みんなのミシマガミュージック

第7回 最高のロックンロール・ギタリスト

2013.10.29更新

 こんにちは、アルテスパブリッシングの鈴木です。

 今朝、facebookのページを開いたとたんに、悲しいニュースが目に飛び込んできました。昨日、10月27日にニューヨーク出身のロック・ミュージシャン、ルー・リードが世を去ったのです。まもなく来日する元ビートルズのポール・マッカートニーと同じ1942年の生まれで、享年は71。せめて一度、オフ・ステージで生身のルーに接して、そのオーラを浴びてみたいと夢見ていたのですが、それもかなわぬ夢となってしまいました。

ネットで読めるニュースでは、「ロックの殿堂入りを果たした伝説のロック・バンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドで活躍した」「高い文学性で後世のミュージシャンに絶大な影響を与えた」といった紹介を多く見ましたが、僕にとってのルー・リードは、まずなによりも最高のロックンロール・ギタリストです。まずこの「スウィート・ジェーン」を聞いて下さい。

♪Sweet Jane

 1965年に最初のアルバムを発表したバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代の「ワイルドサイドを歩け」「ヘロイン」「ペイル・ブルー・アイズ」に始まり、ソロの「サテライト・オブ・ラヴ」「ダーティー・ブールヴァード」などなど、50年近いキャリアのなかで数々の名曲を作ってきた人ですが、どうしても1曲だけベストを挙げろと言われたら、僕は1970年に発表されたこの「スウィート・ジェーン」を選びます。

 「ジャカジャカジャーン」とひとしきりエレキ・ギターをかき鳴らしたあと、ドラマーのカウントに続いておもむろに始まる印象的なギターのリフ。言葉で再現するのはむずかしいのですが、「チャッ・チャラ・チャラ・チャッチャラ・チャッ・チャラ・チャラ・チャッチャラ」という書き方で分かるでしょうか? 口ずさめるようなメロディーらしいメロディーもなく、わずか2小節8拍のこの短いフレーズをひたすらリズムに乗せてくり返す、ただそれだけのなんとも単純な作りの曲です。

 でも、ほんのいくつかのコードしか使わない、その単純なリフがくり返される心地よさ、そこにこそロックンロールの本質があります。そのシンプルさゆえにロックンロールは、そしてロックは、1950年代半ば以降、世界の若者を虜にしたのです。

 いまや世界最長老のロック・バンドとなったローリング・ストーンズの代表曲「サティスファクション」しかり、彼らも敬愛するチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」しかり。ザ・キンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」も、レッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」も、ロック史に残る名曲の多くが、一発で耳を奪われる魅力的なギターのリフを軸に組み立てられています。

 ルー・リードのソロ作品からも1曲、ご紹介しましょう。89年の名アルバム『ニューヨーク』に収められている「ロメオ・ハド・ジュリエット」です。彼の音楽をリアルタイムで夢中になって聞くようになったのはその3年前、1986年に神宮球場でのライヴを見てからなので、『ニューヨーク』にはとりわけ愛着があります(そのとき神宮球場で開催された「ジャパン・エイド」に、この連載の3回目にご紹介したユッスー・ンドゥールも出演していました)。

♪Romeo had Juliette

 この曲もメロディーをなぞって歌うのは難しいですよね。ドラマーのトニー・スミスが叩き出すしなやかなバネの効いた強靱なエイトビートにもぜひ注目してほしいのですが、ロックを特徴づけるもうひとつの大きなポイントであるエレキ・ギターのひずんだノイジーなサウンドもここではたっぷり聴くことができます。相方ギタリストのマイク・ラスケとともにルー・リードが鳴らしまくるエレクトリック・ギターのかっこ良さといったら。これに痺れるようだったら、あなたも立派なロック・ファンです。

 ギターのノイズだけでアルバムを作ったり(『メタル・マシーン・ミュージック』)、エドガー・アラン・ポーの小説をアルバム化したり(『The Raven』)、30年ほど取り組んでいた太極拳の師匠をステージに出演させたり、さらに映像でも優れた作品を多く残したりと、まだまだ話題は尽きませんが、今日は心からの哀悼の意を込めて、優れたロックンローラーとしてのルー・リードをご紹介してみました。

 最後に、生前最後のステージとなったらしい今年3月の映像を。中性的な独特の声を持つヴォーカリスト、アントニーのライヴにゲスト出演したときの模様です。歌っているのは、ヴェルヴェット時代の「キャンディ・セズ」。優しく見守るようなアントニーの歌声も美しく哀しく響き、今となっては涙なしに見ることはできません。

♪Candy Says

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鈴木茂(すずき・しげる)

同姓同名の名ギタリストとはもちろん別人です。吉田拓郎とビートルズで音楽にめざめ、中学生のときボブ・ディラン&ザ・バンドのライヴLPを聴いて、生まれて初めて音楽を聴いて鳥肌が立つという体験をする。人生でいちばん大切なミュージシャンはジョン・レノン。いちばん大事な曲はソウル・フラワー・ユニオンの「満月の夕」。とくに好きな楽器はギター(とくにエレクトリック)とドラムなどの太鼓類。高校から吹奏楽のパーカッションを始めたが、今はひたすら聴くだけ。1960年東京生まれ、吉祥寺在住。1984年、音楽之友社に入社。クラシック、ジャズ、ロック、ソウル、ボサノヴァ、アフリカ音楽、レゲエ、アイルランド音楽などなどの雑誌・ムック・書籍の編集に携わり、2006年に退社。同僚だった木村と共同で翌年に株式会社アルテスパブリッシングを創業し、現在に至る。

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