究極の文字をめざして

第41回 モアイを出せモアイを/ロンゴロンゴ文字

2016.10.05更新

 「ロンゴロンゴ文字」という文字をご存知でしょうか。

――子曰、君子和而不同。 小人同而不和?

 ええ、それは論語ですね。論語論語文字です。
ていうか、漢字ですね。

――「あ」を表す「ᐊ」の文字を90度右に回転させて「ᐃ」になると「い」と読み、それ をさらに回転させて「ᐅ」になると「お」、「ᐁ」になると「え」を表すというように、文字を回転させることで異なる母音を示すことで有名な「カナダ先住民文字」?

 マニアックな文字知ってますね。いえ、違います。
それは「ゴロンゴロン文字」ですね。

――1980年代の日米における、中曽根康弘首相とレーガン米大統領との緊密な関係のこと?

 それは「ロン・ヤス関係」ですね。もはやロンしか合ってませんし、そもそも文字ではありません。

 さて、そんな茶番を経て今回紹介したいのは、ロンゴロンゴ文字。
 モアイで有名なイースター島の文字です。
 こんな感じです。

 なんというか全体に人というか、トカゲっぽい文字が目立つと思います。
 多いんだろうか、トカゲ。

 ただこの文字、実はいまだに解読されていない「謎の文字」なのです。

 この文字が記録に現れたのは1860年代のことですが、当時、イースター島の人口は外来者の侵略や彼らからもたらされた疫病などで激減。文字を読める人がほとんど残っていなかった、といいます。
 また、現存する資料が少ないうえ、形だけ真似をした偽物が多数現れたりしたことも、解読の困難さを増しているようです。

 というより、「そもそも文字なのか」すらわかっていません。
 理由の一つは、イースター島が西洋人に「発見」された直後には、この文字のことが誰の記録にも出てこないのに、1860年代になって急に現れたこと。
 西洋人が文字を使っているのを見て、なんとなく形を真似してみただけでは、という説もあるのです。

 私もその説に賛同します。
 その理由は、「モアイっぽい文字がないから」。
 120ほどの文字が確認されているようですが、「これ、明らかにモアイじゃね?」という文字は見つかっていないようなのです。

 いきなりバカなことを言い出したと思うかもしれませんが、本気です。
 だってイースター島と言ったらモアイですよ。
 イースター島の文字にモアイっぽい文字がないなんて、日本の文字にサムライや忍者っぽい文字がないようなもの。
......うん、ないですね。
 前言撤回。これ、ちゃんとした文字だと思います。

 現実には、西洋人と接触してたった100年でしっかりした文字体系を作るのはかなり難しいかもしれません。
 文字というより、たとえば儀式の流れを絵文字化して備忘録にするといったような「文字の前段階」だった可能性もあります。

 だとしても、このまま歴史を重ねていけば、ちゃんとした文字体系を作り上げていたかもしれません。そのとき、イースター島の人々は「モアイ」をどのような文字で表現したのでしょうか。想像は尽きません。

 究極の文字の条件:その言語のシンボルは文字化しておきたいところ


お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

松樟太郎(まつ・くすたろう)

「1975年、「ザ・ピーナッツ」解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出たのち、生来の文字好き・活字好きが嵩じ出版社に入社。ロシアとは1ミリも関係のないビジネス書を主に手がける。現在は、ロシアのロの字も出てこないビジネススキル雑誌の編集長を務めつつ、ロシア発のすごいスキルがないかと非生産的なリサーチを続けている。そろばん3級。TOEIC受験経験なし。シリーズ「コーヒーと一冊」に初の単著『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)がある。

声に出して読みづらいロシア人

バックナンバー