究極の文字をめざして

第23回 偽古代文字を作ろう/ハイリア文字

2015.02.09更新

「文字を作りたい」というゆがんだ情熱を持つ人は、古くから数多くいたようです。
『指輪物語』のトールキンはキアス文字というエルフが作った文字を創作しましたし、『スター・トレック』にもクリンゴン語という言語とクリンゴン文字という文字が出てきます。
『魔法少女まどか☆マギカ』に出てくる「魔女文字」などは芸術的にも優れていて、あの文字が出てくるシーンを見てDVD購入を決断したくらいです。

 さて、これら多くの創作文字に共通するのは「ちょっと古めの、ミステリアスなイメージ」を出そうとしていることです。
 その点で、私が最大の傑作だと思っている文字があります。
 それがゲーム『ゼルダの伝説 風のタクト』に出てくる「ハイリア文字」です。

 とりあえず、ご覧ください。
 素朴で、かつ謎めいた雰囲気の文字です。



 ちなみにこの5文字ですが、「アイウエオ」と読みます。

 ......はい、ご想像の通りです。
 新しい文字といっても別に複雑な体系を作ったわけではなく、カタカナを単にそれっぽくしただけなのです。

 他の文字も、ご覧のとおり。
 その気になればちゃんと読めるくらいの難易度で、絶妙に古代文字化してあります。
 ちなみに濁点は以下のように、上部の二本の線で表記されます。

 まぁ手抜きと言えばこれ以上の手抜きもないですが、カタカナをこれほど見事に古代文字っぽくした例を、私はほかに知りません。

『ゼルダの伝説』は言わずと知れた名作ゲーム。
 主人公「リンク」が、ことあるごとにさらわれるヒロイン・ゼルダ姫を助けるために旅に出るというアクションRPGです。
 この『風のタクト』もそのシリーズの一作で、ヨットを操ってあちこちの島を訪ねるのですが、その島々の看板がこのハイリア文字で書かれているのです。
 このギミックがゲームの良い味付けになっており、しかも、ちょっとコツを覚えればすぐ読めるようになります。
 そういう意味で、「普通の人は読めないルーン文字で看板を表記する」という『ウルティマⅤ』のとち狂いっぷりとは大きく異なります。さすが任天堂。

 さて、この文字から、「偽古代文字を作るために必要な要素」を抜き出してみましょう。

・くさびっぽくすると、古代文字らしくなる
・点を打つと、古代文字っぽくなる
・曲線を使わないと、古代文字っぽくなる

 以上を考えると、古代文字のイメージというのは古代メソポタミアの「楔形文字」に多くを負っていることがわかります。
 鋭角的なもので削って文字を刻みつける、というのが、古代文字っぽくするポイントですね。
 そういえば『天空の城ラピュタ』に出てくるラピュタの文字も、楔形文字でした。

 以上を踏まえて、「三島」を古代文字化してみました(製作時間1分)。

 古代文字というより、初めて漢字を書いた幼稚園児の字にしか思えませんが、ともあれ、「古代文字っぽくしたい」という酔狂なニーズをお持ちの方は、ぜひ参考にしていただければと思います。


究極の文字の条件
誰でも読めるうえで古代っぽくする

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松樟太郎(まつ・くすたろう)

「1975年、「ザ・ピーナッツ」解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出たのち、生来の文字好き・活字好きが嵩じ出版社に入社。ロシアとは1ミリも関係のないビジネス書を主に手がける。現在は、ロシアのロの字も出てこないビジネススキル雑誌の編集長を務めつつ、ロシア発のすごいスキルがないかと非生産的なリサーチを続けている。そろばん3級。TOEIC受験経験なし。シリーズ「コーヒーと一冊」に初の単著『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)がある。

声に出して読みづらいロシア人

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