究極の文字をめざして

第43回 トリ情報の流出/漢字

2017.03.04更新

 最近、ピースサインをして撮った写真をSNSに載せる危険性を指摘するニュースが流れました。
 最新の技術だと、写真からでも指紋を読み取ることが可能だそうで、指紋認証などに悪用される可能性があるというのです。
 つまり、ピースよりも中指を突き出すあのポーズのほうが平和的というわけで、いやはや、ファッ〇ンな時代になったものです。

 そんなニュースを聞きながら思い出した人がいます。
 中国の蒼頡(そうけつ)さんという人物です。
 といっても、数千年前の人ですが。

 実はこの人、漢字を「発明」した人物として知られています。

 あるとき彼が砂浜を歩いていると、そこに鳥の足跡がくっきりと残っていた。
 足跡はそれぞれ特徴があるため、どんな鳥がいたかが一目瞭然。
 これを見て、「あれ、これを応用すれば記号でモノが表せるんじゃね?」と思いつき、それが漢字の起源になった、ということです。

 足跡からすべてを読み解く......まさに古代の名探偵コ○ン。
といえば聞こえがいい(よくもないか)ですが、やっていることは古代の指紋盗用
 正確には「足紋」ですが、個人を特定されやすくなった鳥にとってはいい迷惑です。
 「最近、なんか迷惑メールがやたら届くんだよねー」
 といった感覚で、
 「最近、なんかやたら狩人に待ち伏せされること多くなったんだよねー」
 なんて会話を交わしていたかもしれません、鳥が。
 「トリの足跡を勝手にトリやがって」
 と、さぞ怒り心頭だったことでしょう、鳥が。

 この蒼頡さん、明らかに伝説上の人物なのですが、実際に足跡が文字を生み出すヒントになったということは、十分に考えられます。

 ちなみに文字の発明に関する神話は各地に残されていて、たとえばヒエログリフは学問の神であるトトが発明したとされています。
 ちなみにこの神は鳥(トキ)がモチーフ。中国と違い、鳥自らが文字を開発したわけです。すごいな鳥。

 すさまじいのは北欧のルーン文字。
 北欧神話の主神であるオーディンが発明したとされているのですが、この文字を手に入れるため、オーディンは身体に槍を指したまま首を吊って、神に自らを捧げたんだとか。
 よく意味がわかりません。捧げられた神もさぞ困惑したことでしょう。

 それに比べると蒼頡さんのエピソードはいたって平和的ですが、彼も目が四つあったとかされているので油断なりません。
 文字の誕生とグロテスクなイメージは、当時の人が文字に感じていた神秘性を表している、のかもしれません。


究極の文字の条件:個人情報保護に万全の対策を

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松樟太郎(まつ・くすたろう)

「1975年、「ザ・ピーナッツ」解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出たのち、生来の文字好き・活字好きが嵩じ出版社に入社。ロシアとは1ミリも関係のないビジネス書を主に手がける。現在は、ロシアのロの字も出てこないビジネススキル雑誌の編集長を務めつつ、ロシア発のすごいスキルがないかと非生産的なリサーチを続けている。そろばん3級。TOEIC受験経験なし。シリーズ「コーヒーと一冊」に初の単著『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)がある。

声に出して読みづらいロシア人

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