みんなのミシマガミュージック

第6回 大友良英さんてすごいんです!

2013.09.26更新

 こんにちは、アルテスパブリッシングの鈴木です。
 今週はついにとうとう『あまちゃん』が最終回を迎えてしまいますね(涙)。facebookのタイムラインもアキちゃん、ユイちゃんや春子さんとの別れを惜しむおじさんたちでいっぱいですが、『あまちゃん』の魅力を語るのに欠かせないのがテーマ曲をはじめとする素晴らしい音楽の数々。音楽を担当した大友良英さんは今日もちらっと出演してましたが、おおらかな笑顔とともに今やすっかり時の人となりました(紅白歌合戦が今から楽しみで^^)。ところがああ見えてじつは大友さんてすごいんです! というのが今月のテーマです。

 まずはこの映像をご覧いただきましょう。

 タイトルは"Playing the Turntables"。ターンテーブルをプレイする? そう、この20年前の大友さんは、2台のターンテーブルつまりレコードプレイヤーを"演奏"しているんです。音を出したり消したり音量を上げたり下げたりするミキサーを使って、まるでDJのようにレコードを取っ替え引っ替えしながら、針で盤面を引っ掻いて音楽とも雑音ともつかない音を出しています。当時の大友さんはこういう"ターンテーブル奏者"として世界に知られていました。
 
 次はエレクトリック・ギターを弾いている演奏をどうぞ。

 途中で"阿部薫にささぐ「無題」"とタイトルが出てきます。阿部薫は早世した伝説のサックス奏者で、高校時代の大友さんが福島市内のジャズ喫茶で出会って衝撃を受けたという人。ギターの音色がサックスを思わせないでもありませんが、こういう形式にはまらないノイジーなギター・プレイも大友さんの真骨頂のひとつです。

 「うるさい」大友さんをもうひとつ。

 これは90年代に組んでいたグラウンド・ゼロというバンドで、日本が生んだ鬼才中の鬼才・山塚アイと共演したときの映像です。

 というぐあいに、もともとフリー・ジャズ・ギターを学んでいた大友さんは"フリー・インプロヴィゼーション"(「自由な即興」)と呼ばれる分野で実験的・前衛的なパフォーマンスの第一人者として海外でも高く評価されていて、今も活躍を続けています。
 ほかにもサイン波(!)とエレクトロニクスが発する高周波やプチップチッというノイズだけが鳴り続ける演奏もあったりで、こういうのを聴くと、「これって音楽なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。でも大友さんは幅広く多岐にわたる活動を通じて、まさにその「なにが音楽でなにが音楽ではないのか?」という根源的な問いへの答えを追い求めているのだと思います。

 ですから、まったく正反対にもっとオーソドックスな音楽らしい音楽にも数多く取り組んでいます。
 『あまちゃん』以前にも無数の映画音楽やドラマ音楽を手がけていますし(2009年のNHKドラマ『白洲次郎』は記憶に新しいところです)、シンガーのバックをやらせても天下一品で、平川克美さんも愛する浜田真理子さんや、さがゆきさん、カヒミ・カリィさんといった女性歌手たちとの素晴らしい演奏を多く残しています。

 歌といえば、グラウンド・ゼロでは『Plays Standard』というアルバム(名盤!)で「アカシアの雨がやむとき」や「見上げてごらん、夜の星を」をカヴァーしたり、「ルパン三世」「スーパージェッター」「七人の刑事」などで知られる作曲家・山下毅雄の曲ばかりを演奏した『山下毅雄を斬る』なんていう楽しいアルバムも作っています。

 90年代終盤には「大友良英ニュー・ジャズ・クインテット」を結成。その後「オーケストラ」へと発展させて、多くのライヴを重ねています。僕が体験した「ニュー・ジャズ・オーケストラ」のライヴでは、客席を360度ぐるりとメンバーが囲んだ浅草アートスクエアでの演奏にも驚かされましたが、初めて聞いた新宿ピットインでのライヴがやはり忘れられません。

 その晩、締めくくりに演奏されたのがジム・オルークの名曲「ユリイカ」でした。金管木管楽器が咆哮し、ドラムスが暴れまくる混沌とした音のかたまりの中からじわじわと立ち上がってくるテーマ(メロディー)の壮絶な美しさ。

 そのほか「without records」「ENSEMBLES」といったインスタレーション、東日本大震災後に主催している「フェスティバルFUKUSHIMA!」、神戸の知的障害をもつ子供たちとの「音遊びの会」(東京で一度聴きましたが、音楽とはなにか? プロとアマの違いとはなにか? と深く考え込まされる貴重な体験でした)、はたまた『MUSICS』(岩波書店)、『クロニクルFUKUSHIMA』(青土社)などの著書ありと、まだまだ紹介しきれないのですが、そろそろ字数も尽きてきました。

 最後に、2005年のアルバム『ONJO / Ohtomo Yoshihide's New Jazz Orchestra』から「ユリイカ」を聴いていただいて今月はお終いにします。カヒミ・カリィさんのウィスパー・ボイスもご堪能ください。


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鈴木茂(すずき・しげる)

同姓同名の名ギタリストとはもちろん別人です。吉田拓郎とビートルズで音楽にめざめ、中学生のときボブ・ディラン&ザ・バンドのライヴLPを聴いて、生まれて初めて音楽を聴いて鳥肌が立つという体験をする。人生でいちばん大切なミュージシャンはジョン・レノン。いちばん大事な曲はソウル・フラワー・ユニオンの「満月の夕」。とくに好きな楽器はギター(とくにエレクトリック)とドラムなどの太鼓類。高校から吹奏楽のパーカッションを始めたが、今はひたすら聴くだけ。1960年東京生まれ、吉祥寺在住。1984年、音楽之友社に入社。クラシック、ジャズ、ロック、ソウル、ボサノヴァ、アフリカ音楽、レゲエ、アイルランド音楽などなどの雑誌・ムック・書籍の編集に携わり、2006年に退社。同僚だった木村と共同で翌年に株式会社アルテスパブリッシングを創業し、現在に至る。

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