究極の文字をめざして

第9回 オリンピックな文字/グルジア文字

2013.12.09更新

 そろそろソチオリンピックが始まりますね。
 学生時代からロシア語をやってきた私としては、「やっとロシアの時代が来た」という感じですが、あんまり時間が経ちすぎたせいですでにロシア語をほぼ忘れているという罠に陥っています。
 あと10年早くやってほしかった......。

 ただ、「ソチ」という地名を見て、「なんかロシアっぽくない」と思った人も多いのではないでしょうか?
 ロシアの地名と言えば、「なんとかブルグ」とか「なんとかスク」とか、「なんとかゴロド」とか、重苦しくかつ長ったらしいものばかりを思い浮かべますが、それとはまったく違います。
 実はこの地は長らくグルジア人の地域で、ソチという地名もグルジア語と同じコーカサス系の言語を話すアブハズ語などが語源のようです。

 というわけで今回取り上げるのはロシア文字ではなく、「グルジア文字」。これがなかなかかっこいいのです。
「ソチ」は、

となります。
「グルジア」は、

 「サカルトヴェロ」という、グルジアのグの字も出てきません。
 上向きの丸い曲線が多いせいか、全体にリズミカルに、なんというか踊っているような感じです。
 ギリシャ文字から派生したとされており、仕組みはラテンアルファベットと同じ。
親しみやすくもエキゾチックな文字なのです。

 若いころ、このグルジア文字をどうしても習得したくて、5000円もする入門書を購入したことがあります。
 ところが、この本がちょっと斜め上を行っており、「グルジア語は古代シュメール語の末裔である」ということが延々と書かれているのです。
 会話例などはほぼ皆無。しかも、グルジア文字の例として地下鉄の駅名の看板の写真が載っているのですが、この写真が上下逆さまに掲載されている始末。
 斜め上を行く著者に対し、編集者もやる気が出なかったんだろうなぁと同情もしましたが、なんにせよ高い買い物でした。

 ちなみにグルジアとロシアは非常に仲が悪いのですが、今回のソチオリンピックには選手団を派遣することになったとのこと。
 オリンピックは平和の祭典、喜ばしいことだと思います。
 ということでオリンピックを記念して、勝手にグルジア文字でオリンピックを表現します。

作品1
スピードスケート(「ph」の文字)

作品2 三回転半ジャンプ(「ei」の文字)

作品3 ボブスレー(「l」の文字)

 似ているかどうかはともかく、こうした試みができるというグラフィカルな文字が、グルジア文字なのです。
 ソチオリンピックの際にはぜひ、すぐ近くの隣国、グルジアにも思いを馳せてもらいたいと思います。

究極の文字の条件
なるべく逆さまに掲載されないようなフォルムであること

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

松樟太郎(まつ・くすたろう)

「1975年、「ザ・ピーナッツ」解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出たのち、生来の文字好き・活字好きが嵩じ出版社に入社。ロシアとは1ミリも関係のないビジネス書を主に手がける。現在は、ロシアのロの字も出てこないビジネススキル雑誌の編集長を務めつつ、ロシア発のすごいスキルがないかと非生産的なリサーチを続けている。そろばん3級。TOEIC受験経験なし。シリーズ「コーヒーと一冊」に初の単著『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)がある。

声に出して読みづらいロシア人

バックナンバー