みんなのミシマガミュージック

第8回 2013年 イチオシ邦楽アルバム6選!!

2013.12.27更新

 こんにちは、アルテスパブリッシングの鈴木です。先月はお休みをいただいたので、なんだかあっという間に年末が来てしまったような心持ちですが、ふた月ぶりの「みんなのミシマガミュージック」も今年で最後となります。そこで、この1年のあいだに発表されたアルバム(CD)の中から、とくに良かった日本のミュージシャンの作品をダダッとご紹介することにしました。

 最初は、96年にデビューしたシンガー・ソングライターの朝日美穂さんが6年ぶりに自分のレーベルから発表したアルバム「ひつじ雲」から、「夢落ちる」をどうぞ。

「夢落ちる」

 楠均さん(ドラムス)、千ヶ崎学さん(ベース)という屈指のリズム隊をバックに、品の良いユーモアと色気のにじむしっとりとしたヴォーカルが、すばらしいバランスの音で丁寧に録られていて、気持ちをスーッと落ち着かせてくれます。YouTubeではほかに「断捨離」「夢のトレモロ」の2曲を聴くことができます。

 その楠、千ヶ崎の二人がライヴやレコーディングに参加しているキリンジは、今年10枚目のアルバム「Ten」を発表しました。15年間にわたって、メロディー、詞、アレンジなどすべてに質の高い職人芸を発揮して、極上のポップ・ソングを作り続けてきた兄弟二人組です。2曲目の「ナイーヴな人々」の公式ビデオがアップされていました。

「ナイーヴな人々」

 「Drifter」「エイリアンズ」「千年紀末に降る雪は」「ブルーバード」などなど、彼らの名曲をあげはじめたらキリがありません。このアルバムと4月のライヴ(感動的でした)を最後に弟の堀込泰行(作詞・作曲、ヴォーカル、ギター)が抜けてしまいましたが、兄の高樹が引き継いだ新生キリンジのこれからを楽しみにしているところです。

 楠、千ヶ崎と並んで近年活躍が目立つリズム隊に、伊賀航(わたる・ベース)と伊藤大地(ドラムス、サケロックのメンバー)の二人がいます。彼らを重用しているミュージシャンの代表が、YMOの中心人物としておなじみ、大御所の細野晴臣さん。5月に発表されたアルバム『Heavenly Music』は、「天国の調べ」と自ら呼ぶ、20世紀の主にアメリカで生まれたポップスのカヴァー集です。Youtubeではユーモラスな細野さんのダンスが観られるブギウギ曲「The House of Blue Light」(1948年)しか見つかりませんが、一見さりげない演奏と歌声が、世界にぽっかり開いた大きな穴をのぞき込むような、怖さと凄みを感じさせる傑作だとおもいます。

 細野さんには負けますが、それでもすでに30年のキャリアを持つロック・ミュージシャンの直枝政広さんが、今年は鈴木惣一郎さんというミュージシャンと組んでSoggy Cheerios(ソギー・チェリオス)を結成。アルバム『1959』を発表しました。ロックな直枝さんと、フォーク的な感覚が持ち味の鈴木さん、二人の個性のブレンド具合が絶妙の味わいを醸し出しています。

 ベースの太田譲さんと一緒に直枝さんが長年続けているバンド、カーネーションは、エイト・ビートとエレキ・ギターの快感をとことん追求し続けている最高のロック・バンドのひとつなので、こちらもぜひ聴いてみて下さい(80年代から90年代にかけて活躍したアイドル、森高千里の「夜の煙突」は彼らのオリジナル曲です。と言えばお分かりになる方もいるかもしれません)。自分と同世代ということもあって、僕は強いシンパシーを持って聴き続けています。

 直枝さんと同じように、今なおロックの可能性を追求しているのが、奥田民生さんです。11月末に発売された新しいアルバム「O.T.Come Home」も、いまどき珍しいほど愚直なギター、べース、ドラムによるエイト・ビートのロック・アルバムで、クオリティの高い音質とあいまって(よく鳴っているエレキ・ギターのサウンドのすばらしさは特筆もの。マスタリングを世界的な売れっ子エンジニアのテッド・ジェンセンが手がけています)、一度はまると病みつきになります。CMに使われて早くからテレビでも流れていたシングル「風は西から」をYouTubeで聴くことができます。

「風は西から」

 ここまでロックな音楽が多くなりましたが、最後にご紹介するのは、ギタリスト・藤本一馬のソロ・アルバム「Dialogues」です。発売されたのは昨年末ですが、スケールの大きな涼やかな音色とメロディーが心地よくて、とにかくよく聴きました。若手バンドネオン奏者の北村聡、アルゼンチンのピアニスト/作曲家、カルロス・アギーレ、ブラジルはミナス地方出身のヘナート・モタ&パトリシア・ロバート夫妻という贅沢なゲスト陣との美しい"対話"が6曲収められています。

「Dialogues」ダイジェスト

 このアルバムを聴くと、今年初の来日公演が実現し、多くの聴衆を獲得したアントニオ・ロウレイロやアンドレ・メーマリといったブラジルの新しい潮流を担うミュージシャンたちを、続けてご紹介したくなるのですが、今回は日本限定にしましたので、この辺でおしまいにします。どうもありがとうございました。紅白歌合戦にあまちゃんバンド出そうですね!

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

鈴木茂(すずき・しげる)

同姓同名の名ギタリストとはもちろん別人です。吉田拓郎とビートルズで音楽にめざめ、中学生のときボブ・ディラン&ザ・バンドのライヴLPを聴いて、生まれて初めて音楽を聴いて鳥肌が立つという体験をする。人生でいちばん大切なミュージシャンはジョン・レノン。いちばん大事な曲はソウル・フラワー・ユニオンの「満月の夕」。とくに好きな楽器はギター(とくにエレクトリック)とドラムなどの太鼓類。高校から吹奏楽のパーカッションを始めたが、今はひたすら聴くだけ。1960年東京生まれ、吉祥寺在住。1984年、音楽之友社に入社。クラシック、ジャズ、ロック、ソウル、ボサノヴァ、アフリカ音楽、レゲエ、アイルランド音楽などなどの雑誌・ムック・書籍の編集に携わり、2006年に退社。同僚だった木村と共同で翌年に株式会社アルテスパブリッシングを創業し、現在に至る。

アルテスパブリッシング

バックナンバー