棒どころかすべての要素を「オリャー」と投げ飛ばしてしまいそうな文字ですが、実際にやったのは極めて温和なことでした。
 それは、このインド棒をかわいらしく丸めてしまう、ということ。
究極の文字
 見てくださいこのかわいらしさ。
 お前は女子高生か! というくらいの丸めっぷりです。

 あの、「ブヴァネーシュヴァル」という長ったらしい州都の名前すら、
究極の文字
 こんなにかわいく大変身。

 以前紹介したスリランカのシンハラ文字もコロコロしていましたが、それ以上のコロコロっぷり。
 ここまでコロコロしているのは厚木シロコロホルモンかオリヤー文字くらいでしょう。

 見ての通り、文字の上部がクリリンの頭のようにクリクリしていますが、これが例のインド棒のなれの果てです。
 いくつかの文字の上についている丸い傘のようなものも丸まっこさを強調していますが、これは母音の「i」を表しています。

 なかでも私が一押しの文字がこれ。
究極の文字
 パンが二つ並んでいるようなかわいらしさ。ちなみに「ニャ」と発音するところもかわいさポイントアップ。
 この文字を一文字送るだけで、「おなかすいたから、パン屋さん寄ってこうニャ」なんてメッセージが伝わりそうです。

 オリヤー語フォントはまだ、携帯やスマホなどには標準装備されていませんが、いずれ使えるようになった場合、女子高生を中心に爆発的な人気を博すことが予想されます。
 それを見越して今から、オリヤー語を勉強しておく、というのも一興です。
 そして、女子高生が使っているのを横から、「いや、その文字の発音は本当は○○でだな」などと口を挟みましょう。確実に嫌われます。

 インド棒の意味は、単語ごとの切れ目を明確にすることでした。
 そういう意味ではこのオリッサ語においては、まったくその機能が果たされていないわけで、ある意味本末転倒。だったら残すな、とすら言いたくなります。
 でもまぁ、かわいいから許す。
 そんな文字です。

究極の文字の条件
若者受けのためには「かわいさ」も視野に入れるべき

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松樟太郎(まつ・くすたろう)

「1975年、「ザ・ピーナッツ」解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出たのち、生来の文字好き・活字好きが嵩じ出版社に入社。ロシアとは1ミリも関係のないビジネス書を主に手がける。現在は、ロシアのロの字も出てこないビジネススキル雑誌の編集長を務めつつ、ロシア発のすごいスキルがないかと非生産的なリサーチを続けている。そろばん3級。TOEIC受験経験なし。シリーズ「コーヒーと一冊」に初の単著『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)がある。

声に出して読みづらいロシア人

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